HEADLINE

上崎裡沙「橘くんにはあたしのルートに来てもらうんだからっ」

2012/11/07 04:00 | CM(4) | アマガミ SS
1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/04(日) 23:38:24.83 ID:En0rxU3a0
裡沙(今日も橘くんかこいいよぐゅふふっ)

裡沙(でもね、最近はちょっと色々と頑張ってる節を感じられるようになってきた)

裡沙「…橘くんは、きっと誰かとクリスマスを過ごそうと思ってるんだろうなぁ」

裡沙「……」

裡沙「はぁ…今日は橘くんを軽く一時間ぐらい監視してから帰ろ…」トボトボ



4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/04(日) 23:43:50.32 ID:En0rxU3a0
~~~

裡沙「……」こそ


純一「ふんふーん」


裡沙(今日はゲーセンには寄らず、梅原君と一緒じゃない……何処か用事でもあるのかな?)

裡沙(下校ルートとは違う道だし、なにか用事があることは確実のはず)

裡沙「……」じっ

純一「……」キョロキョロ

裡沙(あれ? あの不自然な感じはもしかして…ん、やっぱりそう)

純一「…ふへへ」

裡沙(河原に捨てられてるお宝本を見るためだったんだね! …やっぱりそっか、んふふ、可愛いなぁ橘くん…)


7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/04(日) 23:48:52.65 ID:En0rxU3a0
純一「んぎっ…」

裡沙(あんなに夢中で湿って開きにくいお宝本を開こうとして……)

裡沙(あ~たまらないよっ! かわいいかわいい! きゃー!)パタパタ

裡沙「…ふぅ」

裡沙「それにしても、なんで河原なんかにきてるんだろう。
   最近だと隠し部屋に新作を色々と取り揃えていたはずなのに」

裡沙「…満足できなかったのかな、うーん」

純一「お、開けた開けた……うぉー! なんだこれ!」

裡沙(あっ! 橘くんが興奮してる! ……脳内HD保存だよ裡沙!)

裡沙「ふへへ」


12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/04(日) 23:54:57.96 ID:En0rxU3a0
~~~

裡沙(今日は色々な橘くんの顔が見れて満足…)ほくほく

裡沙(でも、きっと明日はもっと良い顔を見れるはずだよね、橘くん)

裡沙「……」

裡沙「──橘君、貴方は絶対に……幸せにならなくちゃだめなんだからね」

次の日 放課後

裡沙「………」

純一「──でね、昨日は河原に行ったんだけど…」

絢辻「あら、さっそく行ったの? どうだったかしら」

純一「うんっ! やっぱり河原って凄いよね、貴重なお宝本がたくさんあってさー」

絢辻「はい?」

純一「え?」

裡沙(な、なんなのっ!? どうしてこんな光景が広がってるの!?)


15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/04(日) 23:59:22.27 ID:En0rxU3a0
裡沙(あれは、橘くんと同じクラスの絢辻さんっ…友好度はそこまで良くなかったはずだよね!?)

純一「…えっと、お宝本の拾える場所を教えてくれたんじゃないの…?」

絢辻「私はランニングコースで河原が最適よ、と伝えたはずだけど?」

裡沙(なのにどうしてっ…あんな近い距離で、しかも体育館裏で楽しそうに会話してるのかなっ!?)

裡沙(こ、これはっなんとしても橘くんの監視レベルを二段階上げないとダメな感じだよっ…!)

純一「は、ははっ…冗談だよ絢辻さん…」

絢辻「ふーん、冗談にしてはえらく詳細な言い方だったわよね? ん?」

裡沙「ぐににっ…! 近いよ、近いってばっ! 距離が近いよあの娘っ…!」


16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:04:03.92 ID:w8gpYVv40
裡沙(…ど、どうしよう。これじゃあ何も出来ないままっ…あの猫かぶりに橘くんを取られちゃうっ…)

裡沙(橘くんはあたしが幸せにしないとだめなのにっ…いや、そうじゃないの裡沙…)

裡沙(──頑張るためには、障害はなんとしても乗り越えないとダメ)

裡沙(一度決めた覚悟はどんな大きな壁でも揺らいじゃダメなんだよ…!)

裡沙「っ…がんばるんだから!」ぐっ

裡沙「って、あれ!? もう居ない!? うぐー! 探さないと!」だだっ

~~~

裡沙「見つかんない…」トボトボ

裡沙(もう空も暗くなってきたし…ぐす、どうしてこうなっちゃったんだろ…)

裡沙「……橘くんは、あの子と一緒にクリスマスを過ごすつもりなのかな」


19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:07:28.78 ID:w8gpYVv40
裡沙「あの時のトラウマを乗り越えて、自分だけの力でしあわせになろうとしてるのかな…」

裡沙「…誰の助けも要らずに、一人だけで…」

裡沙「……」すっ

裡沙「…星が綺麗。空気が冷たいから、星も綺麗に見えるんだね…」

裡沙「……」

裡沙「…橘くぅん……」とぼとぼ

とぼとぼ…



───ジジジジッ…!


20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:09:50.96 ID:6mChtgnr0
スト子かわいいよスト子


21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:11:46.26 ID:w8gpYVv40
裡沙(…? なんだろ、あそこの電信柱の根本が……光ってる?)

──ジジジジッ…

裡沙「やっぱり何か光ってる。なんだろ…」たたっ

裡沙「………」

裡沙「ゲーム機?」ひょい

『ジジジッ…ガガッ…ジュィーン…ジュピュン!』

裡沙「あ、切れちゃった…」

裡沙「壊れてるの?」ぶんぶん

裡沙「…画面もヒビ入ってるし、誰かが捨てたのかな」

『ガピュン!』

裡沙「ひゃあ!?」

『───ジジジッ……アマガミ……』



22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:12:36.05 ID:WZ1qqIIR0
ふむ


23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:15:55.23 ID:w8gpYVv40
裡沙「また着いた…」

『ア…ア…アマガミ……アマガミ…ジジジッ…』

裡沙「なにか声が漏れてる…?」



『──スタート』


~~~~

裡沙「………」

裡沙「……え?」

チュンチュン…

裡沙「っ…!」がばぁ

裡沙「……」

裡沙「ベットに寝てる…の? あれ? どうして?」


25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:22:47.31 ID:w8gpYVv40
裡沙(なんだか、色々と記憶が飛んじゃってるような…あたしいつの間に家に帰ったんだろ…?)

裡沙(よく思い返すの裡沙、えーと確か…橘くんを追いかけてて…だけど見つからなくて…)

裡沙(もう帰ろって思ってたら…なにか見つけて…それから…)

裡沙「っ……」すっ

裡沙「これ…」カチャ

裡沙「この──ゲーム機を拾ってから、全然記憶が無いよね…どうして…」

『──ぴちゅん!』

裡沙「わっ」

『──今日もいい天気、橘くんの顔も元気そうでよかったよ、だけど油断しちゃダメ、なにか秘策はないのかな…』

裡沙「……」

裡沙「…え? これってあたしの声?」


26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:28:13.83 ID:w8gpYVv40
裡沙「た、多分だけど…あたしの声っぽい気がする」

裡沙「画面は真っ暗のまま…と、とりあえずちょっと弄ってみようかな」

裡沙「え、えいっ」ぽちぽち

『ドュルルルルルンっ!』

裡沙「わっ、なんだか決定されたような音が鳴ったような気がしないでもない…」

裡沙「…なんだろこれ、ちょっと気持ち悪いな…」

「──裡沙ー! 朝ごはんよー!」

裡沙「あ、はーい! すぐ行く~!」

裡沙「よ、よくわからないけどっ…とりあえず学校に行かなくちゃっ…」ばさっ


27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:32:33.23 ID:w8gpYVv40
~~~

廊下

裡沙「こ、これは…」

純一「……」かぱっ

裡沙(橘くんが絢辻さんの下駄箱の匂いを嗅いでる!)

純一「くんくん」

裡沙(白昼堂々っ…橘君、貴方って人はっ…!)

裡沙(そしてタイミングバッチシに絢辻さんがこっちに着てるし…!)

絢辻「……」すたすた

裡沙(あわわっ! た、橘くんに教えてあげないと…! そうしなきゃひどい目に合わされちゃうよ…!)


30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:38:20.29 ID:w8gpYVv40
純一「くんくん、ふむ…アルデンテ」

裡沙(気づいて橘くん! 夢中になってないで本当にあぶないからっ!)

絢辻「……」すたすた

裡沙(ああっ! もうそこまで来ちゃってる! …し、しかたないっ…!)

裡沙(橘くんの前に出るのはちょっと勇気がいるけどっ…)たたっ

裡沙「──橘くんが困ってしまうのは、いやだからっ…!」だっ!

つるっ

裡沙「ふぇっ?」

ずってーん

絢辻「わっ」

裡沙「いたた…」

絢辻「えっと、大丈夫かしら? 怪我はない?」


32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:42:36.17 ID:w8gpYVv40
裡沙「え、あっ…ハイ! 大丈夫です!」

絢辻「そ、そう? ならいいのだ……け…れど……」じっ

裡沙「あ」


純一「くんくん」


絢辻「…何やってるの、橘くん」

純一「くん…えっ!? 絢辻さん!?」

絢辻「答えなさい、橘くん、私の下駄箱に顔を突っ込んで何をしているの」

純一「いやいや! 違うんだよ絢辻さん! こ、これは…!」

絢辻「答えなさい」

純一「……うわぁあああああ!!」だだだっ

絢辻「橘くん!?」


33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:46:44.55 ID:mu6hwfB80
紳士……


34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:46:48.94 ID:w8gpYVv40
裡沙(た、橘くん……くっ…!)ささっ

絢辻「なによ、どうして何も言わないで走って…あれ?」

絢辻「さっきの子は…?」

~~~

裡沙「はぁ…はぁ…」

裡沙(なんとか隙を突いてそばから離れられたよ…ふぅ)

裡沙(橘くん絢辻さんにバレちゃった時、凄くやってしまった、って顔してたなぁ)

裡沙(やることは大胆な癖に、本当に豆腐メンタルだよね…)

裡沙「ともかく橘くんを助けること出来なかった…橘くんが傷ついちゃった…」

裡沙「…失格だよ、タチバニストとして…失格だよ…」


35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:51:13.62 ID:w8gpYVv40
『──ジジジッ…!』

裡沙「…え、何?」

裡沙「ポケットに何か入ってる、これって…!?」カチャ

『ジュジュッ…ガガガッ…ジジジッ』

裡沙「あのゲーム機!? どうして、部屋に置いてきたはずなのに…」

『ガガガッ───バン! バン! バン! バン!』

裡沙「えっ…!?」

『ピュイ! ピュイ!』

裡沙「…なんの音?」

『………』

裡沙「止まった…何だったの一体…?」



37 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 00:56:33.51 ID:NfkoDE7h0
裡沙ちゃんに会うためにアマガミ買ったけど裡沙ちゃんに会うまでの過程で七咲のことが一番好きになっちゃった
ごめんね裡沙ちゃん


40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:00:24.25 ID:w8gpYVv40
裡沙「…それよりも、どうしてあたしこのゲーム機を持ってるんだろ…」

裡沙「…ちゃんとおいてきたはずだよね、だってこんなの持っていたくな」

~~~

放課後

裡沙「……」

裡沙「……っ!?」ガタッ!

裡沙「っ!? っ!?」キョロキョロ

裡沙(───放課後になってる!?)

裡沙「っ…なんで…これは、おかしいよ流石に……」

『──ジジジッ…』

裡沙「っ!」びくっ

裡沙「……」すっ

裡沙「…これの、せいなの…?」カチャ…

『───した……落とした…』


41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:04:57.46 ID:w8gpYVv40
裡沙「っ……また、声が……!」

裡沙(ここじゃクラスメイトに不審がられちゃうから…他の場所で…!)だだっ

ポンプ小屋

裡沙「ふぅ、ここなら大丈夫のはず……それで…」カチャ

『ジジッ』

裡沙「──さっきまた声が聞こえた気がするけど、その声…」

裡沙「…絢辻さんの声の気がしたんだけど…?」

『ジジッ…ジュジュッ……落とした……まさか…』

裡沙「………」

裡沙「…やっぱりこれ絢辻さんの声だよ、もしかして、これって絢辻さんの物なのかな」


42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:11:00.27 ID:w8gpYVv40
裡沙「むぃー!」

裡沙「わけわかんないよぉ…なんなのっ!
   時間が飛んじゃうし、なんかよくわからないけど声が聞こえてくるんだもんっ!」

裡沙「ううっ、気持ち悪いよ…どうしてこんなの拾っちゃったんだろあたしぃ…くすん」

『──ジュピュン!』

裡沙「ひっ」

『──まさか、手帳落とした…? 嘘、そんな事無い。ちゃんとカバンに…やっぱりない…?』

裡沙「……?」

裡沙「…よくわからないけど、やっぱり絢辻さんの声だ」

裡沙「……」

裡沙(なんだろう、少し───予感してる)

裡沙(今この瞬間にゲーム機をいじれば……きっとそれは、あたしの思い通りに行くような、そんな予感)


44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:16:52.46 ID:w8gpYVv40
裡沙(さっきの出来事だってそう、何時かは橘くんの大胆な行為が女の子にバレて)

裡沙(…それがきっかけで疎遠になる。そんなダメな妄想を過去にしてしまっていたこともあって)

裡沙(──今朝にこのゲーム機が発したあたしの声と、そのダメな妄想がなぜか繋がりを感じてしまう)



『──今日もいい天気、橘くんの顔も元気そうでよかったよ、だけど油断しちゃダメ、なにか秘策はないのかな…』



裡沙「っ……!?」びくっ

裡沙「な、なにを考えてるのあたしっ……あはは、馬鹿だよね。そんな事ありえるわけないのに…っ」

裡沙「ない、のに……」

裡沙「……」

裡沙「……何かボタンを押せば、橘くんと絢辻さんの、仲が悪くなるのかな」

『ジジッ…』


45 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:24:06.69 ID:w8gpYVv40
裡沙(このタイミングでゲーム機を弄ると…何かかが起こるはず)

裡沙(それは多分、ゲーム機から聞こえた絢辻さんの声…の通りの現実が)

裡沙「あは、あははっ…ありえるわけ、ない…そんなこと…」すっ

裡沙(じゃあ証明すればいいんじゃないの?、ボタンでもカーソルでも動かして、
   それでもなお何も起こらないと証明すればいいじゃない)

裡沙「そん、なことダメに決まってるよっ…だって、それでまた時間と飛んじゃったら困るし…!」

裡沙(じゃあ正直になろうよ、あたし)

裡沙(──ボタンを押しちゃえば、橘くんがあたしを見てくれる可能性があるってこと)

裡沙「………」

裡沙(このゲーム機はもしかしなくても、あたしの好都合なルートを作ってくれるんだって)

裡沙(…認めちゃいなよ、裡沙)


47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:30:38.97 ID:w8gpYVv40
裡沙「っ……」

裡沙(貴女の目の前にある、そのゲーム機はきっと。
   全てが無理だって諦めていたことを叶えてくれる魔法の機械だよ)

裡沙(信じるか、信じないか。そんなことはあたしには関係ないよね、だってあたしはあたしだから)

裡沙(───やることは全てやる、なんだってそれが悪いことだって思われても)

裡沙(貴女がしていること、そしてしようとしていることは許されることじゃないってことは)

裡沙(当の昔に踏ん切りがついたはずでしょ?)

裡沙(あの時、冬の公園で見た──彼の表情を見たくないと願ったあたしは)

裡沙(…きっとそのボタンも押せるはずだから)

裡沙「………」

裡沙(それが、あたしの本音のはずだよ、裡沙)

裡沙「……」

裡沙「…あたしの、本音…」かちゃっ…


49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:37:29.23 ID:w8gpYVv40
裡沙(……あの彼の表情を、あの娘は絶対にさせないと思えるの…?)

裡沙「…っ」

裡沙(それならいっそのこと、不安でいっぱいになってしまうのなら…)

裡沙「──私が、彼を彼女から離させたほうがマシ」

裡沙「………」

『ジジッ…ガガッ…』

裡沙「っ…そうだよ、あたしは彼を幸せにしたい…」

裡沙「あたしなら絶対に橘くんを幸せにできるはずだからっ…あたしは、そうしなきゃだめだから…!」

裡沙「このボタンを押せば……橘くんはきっと不幸になる、と思う…」ぐっ

裡沙「……っ、でもその後あたしが幸せにして上げればいい話じゃないっ」

裡沙「だからっ───」

ぐぐっ


50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:42:46.63 ID:w8gpYVv40
裡沙「───……」

裡沙(いくじなし)

裡沙「…うん、わかってる。あたしはいくじなしだもん…」

カチャ…

裡沙「押せるわけ無いよ…不幸になる橘くんなんて、絶対にみたくないから…」

裡沙「……あたしはこのボタンを押すことなんて、出来ない」

裡沙「……」

『ジジ…』

裡沙「…」

裡沙「……あたし、疲れてるのかなぁ。あはは」すっ

裡沙「よくわかんないことばっかり起きちゃって、ちょっとおかしくなっちゃってるかも」

裡沙(今日はおふとんにはいってゆっくり眠ろっと、うん!)


51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:48:35.77 ID:w8gpYVv40
裡沙(ゲーム機のことも、橘くんのことも、もっと冷静になって考えなきゃ)

裡沙「…焦って行動しても、また橘くんを悲しませるだけの結果に鳴っちゃうかもしれないしね」

裡沙「…頑張らなきゃ、あたし」

がちゃっ

裡沙「───………」

裡沙「え」


純一「ん…」

絢辻「…橘君…」


ちゅっ


裡沙「…」

純一「ん……って、うわぁあ!? ひ、人がいた!?」

絢辻「う、うそでしょ! どうしてこんなところにっ…!」


52 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:49:47.71 ID:w8gpYVv40
ちょっとうんこ


54 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 01:59:05.13 ID:w8gpYVv40
裡沙「…」

純一「え、え~っと…あはは! その、ごめんねお見苦しい所を見せてしまって…」

絢辻「ご、ごめんなさいね? そのまさかその中に人がいるとは思わなくて…」

裡沙「…」

裡沙「…」くるっ

たたっ

純一「あっ…」

たったったった…

純一「……どうしたんだろう、何も言わずに走って行ってしまった」

絢辻「う、うん…その反応しずらかったんじゃないかしらね? そのね?」


~~~

裡沙「………」たったった


56 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:03:53.81 ID:JZwUn50U0
うわああああああ


57 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:06:20.44 ID:w8gpYVv40
たったったった…


裡沙「………っ…」

裡沙「…っ…ひっぐ…」

裡沙「ぐすっ……どうして、泣くのよっ…」

裡沙「だって…橘くん…あんなに幸せそうだったのにっ…!」


たったったった…


裡沙「だから泣くことなんてっ…泣いちゃう必要なんてっ…」

裡沙「これっぽっちもっ…ほんのちょっともっ…!」

裡沙「……無いはず、だからぁ…!」


たったった……ずりっ


裡沙「あっ」


どしゃっ


58 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:10:11.66 ID:W0elj5WC0
裡沙ちゃんかわいい!


59 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:12:54.94 ID:w8gpYVv40
カラカラー…


裡沙「……」

裡沙「橘くん…本当に幸せそうだった…あんなに優しく微笑んでて…」

裡沙「大事そうに、大切そうにあの子を抱き寄せてた…」ぎゅっ

裡沙「そっか」

裡沙「……もう、彼は幸せになっちゃってたんだ…」

裡沙「あたしが色々…もう考える必要なんて、これっぽっちも無いってこと…」

裡沙「橘くんにはもう、あたしは必要なんて無いってこと」

裡沙「……そういうことなんだよね、きっと」


裡沙(──じゃあ邪魔してもいいんじゃない?)


裡沙「…っ…」


60 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:18:42.14 ID:w8gpYVv40
裡沙「なにを…」

裡沙(彼と彼女の関係を。彼を応援しなくてもいいのなら、寧ろ邪魔してもいい権利を得たんじゃないのかな)

裡沙「…馬鹿言わないで、ありえないよそんなこと」

裡沙(嘘ばっかり、あたしならきっとそれが出来るはずだよ。
   出来ないことはないはずだよ、上崎裡沙ちゃん)

裡沙「……」

裡沙(あたしは彼が頑張ることを応援することはできるけど、
   決してそれがかなってしまうことについては……)

裡沙(認めることなんて、できちゃうの?)

裡沙「……できるよ」

裡沙(それは彼を幸せにしたいから?)

裡沙「……」

裡沙(じゃあ、あたしの幸せはどうするの? あたしは今、不幸じゃないの?)

裡沙(彼の幸せを願ったあたしは、彼と一緒に幸せになるべきじゃないの?)

裡沙(──だってその思いは好きって形でできてるはずだから)


62 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:24:05.87 ID:w8gpYVv40
裡沙(あたしはずっと誤魔化してるだけだったんだよ)

裡沙(彼を応援したい、彼を幸せにしたい、そのためになら頑張れる)

裡沙(自分のほんとうの気持ちを理解しようとしないで、
   彼の幸せがあればいいと、どんな結果が待ってようと耐えきれると)

裡沙(あたしは彼を好きだって結論付けないために、努力というもので押し隠してきたんじゃないの?)

裡沙(気づいてたはずだよ、彼を影から見つめるそのあたしは。きっといつかは彼の隣に──)

裡沙(──笑顔で立ってられると)

裡沙「うるさいっ!!」

裡沙「うるさいっ…うるさいうるさいっ…!」ぎゅっ

裡沙「そんなことっ…そんなことっ…! わかってるよっ…!」

裡沙「…わかってるんだよ、そんなことっ…ううっ…」


63 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:28:13.21 ID:w8gpYVv40
裡沙(…わかってないよ、裡沙)

裡沙(あたしはそうやって意固地になってまた逃げようとしてるだけ)

裡沙(彼がほんとうに幸せになっても、きっとそれはあたしには受け止められないはずだから)

裡沙(……認めちゃいなよ、あたし)

裡沙(──泣いちゃってるんだよ、あたし。悲しくって、辛くって、どうしようもなくって)

裡沙(好きで好きでたまらなくて、泣いちゃってるんだよ…あたしはさ)

裡沙「………」

裡沙「……」

裡沙「…」

~~~

裡沙「……」すく

裡沙「……」ぱんぱん…

裡沙「……」すたすた

かちゃ


64 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:30:25.71 ID:2ELYgNY80
裡沙ちゃんが幸せなら俺はそれで構わん


65 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:33:33.75 ID:w8gpYVv40
『──ピューイ…ジジッ…ガガガ…』

裡沙「………」

裡沙「……あたしは」

裡沙「っ…あたしは、彼を不幸にさせたくなんか無い…」

裡沙「あの時のトラウマをもうっ……彼にさせたくはないから…」

裡沙「だけど…今の彼は、そのトラウマを…自分一人の力で跳ね除けて…」

裡沙「……ちゃんと幸せになってる」

裡沙「……だから、もう彼のために何かする必要なんて…ない」

ぎゅっ…

裡沙「──だけどっ…!」

裡沙「あたしも、幸せになりだいっ…! 彼と一緒に笑っでだいっ…」

カチャ

裡沙「…あだじもっ…グスッ…しあわせになりたいんだよぉ…っ…」


66 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:37:30.51 ID:w8gpYVv40
裡沙「ひっく……ぐすっ…」ぎゅっ


『ジジッ──』

『──まさか、手帳落とした…? 嘘、そんな事無い。ちゃんとカバンに…やっぱりない…?』


裡沙「……っ…うぅ…」

裡沙「……ううっ」

ポチ

裡沙「っ……!」

裡沙「………」

裡沙「…あれ…?」

裡沙「何も変わらない……の?」

裡沙「…なんで、また時間が飛ぶか何か起こるかなって───痛っ…?」ズキン


67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:41:03.41 ID:w8gpYVv40
裡沙(頭、痛いっ……なにこれっ…目の前が…!)

ジジジジッ! ギュルギュルギュル!

裡沙(青色っ…? から、緑色にっ…景色が染まって…!)

ギュルギュル!

裡沙(気持ち悪いっ…)



『───ロードが成功しました』


~~~

裡沙「………」

裡沙「……あれ?」

裡沙「ここ、何処……」

「──あっぶない!」

裡沙「ふぇ?」


がっしゃーん


69 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:47:37.35 ID:w8gpYVv40
「いたた……って、アンタ大丈夫!? 平気!?」

裡沙「あ、うん…」

「いや~びっくりした、いきなり目の前に立ってるんだもん。いきなり飛び出してきたら危ないでしょ?」

裡沙「ご、ごめんなさい」

「ま、まあ。アタシも爆走してたから悪いけど……」

裡沙「……あれ、棚町さん?」

薫「へ? なに、アタシのこと知ってるの?」

裡沙「だって同じ学校だから…」

薫「……ごめん、ちょっとわからないわ~あはは~」

裡沙「そ、そっか」

薫「それよりも、いつまでも座ってんのよ。ほら、手を貸して」すっ

裡沙「う、うん」ぐいっ


70 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 02:54:13.60 ID:w8gpYVv40
薫「よっし、怪我はないわよね?」

裡沙「うん、大丈夫」

薫「それは僥倖、うんうん。もっとちゃんと謝っておきたいところなんだけど、ちょっと急いでるのよ」がたっ

裡沙「あ、えっと…そうなの?」

薫「そそそ。同じ学校なら会う機会もあるだろうし、また今度ちゃんと謝りに来るわね、それじゃ!」きこきこ!

裡沙「…行っちゃった」

裡沙「……」

裡沙「──今は……昼近く、あたしの格好は……私服」

裡沙「もしかして休日なのかな…」

裡沙「……」カチャ

裡沙「……なんだろう、凄く時間が飛んじゃった気がする…」

裡沙「……それに、あたし…ボタン、押しちゃって…」

裡沙「………」

『ジジッ…』


91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 09:57:51.73 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「あっ……そういえば橘くんは!?」

裡沙「橘くんを探さないとっ…!」たたっ

~~~

裡沙「はぁっ…休日だと大体はゲーセンにきてるはずだけど」きょろ…

裡沙(あ、居た!)ささ

純一「うぉおー!」バババッ

裡沙(なにかのゲームしてる……えっと、一人なのかな)

裡沙(梅原くんも居なくて、そして──あの子も居ない)

裡沙「休日なのに、一人で楽しそうに遊んでる…」

裡沙「……」

裡沙「……あ、今あたし…」

裡沙「ほっとしてる…」


95 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:04:02.41 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「…仕方ないよ」

裡沙(だけど……自分で決めたことなんだもん)

裡沙(こんなこと、誰に言っても信じてもらえないし)

裡沙(それに──)

裡沙「──……ううん、違うよね裡沙」

裡沙「橘くんを多分、不幸にさせたことは本当のはずだから」すっ

裡沙「ちゃんと…今から幸せにさせてあげないとダメ」

裡沙「勇気を振り絞って…行くのよ、ちゃんと彼の目の前に立って話しかけるの」

裡沙「そうすれば…」

裡沙「うんっ!」ぐっ

裡沙(でも、本当に橘くんはあの娘と……その、離れ離れになったのかな)


97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:10:34.18 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「…ちょっと軽く三時間ぐらい監視してみよっと」

~~~

裡沙「……」

純一「……」すたすた

裡沙「…何処かに向かう様子もない感じ、途中CDショップの寄ったけれど」

裡沙「趣味も変わってない、何か影響されたような所も無し…」

裡沙「橘くんはきっと、好きな女の子ができたら色々と私生活を変えていくと思うし…」

裡沙「…だから本当に、今の彼はあの娘と付き合ってないのかも…知れない」

裡沙(だけど──)

裡沙(──まるでこれって、あの娘という存在がぽっかり無くなったような…)

裡沙「よ、よくわからないけど…もうちょっとだけ監視を続けてみよう」


98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:18:09.25 ID:5lBNe7IQ0
~~~

裡沙(やっぱり彼は独りだ)

裡沙(…あの娘のことを考えてる節が全くないよ、恋を頑張ってるような所が全くない)

裡沙「むしろ何時もの橘くんより……ちょっと大人っていうか、時々考えこむような仕草をするし…」

純一「ふぅ」

裡沙(あっ! 今の表情! ふへへ、かっこいい)

裡沙(ちょっとお得な気分、あんな表情を見れるなんて)

純一「…」

裡沙(──だけど、どうしたのかな。彼らしくないって言えば、そうなるけれど)

『ジジジ……』

裡沙「わっ」

『ジュジュジュっ……キュイン…』

『──橘くんが一人で歩いてる! 今がチャンスかもしれない…なにか行動を起こそうかな!』


99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:21:51.94 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「これまたアタシの声だ」

裡沙「……」

裡沙「今ボタンを押したら、何かが起こるって…ことかな」

カチャ

裡沙「……お、押してみるべき?」

裡沙「そうすれば──その、何かが…」

裡沙「あたしの思い通りに行くような…何かが…」

ポチ

『ドュルルルルルン!!』

裡沙「……」

裡沙「えっと、なにも起きないけど…」

裡沙「また時間が飛んだじゃったりす」

~~~

三年前


100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:22:22.90 ID:WZ1qqIIR0
支援


101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:27:24.89 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「あれ?」

裡沙「夜になってる……て、寒い!?」ぶるぶる

裡沙「どうしてっ? だって今は春のはずじゃないの…!?」

裡沙「…あ、でもあたし厚着してる。ん? あれ? これって…」

裡沙「──中学の時着てた服…?」

裡沙「……」

裡沙「…もしかしてこれ、中学生時代のときのあたし?」

裡沙「う、うそだよねぇー!? こ、こんなことっ…というか時間が飛んじゃうとか…!」

裡沙「そういうのだけじゃなくて、時間も戻ったりしちゃうの…?」

裡沙「ううっ…だけど寒いよぉ…」ぶるぶる

「──これ、飲んでみる?」


102 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:31:36.53 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「…え?」

薫「寒いんでしょ? なら飲んでみる?」すっ

裡沙「……」

薫「ん」

裡沙「あ、ありがと…」

薫「いいのよ、お仲間さんってことでさ。んふふ」

裡沙「…お仲間?」

薫「あれ? 違ったかしら? …こんな寒いクリスマスの夜に公園に一人ぼっちだなんて」

薫「なにか特別な理由があってここにいる、ってことじゃない?」

裡沙「あ、うん……クリスマス?」

薫「え? 今日ってクリスマスよね?」

裡沙「あーうん! クリスマス! クリスマスだよねうんうん!」

薫「そ、そうよね」



103 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:33:26.84 ID:WZ1qqIIR0
ここで薫か


104 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:36:02.28 ID:5lBNe7IQ0
薫「日にち間違ったちゃったと思ったわ…びっくりびっくり」ボソボソ

裡沙「えっと、棚町さん…だよね?」

裡沙(なんだかちょっと髪が短い気がするけど…中学生の棚町さんなのかな)

薫「あら? アタシのこと知ってるの?」

裡沙「う、うんっ。時々……見かけるし」

薫「ふーん、そうなんだ」

裡沙(興味な無さそう…)

薫「それにしても、今日も寒いわね~…アイツも風邪引かなければいいけど」

裡沙「…アイツ?」

薫「そそそ。あそこに立ってる…ほら、ポツーンっている男がいるでしょ?」

裡沙「男……」

裡沙(橘くんだよ!?)


106 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:41:07.47 ID:5lBNe7IQ0
薫「……惨めでしょ? あの手に握ってるプレゼントとか、めちゃくちゃ哀愁ただよってない?」

裡沙「……」ドッドッドッド…

裡沙(あれ、あの表情、彼の顔…)

薫「約束をすっぽかされてるみたいね、くす。とんだ間抜けよ、まったく」

裡沙「っ……」

裡沙「そんなこと言わないでっ!」

薫「へっ…?」びく

裡沙「橘くんはっ…ちゃんとちゃんと考えて、必死に頑張ってたんだから!」

裡沙「間抜けとか…笑うとか酷いよ! 絶対にしちゃだめなことだよっ…!」

薫「………」

裡沙「はぁっ…はぁ……あ、ごめん、なさいっ…!」

薫「…あ、うん」

裡沙「きゅ、急に変なコト言っちゃって…あ、あたし何言ってるんだろ…彼の表情見てたら…ううっ…」


107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:45:38.51 ID:5lBNe7IQ0
薫「…その、アンタも知ってるのね」

裡沙「…え?」

薫「アイツの頑張りとか、その、努力してたコト…知ってるのね」

裡沙「あっ…えっと、その………うん」

裡沙(今の橘くんの表情は…もう見たくないって思ったトラウマを抱えた時の橘くんだ…)

裡沙「……知ってるよ」

薫「そっか、居たんだ。アタシ以外にも…そっかそっか」コト…

薫「アイツってば馬鹿よね、でも。実る可能性の少ない恋に夢中になってさ…そう思わない?」

裡沙「え…」

薫「あんな娘好きになっちゃってさ、もっとマシな奴に見惚れるべきでしょ」

裡沙「……それは、そう思う! だってあんな子は酷いって思うもんっ」

薫「でしょ? …だからこうやってまたアイツは傷つけられてる」


109 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:51:53.10 ID:5lBNe7IQ0
薫「言っても懲りないのがアイツの魅力だけど、今回ばかりは…馬鹿だって言ってあげたいのよ」

裡沙「……」

薫「…けれど、ごめんなさい。笑っちゃって、アイツを本当に馬鹿にしてるつもりなんて無いのよ」

裡沙「う、うん」

薫「アイツの頑張りだって…ちゃんとわかってるんだから。
  ここまで漕ぎ着けたアイツの努力は本当に凄いことだって」

薫「──アタシは誰よりもわかってるつもり」

裡沙「っ…誰より、も?」

薫「うん、そうよ」

裡沙「………」

薫「ねえ、ひとつ聞いてもいいかしら」

裡沙「な、なにかな…?」

薫「……」じっ

薫「…アイツのこと、好きなの?」


110 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:56:17.49 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「ふぇっ?」

薫「違う?」

裡沙「すすすす、すすっ…しゅきっ…そんなことっ…!」

薫「だってあんなにもアイツの為に怒ってたからさ」

薫「…それってただの友達思いとか、そんなレベルじゃないでしょ」

裡沙「んぐっ…」

薫「どう? 正直に言ってみなさいよ」

裡沙「っ……えっと…」

薫「……」

裡沙「……ううっ…」

薫「……うん、いいわよ。無理して言わなくて、というか顔で丸わかりだし」

裡沙「………」ぼっ


112 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 10:58:48.57 ID:mSBzfL2RO
柱の陰から…支援


113 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:00:45.65 ID:5lBNe7IQ0
薫「そっか、こんなにも思われてる女の子がアイツにも居たのね」

裡沙「……」

薫「全く気づけなかったわ、うんうん」

裡沙「…その」

薫「ん?」

裡沙「…棚町さんは、えっと…その…」

薫「アタシがどうかしたの?」

裡沙「…う、うん……棚町さんは橘くんのこと──」

薫「好きよ、大好き」

裡沙「っ…!」びくっ

薫「当たり前じゃない、じゃなかったらこんな時間まで見守ったりなんかしないわよ」

裡沙「好き、なの…?」

薫「ええ、誰よりも好き」


114 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:06:04.57 ID:5lBNe7IQ0
薫「それに…」じっ

裡沙「っ?」

薫「この思いが、誰かに負けてるつもりも…これっぽっちもない」

裡沙「……っ…」

薫「誰よりもアイツのことを思っていて、誰よりもアイツのことを…大切にしてる」

薫「──例え他に誰か同じ様な想いを持っていたとしても、必ずアタシは勝ち取ってみせる」

薫「恋愛って、そういうものじゃない?」

裡沙「……」

薫「二人で一緒に幸せになる。それが大切なのよ」

薫「…他の誰かと笑ってるアイツを見なきゃいけないなんて、そんなの絶対にイヤだから」

裡沙「……」

薫「ふふ、もうわかってると思うけど……これは勝負を挑んでる感じよ」


115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:11:08.37 ID:5lBNe7IQ0

薫「アタシは譲るつもりなんてこれっぽっちもない、自分が勝ち取るために努力を重ねるつもり」

薫「…例えアンタと不仲になったとしても、アタシはそれでもアイツを手に入れるためには全力を尽くすわ」

薫「──それが棚町薫の生き方よ、ふふっ」

裡沙「あ、あたしはっ…」

薫「…あたしは?」

裡沙「っ…あたしは…!」

薫「……」

裡沙「……」

薫「…そうね、だったらひとまず」すた

薫「──アタシは今から、アイツの所に行くわ」

裡沙「えっ…」


116 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:13:30.35 ID:WZ1qqIIR0
邪魔すんなよ薫…


117 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:14:03.36 ID:nbhg64Id0
俺薫のそういうとこ、好きだぜ


118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:14:43.58 ID:5lBNe7IQ0
薫「聞こえなかったかしら? ならもう一度言ってあげる」

薫「あの一人ぼっちのアイツのところへ、今から逢いに行くの」

薫「…この意味、わかるわよね?」

裡沙「っ…」

薫「出来ればアタシは一人で行きたい、傷ついてアイツを慰めてあげたい」

薫「…ガラじゃないけど、ま、それぐらいしないと近づけないでしょうし」

裡沙「……」

薫「そんな感じよ、どうする? このアタシを止める?」

裡沙「…っ…」

薫「止めたきゃ全力で来なさい、殴ってもいいわよ、殴り返すけど」


119 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:17:57.96 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「……」

薫「ふふ、じょーだんよ。、殴り返さないから」

薫「だけど…そうね、きっとアタシは」

薫「──本気でアンタの敵になるつもりだから」

裡沙「……」

薫「いい夜になったわ、やっぱり見に来て良かった。
  ……アンタみたいな奴を知れる機会を得たんだから」

薫「覚悟しなさい、そう簡単に負けないわよアタシは」

裡沙「……」

薫「十秒あげるわ、決断しなさい」

裡沙「…十秒っ…」


120 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:21:37.29 ID:5lBNe7IQ0
裡沙(あ、あたしはっ…彼のあんな顔を見たくないっ…)

薫「……」

裡沙(だけど今、棚町さんを向かわせちゃったら…きっとそれはいい方向に行くと思う…)

薫「後五秒」

裡沙「っ……」

薫「三」

裡沙(あたしはっ…! あたしはっ………)

薫「二」

薫「一」

裡沙「っ…………」

薫「はい、時間切れ」

薫「どう? 決めた?」

薫「──アタシの敵になる覚悟は?」


121 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:24:06.10 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「……」

薫「…言わないのなら、アタシは行くだけよ」すた

裡沙「あっ…」

薫「ん、なに?」

裡沙「うっ……ううっ…」

薫「なにか言いたいことでもあるの?」

裡沙「っ…」

薫「…はぁ」

薫「──もうダメよ、行かせてもらうわね」すたすた

裡沙「っ…!」

薫「…今のアンタじゃ、アイツを幸せに出来ないわ。それじゃ気をつけて帰るのよ~」ふりふり


122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:29:17.31 ID:5lBNe7IQ0
裡沙(し、幸せにっ…)

薫「……」すたすた

裡沙(あ、あたしだってっ…彼を幸せにできるっ…)ぎゅっ

裡沙(だから止めなきゃダメっ…棚町さんをっ…あの子を止めなきゃダメっ…!)ぐぐっ

裡沙「…あ、あれ…?」

裡沙(あ、足が竦んで…どうして、動けない!?)

裡沙(ど、どうしてっ…なんでなんでどうして! 止めなきゃ──)

『ジジッ…』

裡沙(どんなことをしたって止めなきゃダメなのにっ…あたしは、ちゃんとあたしで彼を…!)

『ジュジュッ…ガガッ…』

『───アタシが〝薫〟と呼ばれる理由、それは三年前の冬の公園。そこでその思いを決めたのよ…』


123 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:34:49.17 ID:5lBNe7IQ0
裡沙「っ…ゲーム機…?」カチャ

裡沙「また声が…棚町さんの声っ…あはは、そうだよ、これを押しちゃえばいいんだっ…!」ぎゅっ

裡沙「そうすればっ…そうすればっ…!」

裡沙「あの子を止められる! あの子を橘くんの元へ行かせなく出来るんじゃないっ…!」

薫「……」すたすた

裡沙「だ、大丈夫っ…なにも怖くないよ、裡沙…こんなの大丈夫大丈夫…」

裡沙「──きっと何時かはあたしだけのルートに、いけるはずだからっ…!」

ポチ!


『──バンバン! バン! ピュイ!』


裡沙「あはは」


……ギュルルルル! 


124 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:40:00.33 ID:DVr/WhCr0

ジジジッ…! ギュルルル!

裡沙「ははっ…うっ…おえっ…!」

裡沙(また──景色が、今度はっ…緑からっ…橙色に…!)

ギュルルルルル!!

裡沙「……頭がっ…」ぐらっ




『───ロードが成功しました』



~~~

裡沙「……」

裡沙「…夏、なのかな」

ミーンミーン

裡沙「また、時間が飛んじゃった…」


125 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 11:40:36.45 ID:DVr/WhCr0
トイレ


127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 12:02:10.83 ID:WZ1qqIIR0
はよ


131 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:01:07.65 ID:DVr/WhCr0
裡沙「……暑い…」

裡沙「……」トボトボ…

~~~

自宅

裡沙「──8月中旬…」

裡沙「夏休み中ってことなのかな、うん」

裡沙「……」

裡沙「何か飲み物でも飲もっと…」

がちゃ…

裡沙「…りんごじゅーすでいいや」ぱたん

裡沙「…」



133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:04:59.29 ID:DVr/WhCr0
裡沙(また高校生の頃に戻ってる、中学生の時じゃない…)コト

裡沙「…」

裡沙「…やっぱり、このゲーム機が…」カチャ

裡沙「どうしてボタンを押したら時間が飛ぶんだろ…」

裡沙「…本当に今更だけど」

裡沙「……あのあと、どうなったのかな」

裡沙「絢辻さんの時も、棚町さんの時も──あのあと、どうなったのかな」

裡沙「時間だけが飛んじゃって、それから橘くんは……」

裡沙「…わけ、わかんないよ…もう」

裡沙「……テレビでも見よう」ぴっ

『──はぁーい! 今人気沸騰中のアイドル桜井リホに取材にきてまーす!』



134 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:09:41.42 ID:DVr/WhCr0
裡沙「……」

裡沙「…アイドル?」

『こんにちわ~! 最近はKBTをソロデビューされたそうですが!』

リホ『そうなんでーす! だけどだけど、それでも頑張ってやっていってますよ~?』

裡沙「さ、桜井さん!?」がたっ

リホ『歌も踊りも、そして舞台のお仕事も頑張って行きたいと思いま~すっ』

裡沙「桜井さん、いつの間にアイドルに…? えっ? なんでっ?」

『なるほど~! ですが、ちょっと気にあるウ・ワ・サを耳にしてるんですが~?』

リホ『あ、えっと……それは、もしかして…?』

裡沙「…?」

リホ『──私の幼馴染、のことでしょうか?』


135 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:14:17.42 ID:DVr/WhCr0
『わぁお! そうなんですか!? 幼馴染なんですか!?』

リホ『えへへ~! そうなんですっ、昔からの付き合いで~実はアイドルになった理由も実は~』

裡沙「……」

リホ『──その幼馴染のお陰なんですっ!』

裡沙「…幼馴染って」

『え~と、ちょっと待って下さいよ? 前に心に決めている人がいる。って言ってましたよね?』

リホ『あ、えっと…』

『…もしかして、それってもしや?』

リホ『…えへへ』

『ひゃ~! そうなんですか、それは凄い運命を感じますね!』

裡沙「……」

リホ『でもでも、私の片思いなんです~…全然振り向いてくれなくて、こんなに頑張ってるのにちっとも』


136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:18:27.09 ID:DVr/WhCr0
『それは酷いですね…』

リホ『だけど、絶対に諦めません~! かならず振り向かせてあげるんだからね~! 『ピー!』!』

『あ、リホちゃん…? 本名はちょっと…』

リホ『え? あはは~ごめんなさい~』

裡沙「………っ」

ぴっ!

裡沙「……今の、桜井さんが言ってたのって…」

裡沙「橘くんのこと──だよね…?」

裡沙「幼馴染だって……桜井さんと橘くん、昔から付き合いがあって…」

裡沙「っ…」がたっ

~~~

裡沙「今日の新聞…あった」がさ

裡沙「──…衝撃、人気沸騰中のアイドル桜井リホに恋人…」


138 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 13:23:07.82 ID:DVr/WhCr0
裡沙「事務所も否定的な言葉は無く、事実として受け止められ…」

裡沙「…桜井リホ自信も特に否定しておらず、そして…」

裡沙「──恋を頑張る恋愛応援アイドルとして……人気を爆走中…?」

裡沙「……」

パサ…

裡沙「……桜井さん、そんなことになってたんだ…」

裡沙「でも、あたしが知ってる桜井さんは…アイドルなんて…」

裡沙「……そうだよ、桜井さんはあたしと同じクラスで、ただの学生だったのに…」

裡沙「なんで…」ふら…

裡沙「……っ…」

ピッ

『──それでは、新曲のほうを紹介させてもらいますっ』

『恋を恋するまぜまぜ酢飯! いぇい☆』


150 ほしゅどうもです :2012/11/05(月) 15:38:54.10 ID:DVr/WhCr0
裡沙「……」

裡沙「テレビの中で歌ってる…あの桜井さんが…」

裡沙「本当にアイドルになっちゃってるんだ…桜井さん…」

裡沙「……」

裡沙(──桜井さん、橘くんと幼馴染で…小学生からの付き合い)

裡沙(ずっと橘くんと同じ距離を保ってきてて、
   影から見守ってるような……ちょっとだけあたしと)

裡沙(似てるような気がして、たのに)

裡沙「…アイドルになっちゃったんだ…」

裡沙「しかも橘くんのことを諦めてなくて…」

裡沙「…凄い立場にいるのに、それでも…それでも…」


151 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 15:43:38.01 ID:DVr/WhCr0
裡沙「…あたしも同じ、幼馴染なのに」

『──すめっしすめっし恋するすめっし!』

裡沙「あたしは……」

裡沙「あなたと…全然違う…」

裡沙「……」

裡沙「何もない、あたしには…なにも……」

『──ジジジッ……』

裡沙「……」

『ガガガッ…』

『──……ごめんなさい、橘くん。わたし、もうあなたと一緒にいられる…勇気がないんだよ…』


152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 15:46:55.31 ID:DVr/WhCr0
裡沙「…この声…桜井さんの声」

カチャ

裡沙「………」

裡沙「…あはは、そっか」ぎゅっ

裡沙「──あたしには、これがあるじゃない」

裡沙「このゲーム機があれば…そうだよ、これを押しちゃえばきっと…!」

裡沙「………」

『ジジジッ…!』

裡沙「あたしには何も無いけどっ…桜井さんにはアイドルがあるけどっ…」

裡沙「あたしには──これがあるんだからっ…!」

ぐぐっ

裡沙「…負けない、絶対に…っ」

ポチっ


154 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 15:52:03.63 ID:DVr/WhCr0
ジジジッ…! ギュルルルル!

裡沙「んっ……また、景色が染まっていく…」

裡沙(橙色から……今度は濃い青に…)

ギュルル! ジュルルルルル!

裡沙「……頭が…」ぐらっ

ジジジッ…



『──ロードが成功しました』



~~~

裡沙「………」

裡沙「…ここは、学校?」

裡沙「夜の体育館…いや、違うかも…これは…」

裡沙「──プール?」


157 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 15:57:07.08 ID:DVr/WhCr0
裡沙「どうしてあたし…」

裡沙「…しかもちゃんと水着着てるし」

「──お待たせしました、上崎先輩」

裡沙「え?」

七咲「待たせてしまって、すみません」

裡沙「……」

七咲「少し着替えに時間がかかってしまって……えっと、上崎先輩?」

裡沙「…え?」

七咲「大丈夫ですか? どこか具合でも悪いのなら今日の約束は…」

裡沙「あっ…えっと、ううん! 大丈夫だよ!」

七咲「そうですか?」

裡沙「う、うん!」

裡沙(ど、どういうことっ? えっ? 約束!? しかもこの子って…)


158 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 16:00:55.02 ID:DVr/WhCr0
裡沙(一年の水泳部の子…だよね? どうしてあたしと仲良さそうに会話してるんだろ…?)

七咲「…とりあえず、準備体操はキチンとしておきましょう」

裡沙「あ、うん…」

~~~

七咲「──先輩って体やわらかいですね、何かやられてるんですか?」ぐっ…ぐっ…

裡沙「えっ? あ、えっと…ちょっとだけ…」

七咲「なるほど、よほど良い鍛えた方をしてますね」

裡沙(…橘くんを追いかけるために色々と鍛えてるからね…)

七咲「是非水泳部に入っていただきたいです、どうですか?」

裡沙「そ、それはっ…ちょっと無理かな…あはは」

七咲「そうですか…」

裡沙(あ、残念そう…)


159 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 16:03:24.31 ID:DVr/WhCr0
七咲「…この程度で大丈夫だと思います、本格的に泳ぐわけでもないですし」

裡沙「う、うん」

七咲「それでは入りましょうか」

チャプ…

裡沙「……」

七咲「上崎先輩?」

裡沙「は、はいっ」

七咲「…入らないんですか?」

裡沙「あー…うん! 入る入る!」

チャプっ

七咲「…温水プールですから気持ちいいですよね」

裡沙「そ、そうだね」


160 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 16:07:53.80 ID:DVr/WhCr0
チャプチャプ…

七咲「……」

裡沙(気まずい、ぶくぶく)

七咲「…今日は来てくださって、本当に有難うございます」

裡沙「あ、うんっ」

七咲「先輩は今日来てくれないって思ってました、実の所は」

裡沙「えっ、どうしてそう思ったの…?」

七咲「……」

裡沙「……?」

七咲「美也ちゃんが上崎先輩のことを教えてくれて、それから私たちは話をするようになりましたよね」

裡沙(美也ちゃん…? あたしと水泳部の子と繋がりが無いって思ってたけど…なるほど…


171 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 17:34:31.69 ID:DVr/WhCr0
七咲「最初は色々と戸惑ってしまいましたけど……ふふ、先輩がとても優しくて」

七咲「──今はこうやって、二人で泳ぐ約束も出来てるわけです」

裡沙「……」

七咲「本当に、ありがとうございます上崎先輩」

裡沙「……あ、うん…」

裡沙(あたしのお陰…? 何を言ってるんだろう…)

七咲「……」

裡沙(水泳部の子と仲良くした記憶なんてこれっぽっちも…それに…)

裡沙(さっきまでの…桜井さんだって、いつの間にかアイドルになってて…)

裡沙(色々と時間が飛んじゃったせいなの? …ううん、それでも何か違うような気がする…)

七咲「…上崎先輩」

裡沙「ひゃい!?」


172 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 17:36:59.81 ID:DVr/WhCr0
七咲「……」

裡沙「な、なにかな?」

七咲「…また同じ様なことを言ってしまっても、良いでしょうか」

裡沙「同じ様なこと?」

七咲「はい、あの時と同じように───あなたに、あの時の言葉を」

七咲「もう一度、言ってしまってもいいでしょうか」

裡沙「……」

七咲「……」

裡沙「…う、うん」

七咲「…はい」

七咲「上崎先輩…」チャプ…

七咲「──私は橘先輩が好きです」


174 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 17:42:38.37 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「っ…!」

七咲「あれからずっと…」

七咲「…この気持に嘘はありません、変わり様も全く無いです」

裡沙「……っ…好き、なの…?」

七咲「……」

七咲「──はいっ! 大好きですっ!」

裡沙「………」

七咲「上崎先輩が私に言ってくれた、言葉は忘れることはないと思います」

七咲「──この思いを大切にして生きていけば、ずっと橘先輩を幸せにできるって」

七咲「……今の私もそう思えるんです」

裡沙「っ……それって…!」

七咲「え、はい…?」

裡沙「あ、あたしが……本当に…言ったの…?」


175 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 17:48:30.09 ID:8jK3Tcxk0
七咲「……忘れてしまったんですか…?」

裡沙「あっ…いや! 違うの! 忘れたんじゃなくって…!」

七咲「……」

裡沙「そのーっ…えっと、もう一度確認! そう確認しようって思って…っ」

七咲「確認…?」

裡沙「う、うん! だってほら、大事な言葉だから…その、ね?」

七咲「…そうですね、大切な言葉ですから」

七咲「…上崎先輩は言ってくれましたよね、
   私が先輩と付き合う時、本当に彼を幸せにできるのかと」

裡沙「…う、うん」

七咲「私は──少しその言葉に迷ってしまったんです」

七咲「いつまでも幸せにするなんて、本当に私ができることなのかなって」


176 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 17:57:09.28 ID:WZ1qqIIR0
支援


178 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:05:00.78 ID:8jK3Tcxk0
七咲「…だけど、今の私ならこう思えるんです」

七咲「私も一緒に幸せになり続ければいいって」

裡沙「……」

七咲「頑張ることをだけを考えるんじゃなくって、
   自分も嬉しいって思えることをしていけば、自然とそれは…」

七咲「…幸せに繋がるんじゃないかと、思うんです」

裡沙「……」

七咲「きっとそれは上崎先輩が言ってくれた言葉のほんとうの意味では無いと、思います」

七咲「だけど、私はその言葉でこのことに気づくことが出来た」

七咲「──橘先輩という男の人を、ずっと好きで居られる覚悟が出来た」

七咲「…上崎先輩」

裡沙「あ…」

七咲「本当にありがとうございます」ぺこ


179 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:10:26.06 ID:8jK3Tcxk0
七咲「私はこれから橘先輩と一緒に……ずっと居続けます」

七咲「上崎先輩が言ってくれた言葉を、私はずっと忘れません」

裡沙「……」

七咲「…私は絶対に、逃げませんから」


裡沙「っ……──」

裡沙「──やめ…て…」ぼそっ


七咲「…え、何か仰られました?」

裡沙「うっ……やめてよ、そんな目で…」ぱしゃっ…

七咲「上崎先輩…っ?」

裡沙「どうしてそんなっ……強いことを言えるのよっ…そんなっ…そんな…!」

裡沙「逃げたくなることだってあるよっ…幸せになりたいって思ってもっ…」

裡沙「…それができないことだって…無理なことだって思っちゃうことがたくさんあるんだよっ…!」


180 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:14:34.27 ID:8jK3Tcxk0
七咲「え…」

裡沙「だからっ…なんにだって頼っちゃって…! どうしようもないって思ってもっ…!」

裡沙「──それしか方法がないんだからっ…それにしかあたしには出来ないからっ…!」

七咲「……」

裡沙「無理だよっ…一人で頑張り続けて、彼の側に居続けるのなんてことはっ!」

七咲「……」

裡沙「なにか特別なことが無いとっ…絶対に、絶対に!」

七咲「…そんな事ありません」

裡沙「ッ…どうしてそんな事言い切れるのよっ!?」

七咲「だって、そうとしか思えないから」

裡沙「っ…単純だね、そうやって失敗するんだよっ!」

七咲「かもしれません、ですけど恐れてどうしろというんですか?」

七咲「──失敗を恐れ続けても、前に進むことなんて出来ませんよ」


181 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:21:37.55 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「っ…!?」

七咲「私はそう思います、上崎先輩」

七咲「例え今の私が言った側に居続けるという覚悟、それが本当に続けられるかは正直な所」

七咲「…全然自信がありません、ですけど先輩」

七咲「それでも自分で決めて、覚悟を持って進まなきゃダメじゃないですか」

裡沙「そっ…それが後になって間違いだったって気づいてもいいのっ…!?」

七咲「…考えすぎです、未来は未来でしょう」

裡沙「考えすぎじゃないよっ! もしかしたらもう、明日には橘くんがあなたを嫌いになってることだってあるんだよっ…!」

裡沙「その時になってあなたは今までのことが、絶対に後悔のないものだったと思えるの!?
   自分が本当に頑張れた子だったのかなってっ…自分を納得させることができるっていうの!?」

七咲「…そんなこと、する必要なんてありません。納得なんてする意味はないはずですよ」

裡沙「なんでよ!?」

七咲「頑張ったからですよ、自分の力で」


185 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:27:41.66 ID:8jK3Tcxk0
七咲「自分のできる精一杯の力でやったことに、後悔なんてするはずがない」

七咲「それでも不幸になったしまったときは、きっとそれは、もっと大きな問題があったはずです」

七咲「…その問題を受け止められる覚悟は、頑張り続けた私という《私》でちゃんと受け止められる」

七咲「上崎先輩、後悔っていうものは……」

七咲「……自分の中で『これでいいや』と思ってしまうことだと思います」

裡沙「っ……」

七咲「何か自分以外のモノで幸せを補おうとした結果だと思うんです」

七咲「独りで頑張る理由はその為にです。後悔なんてことを、したくないから」

七咲「──ずっと側に居たいと、例え不幸になっても橘先輩を好きでいたいから」


186 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:32:26.63 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「そんなのっ…!」

七咲「認めてください、上崎先輩」

裡沙「うっ…」

七咲「先輩……はっきりといいます、私はあなたと違って逃げはしない」

裡沙「なっ…!」

七咲「私は逃げないんです、先輩。橘先輩と立ち向かい続けますよ」

七咲「嫌われてもいい、もっと好きなって貰ってもいい」

七咲「…今後どちらかに物事が転がっても、私は逃げはしない」

七咲「──あなたみたいに現実から逃げたりなんかしない」

裡沙「っ…!」ばしゃっ

ばしゃばしゃっ

七咲「また…また逃げるんですか!」

裡沙「ひっくっ…ぐすっ…」ばしゃっ!


187 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:35:58.50 ID:8jK3Tcxk0
七咲「そうやってまた…私と橘先輩からっ…!」

裡沙「はぁっ…はぁっ…」

七咲「それじゃあ何も解決しません! どうしてっ…どうして正直になられないんですかっ…!」

裡沙「んくっ…」ばしゃっ

七咲「上崎先輩っ…! あなたは私と仲よくなって、それで結局は良かったんですか!?」

七咲「違うはずですよね!? あなたはっ…あなたはきっとまだ先輩のことを…!」

裡沙「うっ…ううっ…!」たたっ

七咲「だから私まだっ…上崎先輩! 私はあなたとちゃんとこれからっ…!」

たたたたっ

バタン!

更衣室

裡沙「はぁっ…はぁっ…ひっぐ…はぁっ…」


191 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:51:58.25 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「う……うるさい、うるさいうるさいっ…!」すとんっ

裡沙「なんにも分かってないくせにっ…なんなのよっ! 橘くんの何をわかってるのよ!?」

裡沙「彼のことを分かって挙げられるは私だけなのにっ。全部全部受け止められるのは私だけなのにっ…!」

裡沙「彼のトラウマを癒してあげられるのはあたしだけなんだから…っ」


『ジジジ…』


裡沙「一人の力でなんて無理に決まってるじゃないっ…何かに頼らなきゃ、後悔することになるに決まってるんだからっ!」


『ジジ…ガガ…』


裡沙「絶対に後悔することになるよっ…あたしも、彼女に何言ってるのよっ…! あんなこと言って、何かっこつけてるのよっ…!」


『ザザザッ…』


『───先輩、部活やめちゃいました…これでよかったのでしょうか、私はわかりません…』


193 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 18:56:18.54 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「……」

裡沙「…不幸は誰にだって、やってくるもんなんだよ…」ふら

裡沙「誰にだって…避けられない…絶対に…頑張るから受け止められるなんて、そんなことありえないんだよ…」

カチャ…

裡沙「───だから……」

裡沙「不幸…経験してみればいいよ…」

ポチ

ギギギギッ…ギルルルルル!!

裡沙「あはは…強がってみせなよ、そんなこと絶対に言えなくなるから」

ぎゅるるるるる

裡沙「うっ…おえっ……ううっ」ぐら

裡沙(濃い青から、今度は───……)



『ロードが成功しました』


194 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:00:05.21 ID:8jK3Tcxk0
~~~

裡沙「………」

裡沙「…今度は何処なの」

裡沙(見覚えがない、ここどこだろ……)

裡沙「…取り敢えず歩きまわってみよう」

とぼとぼ…

裡沙「……」

裡沙「…あたしは別に、悪いことなんてしてない…」

裡沙「だってこれしかっ…あたしには無いんだもん…」カチャ…

裡沙「これだけが、これだけがあたしと橘くんの仲を…」

裡沙「………」

すた…

裡沙「……大好きなんだもん…」


196 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:04:25.43 ID:8jK3Tcxk0
『ジジジッ!』

裡沙「好きだから…仕方ないよ…仕方ないんだよ…」

『ジジッ…ガガガッ…!

裡沙「何度だって…何度だって…」

『ガガガガガガッ…』

裡沙「──橘くんの周りにいる女の子をっ…みんなみんな離してやるんだからぁっ!」

裡沙「絶対に絶対に! もうっ…何が起こったって構わないんだからっ!」

ぎゅっ


『──ジジジッ…』


『──せんぱい、私ずっと好きでした……だけど、それはもう遅いですよね…』


199 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:08:57.45 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「っ…また声が…」

裡沙「この声は確か……一年のツインテールのっ…!」

裡沙「なによっ…好き好きって…そうやってただ自分の想いをぶつけてるだけじゃない!!」

裡沙「ちゃんと彼の気持ちもわかってあげてないよねっ!? なんなのっ…なんなのなんなのっ…!」

裡沙「ぐっ…もういや! いやいや! 橘くんはあたしのなんだよっ…!」ぎゅっ

カチャ…

裡沙「──みんなもう居なくなっちゃえ…」ガチャガチャ!

『ガガガっ!』

裡沙「いいんだよっ…どうなったって…! もういいんだよっ!」


──っギギギギギギイギギギギギギギギイギギギギ


201 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:17:30.69 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「こんなのっ! こんなっ…おえっ…」ぐらっ

裡沙(気持ち悪いっ…なにこれ、景色がぐるぐる…って…)

裡沙(桃色に染まってっ…あれ、今度は…紫っ…?)

ギュルルルルル!!

裡沙「今度もまたっ……時間が飛んじゃうっていうのっ…?」ぐぐっ

裡沙「──もうそんなのっ…!」カチャ

『ロードが成』

裡沙「えいっ…えいっ…!」ガチャガチャッ

『ロ ロードが成 成功 ジジッ』

裡沙「もうわけわかんないことっ…させないんだからっ…!」ギチギチッ


『ロード ロー ロロロロロロロロロロロロロ』


『ロ───……ジジッ…──橘君、ラブリーって呼んでみて? もしかしたらコレが最後かもって、うそうそ!』


202 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:20:07.31 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「うっ……ううぅーっ…!」ガチャガチャ

ギギギギギギギギギ!!!

裡沙「もうっ…やめてよ、もうあたしと…橘くんのっ……!!」

ギギギッギイギギュルルル

裡沙「───邪魔をしないでよぉっ!!!」



ガチャっ!!!




『───……ジジッ…』




『ロードが失敗しました』


203 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:21:37.28 ID:8jK3Tcxk0
オイレ


204 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 19:22:30.93 ID:MT/LjOPe0
オウヨ


215 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:06:54.18 ID:8jK3Tcxk0
カァーカァー…

裡沙「ここは…」

裡沙「…横断歩道…?」

裡沙「わわっ…! もう信号変わろうとしてる…!」たたっ

裡沙「ふぅ、危なかった…」

裡沙「……」

裡沙「横断歩道の真ん中でボーっとするなんてあたし…」

裡沙「……」

裡沙「──今、何時だろう……」

リンゴーン…リンゴーン…

裡沙「あ、公園の時計の鐘が……じゃあ五時なのかな」

バタバタバタ!

裡沙「きゃっ!」

裡沙「っ…な、なんなの急に鳥が…!」


216 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:08:45.06 ID:8jK3Tcxk0







───ドンッッ!!!!










218 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:11:52.10 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「──……え?」くるっ


キキィッ! 


裡沙「……」


「な、なんだ…お、おい!!」

「きゃあああああ!!」

「ちょ…嘘、まじでかよ…」


裡沙「……」


「だ、誰か車に撥ねられたぞっ…! 救急車! 救急車呼べって!!」

「あの制服って…輝日東高校の制服だよね…どこの男子…?」

「わ、わっかんないっ…」


裡沙「……え?」


219 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:16:52.93 ID:8jK3Tcxk0
ざわざわっ

裡沙「……」


「救急車を呼べって! 誰かっ…」

「今呼んでますよ!」

「おい、此方に来てくれ! 運転手が頭から血を…!!」


裡沙(──え、なにこれ、待って)

裡沙(あれって、嘘、違うよね)

裡沙「うそ……うそうそうそ…」すた…

裡沙「……っ!」

「──にぃに!!?」

美也「に、にぃに…! え、嘘っ…なんで、どうしてっ! にぃにって! 起きて!」


220 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:21:09.60 ID:8jK3Tcxk0
「お、おいキミ! 知ってるのか?!」

美也「にぃにってば! なんでっ……にぃに!」

「あ、あんまり揺らすなっ! おい、誰かこの子を止めるぞっ…!」

美也「やっ…やっ! 離して! にぃに! 起きてよ! うわぁああああああんっ…!」

「はやく救急車を呼んでくれ!」

「ほら、落ち着いて! まだ死んだって決まったわけじゃないっ…!」

美也「死んだって……うそだよ、そんなのっ…!」

美也「にぃにっ!! にぃにぃいいい!!」


裡沙「っ…あ、あっ……」すた…

裡沙「そんなのっ…なんで、どうして…?」

裡沙「橘くん……が、どうして車に…?」


223 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:25:18.63 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「っ……!」くるっ

たったった

裡沙「な、なんで…どうしてっ…!」

裡沙「う、嘘だよっ…あんなの夢に決まってるじゃないっ…橘くんが車にはねられるなんてっ…うそうそうそ!」

裡沙「夢に決まってるよっ…コレは悪い夢、悪い夢ゆめゆめ…」

たったった…すた…

裡沙「…………」

裡沙「……夢じゃないの…?」

裡沙「じゃあどうしてっ……こんなことありえないっ…よっ!」

裡沙「だめだよ! こんなこと現実で起こっちゃダメ! 橘くんは幸せにならなくちゃっ…」

裡沙「なんとしても、幸せにっ…幸せにっ…!」


『──ジジジッ…』


225 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:28:47.39 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「!」

裡沙「…そ、そうだよっ…これがあるじゃないっ…!」カチャ

裡沙「これがあればっ…橘くんが撥ねられる前に、戻ればっ…!」

裡沙(だけどっ…上手くその時間帯に戻れることなんて出来るのっ…?)

裡沙「お、お願いっ…どうか、橘くんを…助けたいのっ…!」

裡沙「なんだってするから、本当に、本当になんだってするから…!」

裡沙「───橘くんを救ってあげられる時間に、あたしを飛ばしてっ…!」


『──ジジジッ…』

『──橘くんが横断歩道を渡ろうとしてるみたい、後ろから話しかけてみようっと』


裡沙「え、あっ……来た、の? 声が聞こえたよねっ…しかも横断歩道って…!」


226 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:32:29.13 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「お願い! あたしをっ…そこに飛ばして!」

ポチ!

『ドュルルルルルン!!』

裡沙「お願い…お願いしますっ…」

裡沙「彼が死ぬなんてっ…そんなの認めたくないっ…」

裡沙「あたしは彼をしあわせにしな」

~~~

カァーカァー

裡沙「……」

裡沙「…飛んだ? 時間…飛んだの?」

リンゴーンリンゴーン…


228 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:36:55.04 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「鐘の音っ……もうすぐじゃないっ…!」ばっ

裡沙「橘く───」

バタバタ!!

裡沙「きゃっ……」

裡沙「……あ、ダメっ…!」


──ドン!!!


裡沙「……あ……あ…」

裡沙「…うそ、だめ…そんなの……」

裡沙「ダメだってばっ…そんなこと怒っちゃダメなんだよっ…!」

『ジジッ…』

裡沙「───っ……橘くんは絶対に、死なせないっ…!」カチャ

裡沙「絶対にあたしが救ってみせる!!」

ポチ!


229 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:38:30.04 ID:8jK3Tcxk0
~~~

時間跳躍回数1025回目後

~~~


232 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:42:26.48 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「………」

裡沙「…前は、橘くんは……」

裡沙「……助けて、それから、電車に跳ねられちゃって…」

裡沙「その前は猫を助けて、死んじゃって…」

裡沙「その前は人を庇って刺されちゃって…」

裡沙「その前は…その前は…」

裡沙「……自分から、自殺しちゃった」

裡沙「………あはは」

裡沙「あはは……なにこれ、どうしようもないよ…なにをすればいいの…?」

裡沙「助けても助けても助けてもっ…橘君っ…!」

裡沙「死んじゃうじゃないっ…!!」



233 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:48:33.85 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「もう……嫌だよぉ……どうしたらいいのよっ…」どさっ

裡沙「橘くんっ…あたしが悪かったのかなっ……」

裡沙「こんなにも好き勝手しちゃったからっ…良いように橘くんをっ…!」

裡沙「このゲーム機でっ…やっちゃったからっ…なのっ…?」

裡沙「ううっ……ううぅうっー! うわぁあああああんっっ…!」

裡沙「ああああっ…いやだよぉおおっ…ごめんなさぁああいっ…!」

裡沙「橘くぅうんっ…あた、あたしっ…本当にっ…ただあなたをしあわに、した、くてっ…!」

裡沙「だけど、あたしはっ…あたしはっ……!」

裡沙「っ……あたしは、本当に橘くんにっ…」


裡沙「───幸せになって欲しかっただけだったのに……っ」


『──ジジッ……ピチュン!』


236 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 20:53:29.69 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「うわぁああんっ…ひっぐ…ぐすっ…!」


『ジジ……える……ジジッ…』


裡沙「ひぐっえぐっ……えっ…?」


『ガキュインッ……この……文字が…ジジジッ…!』


『──この文字が見えるかな…ジジッ……上崎裡沙…?…ジジュ…』



裡沙「っ……なに、これ…?」


『見えているのなら……何処かのボタンを押して…ジジッ…』


裡沙「文字が画面にっ…? 今までずっと真っ暗だったのに…」


『じかんがナイ、はやくして…このルートはそう…つな…だから…』


238 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:00:53.84 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「えっ…ぼ、ボタンを押せばいいのっ?」カチャッ

『?? なんて言ってるか…わからな…声が…とにかくボタ…して…!』

裡沙「よ、よくわからないけれどっ…ボタンを押すんだね? う、うんっ…」ポチ



『…がとう、反応を……ったから、もう大……心して』


裡沙「え…?」


『──うこそ……7…目の……ータ…上崎裡沙…』

『ジジジッ……画面に出る、……択肢を…選ん……ぶのよ…』


裡沙「な、なんなのっ…? 文字が途切れててよくわからないっ…!」


『──択はあなたに……せる……ピチュン!』

裡沙「えっ!? 画面が暗くっ…なんなの!? どうしろって──」

裡沙「───え?」


『このデータをロードしますか?』


239 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:05:52.58 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「…画面に文字がはっきりと…」

裡沙「はい、いいえ…これを選ぶの…?」

裡沙「……」

裡沙「っ……よくわからない、わからないよあたしっ…」

裡沙「だけどっ…あたしにはもう、何もできることなんてないっ…!」

裡沙「……えいっ」

ポチ

『──ロードに成功しました』

裡沙「うっ…!」

裡沙「景色がっ……灰色…? からっ……」

裡沙「───うわぁっ……」

ギュイン──……


241 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:12:07.46 ID:8jK3Tcxk0
『──ようこそって、言っておこうかな?』

裡沙「……ここは」

『──一つ目のセーブデータ、水色のデータだよ』

裡沙「……文字が、画面に…」

『上崎裡沙、あなたは一つ目のデータをロードをさせた』

『そこはあなたが最初に【選択肢】を選んだ世界──』

『──絢辻詞の世界線…』

裡沙「……何を言ってるの…?」

『わからないよね、きっとそうだって思う。
 あなたはただ単にこのゲーム機を拾って、それとなーく選択肢を選んでただけなんだもん』

裡沙「選択肢…? 一体何のことを言ってるの…っ?」

『大丈夫、いまからちゃんと説明してあげるから。とりあえず落ち着ける場所に移動してくれないかな』


『──今あなたが置かれている状況を、そしてしなければならないコトを』

『──あたしがガイドしてあげるから!』


242 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:17:17.96 ID:8jK3Tcxk0
~~~

自宅

『あなたはつまり、時間跳躍をしているの』

裡沙「じ、時間跳躍…?」

『そう、単純に言えばだけどね。まあ厳密に言うと───』

『──460408543803ってことになるんだけど、やっぱり文字化けしちゃうか~』

裡沙「も、文字化け…」

『詳しいことは分からなくていいよ、とにかく、あなたがそのゲーム機を弄ることによって』

『──未来、または過去が改変されてしまうというモノなんだよね』

裡沙「…???」

『あはは、わからないよね。あたしだって最初はわからなかったし』

『だけど気づいてたでしょ? あなたが知らないようなことが、まるで当然のように行われてる現実を』

『──上崎裡沙、その目で見てきたはずだよ?』


244 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:23:03.57 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「…桜井さんのことや、水泳部のことか…?」

『そう、それのこと』

『それはあなたが本来存在し得る世界線から飛び抜けて、違う世界線での上崎裡沙に変更されてしまってるの』

『それが──【ロード】、それをゲーム機によってロードされてしまうと…世界線を飛び越える』

裡沙「よ、よくわからないけれどっ…なんなのこのゲーム機…?」

『うんうん、凄いよね。だけどそこは気にしたら負け、あたしだって何が何だかわからないから』

裡沙「…そうなの?」

『お馬鹿さんだから、えへへ』

裡沙「……」

『えっとね、あともうひとうだけこのゲーム機には機能があって』

『──それは【選択肢】という機能』


245 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:26:11.82 ID:hes79XEe0
ふむ


247 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:31:18.51 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「選択肢…?」

『さっきこのゲーム機のせいで過去と未来が変わっちゃうって書いたよね?』

裡沙「…う、うん」

『それは【ロード】でもそうなんだけど、厳密に言うと【選択肢】のほうが重要なんだよ』

『詳しくいっちゃうと、あなたが今まで経験して来た──…ほぼ全部の時間跳躍は』

『【ロード】によっての世界線変更』

『とある選択が決め手となって世界線が変更されてしまった』

『そのとある選択というのが……【選択肢】』

『この【選択肢】というのがちょっとやっかいでね、
 ──ほぼその世界線で終わるべきだった現象、出来事、未来、そして過去を』

『大幅に変えてしまうという機能を持っているの』


248 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:36:45.13 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「……うん?」

『もっとわかりやすく言うよ? 【選択肢】は橘くんの未来を変更させる──』

『──絶対的な力って思ってくれればいいね』

裡沙「橘くんのっ…未来を変えるっ…?」

『そう、本来の道筋にそって展開するべきだった現実があなたの【選択肢】によって』

『───ガラリと変更してしまっているの』

裡沙「……」

『これは世界線を飛び越えているわけじゃない、本当に途中から変更されてしまっているの』

『まっすぐだった道を、途中で大きなバッテンで通れなくしちゃってる感じかな?』

『バン! ってね?』

裡沙「……」

『──そしてこの【選択肢】が一番厄介なのは……取り返しがつかないこと』


250 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:41:39.93 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「…取り返しがつかない…の?」

『そうなの、【選択肢】は一度選ぶと…もうほかに選ぶことができない』

『──選ばれた未来まで一直線で、世界は進んでいく』

裡沙「選ばれた…」

『うん、そして上崎裡沙……あなたはその【選択肢】を決行してる』

裡沙「えっ?」

『橘くんの未来を変えてしまってるんだよ、あなたは』

裡沙「……もしかして、あの時の…?」

『絢辻詞の声を聞いたよね? それが【選択肢】だよ』

『──それはね、上崎裡沙』


『絶対に橘くんと、絢辻詞が……壮絶なバットエンドを迎える【選択肢】なんだよね』


252 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:49:07.72 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「……嘘」

『本当だよ、嘘はついてない。あなたが選んだ選択肢…それは彼と彼女を不幸にさせる選択だった』

『そして丁度、その【選択肢】に繋がってこのゲーム機は同時に【ロード】を開始するように設定されてあるの』

『それから上崎裡沙は【選択肢】によって変更された世界線から【ロード】で飛び出すから』

『【選択肢】によって変わってしまった世界を知る由もない』

『だって別の世界線にいるわけだもんね、例えば緑色の世界線とか』

裡沙「……じゃあ」

『うん?』

裡沙「どうなってるの……この世界の…橘くんって…」

『…気になる? 今はあなたが選択してから、そんなに時間は立ってない』

『だけど、その未来のバットエンドを見させることは出来るよ?』


253 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 21:58:37.94 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「……」

『…そうだね、見せたほうがいいのかも知れない』

『──これから上崎裡沙がしなければならないコトを考えると』

『──この彼たちの未来は、きっとあなたにとって楔になるはずだから』

裡沙「……」

『あなたはきっと、この未来を見て……とても後悔をするはず』

『だけど、信じてね。強く気を持ってるんだよ?』

裡沙「……うん、わかった」

『うん、それじゃあ──選択をしてね』

『──シーン再生?』

裡沙「……」

ポチ…


256 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 22:04:39.51 ID:8jK3Tcxk0
~~~

裡沙「──……」

裡沙(…あれ、ここは)

裡沙(病院……?)

ピー…ピー…

裡沙(え、誰だろう目の前のベットに誰か寝てる?)

「シュコー…シュコー…」

裡沙(何処かで見たことあるような…でも、ぜんぜん違うような…)

裡沙「…橘くん」

裡沙(んっ!? あ、あたし勝手に喋ってる…!? どうして……あ…)

裡沙(テレビに反射して写ってるあたしの姿──絢辻さんだっ!?)


257 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 22:08:51.82 ID:8jK3Tcxk0
裡沙(あ、あたしの身体…絢辻さんになってる…)

裡沙「…今日も起きてくれないのね」

裡沙(また勝手に喋った……って、ちょっと待って…橘君…?)

「シュコー…」

裡沙(うそ)

裡沙(これ……本当に橘くん、なの…?)

裡沙(こんなにやせ細って……白髪がいっぱいで……)

裡沙(まるで…おじいちゃんみたい…で)

裡沙「…あなたはそうやって、またわたしを置いてけぼりにするのね」

裡沙「…どうして、なにもいってくれないのよ、どうして…」

裡沙「わたしは貴方にとって…なんだったのよ、大切じゃなかったの…」

ぎゅっ…


258 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 22:14:23.29 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「何もかも秘密にして…周りの誰も本音も言わず…」

裡沙「あなたは……そうなってしまってるじゃない…」

裡沙(なんなの…これ…)

裡沙「…わたしはもう耐え切れないのよ…」

裡沙「…貴方の言葉を聞けない、そんな毎日に…」

裡沙「もう───もう、だめなのよ……」すっ

裡沙(こんな絢辻さんの声初めて聞いた…)

裡沙「───いいわよね、もう…」

裡沙(……え?)

裡沙「わたしだって頑張り続けたのよ…だから…」

裡沙(なに…それ……?)

裡沙(絢辻さん…の…手首に……傷…)

裡沙「そろそろ……あなたに逢にいくわ」がたっ

裡沙「待っててね、橘くん」


260 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 22:16:30.15 ID:8jK3Tcxk0
ガラリ……

ひゅうううっ…


理紗(う、うそっ…そんなの! 絢辻さん!?)

理紗「……今日も寒いわね」

理紗(だ、駄目だよっ!? なにをしようとして───)

理紗「…ごめんなさい」すっ




ぐしゃぁ


262 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 22:23:03.75 ID:8jK3Tcxk0
裡沙「きゃあああああっ!?」がばっ

裡沙「はぁっ! はぁっ!? はぁっ…!」

裡沙「い、今のはっ…今のはっ…!?」

『それがこの世界線でのエンドだよ』

『──絢辻詞が手帳を落としたことによって紡ぎ出される、バットエンドだね』

裡沙「そっ…そんなっ! あんなの、あんなことがありえるわけっ…!」

『あり得るんだよ、あなたが選んだ【選択肢】によって起こるんだよ』

『いい? これだけは覚えておいて上崎裡沙』

『──一度選択してしまった【選択肢】は変えられない』

『今あなたが見て、聞いて、体験したシーンは……』

『いずれ必ず起こってしまう』

裡沙「っ……!」

『絶対にね』


279 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 23:33:19.03 ID:8Evx27/w0
裡沙「そんなっ…」

『仕方ないことなんだよ、それはもうこの世界線では決まってしまってること』

『そしてそれを決定したのは──上崎裡沙、あなたなんだよ』

裡沙「私はっ…こんなこと、になるなんて…!」

『そうだろうね、あなたは考えても見なかったよね』

『──でも、それがどうかしたの?』

裡沙「っ…」

『あなたがこのゲーム機を拾い、そして選択肢を選び』

『あなたが望むように世界を飛び越えていたはずだよね?』

『…今更それに代償があったと気づいて、あなたはその責任を追わなくていいと思えるの?』

裡沙「だっ……て……」

『こうなることは、もうどうしようもないの。選択肢は絶対なんだから』

裡沙「うっ……」

『あなたはそれほどのことをしてしまったのよ』


282 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 23:46:44.66 ID:8Evx27/w0
裡沙「………」

『…こんなこと知りたくはなかったよね、
 どうせなら知らないでおいたほうが良かったかもって思ってるよね』

裡沙「……」

『だけどね、その想いは──まだ本当に上崎裡沙がやってしまった過ちじゃないの』

裡沙「…え」

『──橘純一が死に続ける世界線、灰色のセーブデータ』

裡沙「っ…!」

『あなたは計六回の【ロード】……つまり【選択肢】をしたわけだけど』

『そのせいであなたは、橘純一が死に続ける世界線を創りだしてしまった』

裡沙「…作り出した…?」

『そうだよ、あなたがやった本当の過ちはソコ』

『──六人の女の子を不幸にしたことと、最後に橘純一を死なせる世界線をつくったこと』

『それが本当の上崎裡沙が背負うべき、罪だよ』


283 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 23:52:06.27 ID:8Evx27/w0
裡沙「そん、なっ…あたしは…」

『認めたくないのは分かる、だけどね、これは現実だよ』

『──逃げられはしない、この世界はもう変わってしまっているのだから』

裡沙「っ……じゃあ、あたしは何をすればいいのっ…!?」

『…』

裡沙「あなたは言ったよねっ!? あ、あたしがしなければならないことがあるっ…て!」

裡沙「こんなっ…こんなっ…どうしようもない、のにっ…じゃああたしはっ…!」

『──一度選択してしまった【選択肢】は変えられない』

裡沙「っ…」

『確かにあたしはそう書いたよね、実際にそうだしもうこの世界は決まった未来に行き着いてしまう』

『……だけどね、それはただの設定だよ?』


285 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/05(月) 23:57:37.60 ID:8Evx27/w0
裡沙「設定…なの?」

『うん、それはゲーム機が勝手に作った設定。この世はゲームじゃないんだよ?』

『──ゲームのように決められたテキストで語れるものじゃないんだよ!』

裡沙「………」

『この世は現実だから、あの人だって、この人だって、ただのグラフィックじゃないっ』

『あの時微笑んでくれた彼も、あの日傷ついて泣きそうになっていた彼も!』

『ゲームのシナリオだから、と。それがオープンニングだからって……』

『──諦めて見過ごしてもいいなんて、誰が決めたの!?』

裡沙「………」

『変えるんだよ、上崎裡沙』

『例え【選択肢】が絶対だとしても──現実で生きているのは…あたしたちなんだから!』

裡沙「…変えられるの…?」



287 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:02:42.34 ID:or8Qbp320
『出来るよ』

裡沙「でも、絶対なんでしょ…?」

『設定はそうなってる、だけど、諦めるものじゃない』

『──騙すんだよ、設定を。決められた【選択肢】によって変わった世界線を……』

『あなたの力で、橘くんを救うんだよ!』

裡沙「救う…」

『そう、救うの! 彼を幸せにするんだよ!!』

裡沙「……」

裡沙「幸せ、に…」

『その為に、変更された【選択肢】を騙す必要がある』

『──あなたが不幸にした六人の女の子を、幸せにしないとダメ』


288 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:06:29.82 ID:or8Qbp320
裡沙「…」

『そして最後に──彼を救える権利が手に入る』

『灰色の世界…その世界で橘くんを救える』

裡沙「…本当に?」

『あたしは、決して嘘はつかない。だって、その為にあなたに選択肢を与えたんだよ』

『──やり直しますかってね』

裡沙「……」

『…やるのならまずは絢辻詞を幸せにする』

『決められた世界を騙して、未来をハッピーエンドに変えてやるのよ』

『…さあ、決めて上崎裡沙』


『───世界を騙し抜く準備は出来た?』


290 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:11:16.24 ID:or8Qbp320
裡沙「……」

裡沙「…あたしは」

裡沙「きっとあたしは、なにもわかってないんだって思う…」

『……』

裡沙「こうなってしまって、自分が本当にダメな子だってことが…ちっともわかってない」

裡沙「──だけど」

裡沙「救える力があるのなら、馬鹿であっても…!」ぎゅっ

裡沙「絶対に……橘くんを救いたい!!」

『それでこそ上崎裡沙だよ、その頃からそうなんだね』

裡沙「え…?」

『ううん、なんでもないよ。上崎裡沙──……あなたは今、決断した』

『六人の女の子を救うことを、そして橘純一を救うことを』

『決して簡単じゃない、もしかしたらあなたが立ち直れないぐらい傷ついてしまうかもしれない』

『──だけど、頑張るよね?』


291 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:11:42.18 ID:LCxWIZAE0
ゲームでは妨害役だったけど、ここではキューピッド役をやる事になるのか


293 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:15:47.41 ID:or8Qbp320
裡沙「……」ぐっ

裡沙「うん、頑張るっ!」

『オッケー、その返事を待ってたよ』

『じゃあ、ボタンを押してね。時間跳躍するよ』

裡沙「え、時間跳躍…?」

『時間が無いんだよ、あ、えっと詳しく言うとストーリーの尺って…いうのかな?』

『それが余ってないから所々であなたの活躍を持ってくるの』

裡沙「そ、そうなんだ……」

『大丈夫、決して無駄じゃない。これは本当に───』

『──凄いとなんだよ、上崎裡沙』

裡沙「…うん、わかった」

『それじゃあボタンを押して、あなたを絢辻詞のイベントに飛ばすから』

裡沙「……」

裡沙「…行くよ、橘くん…」



294 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:16:44.24 ID:1KYsJL9Z0
妨害しないスト子なんてスト子じゃない


296 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:19:09.37 ID:or8Qbp320
裡沙「あたしは決して…諦めないから…!」

裡沙「…待っててねっ」

ポチ

裡沙「……ん?」

ギュルルルルル!

裡沙「きゃああっ!?」

~~~

裡沙「………」

『到着、大丈夫?』

裡沙「あ、うん…なんだか前に飛んだ時よりもちょっと優しいっていうか…」

『それはそうだよ、ちゃんとした設定をもとに時間を飛ばしたからね』

裡沙(今までの奴はむりやりだったってこと…?)

『それじゃあ一つ目のイベントだよ、上崎裡沙』


297 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:22:40.27 ID:or8Qbp320
『──絢辻詞と、橘純一に河原での思い出を作ってあげるんだよ』

裡沙「河原での思い出…?」

『そうだよ、そうだね……なにか言葉にしなくても思いださせるようなものがいいな』

裡沙「そんなの難しくないちょっと」

『出来るよ、例えばそうだなぁ──』

『───匂いとか、どう?』

裡沙「匂い?」

『そう、匂い。橘くんって結構、匂いフェチな所があるって聞いたことあるし』

裡沙「た、確かに……え? そういえばどうして橘くんのこと知ってるの?」

『い、今更だねっ…! そ、それはちょっとなんていうか…うん! 知ってたからかな!?』

裡沙「ふーん…」


299 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:27:24.22 ID:or8Qbp320
裡沙「とりあえず河原に行けばいいのかな、橘くんもそこにいるとイイんだけど…」

『』

裡沙「…あれ? ちょっと?」

裡沙「なんで反応してくれないの───」

「…おっとと」

裡沙「わっ」

「いやーごめんね、ちょっとよそ見してたからぶつかりそうになっちゃってさ」

裡沙「あ、こちらこそっ…すみま──」

純一「うん?」

裡沙「たち……ばな、くん?」

純一「…あれ? 僕の事知ってるの?」

裡沙「っ……生きてる、橘くん…?」

純一「えっ!? 僕は元から生きてるよ!?」


300 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:30:51.28 ID:or8Qbp320
~~~

純一「あはは」

裡沙「ご、ごめんなさいっ…急に変なコト言っちゃって…」

純一「ううん、いいんだよ。流石にちょっとびっくりしたけど…誤解だってわかればね」

裡沙「…う、うん」

裡沙(昔、無くなった友達に似てた…なんて言ったら信じてもらえた…)

裡沙(…だけど、あたし普通に橘くんと喋れてる…よね?)

純一「うん?」

裡沙「あっ…えっと、えへへっ…」

裡沙(な、なんでだろっ…いつものあたしなら、テンパっちゃって会話どころじゃないのに…)

裡沙(あ……もしかして、あの橘くんを助けようとした長い間に…慣れたの、かな)


301 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:35:10.48 ID:or8Qbp320
裡沙「…あの、橘くん」

純一「どうかした?」

裡沙(っ!! えへへ、でも返事貰えること……とっても嬉しくてたまらないよっ)によによ

裡沙「あっ…えっと、その! 橘くんはよく…河原に来るのかな…?」

純一「え? あーうん、そうだね」

純一「時々来るかな、最近はちょっと色々会って考えることが多くてさ」

裡沙「考えること…?」

純一「…うん」

裡沙「……」

純一「…まあ大したことじゃないんだ、その内にどうにか出来るって思うし」

裡沙「…そう、なんだ」

裡沙(…何だか橘くん、ちょっと寂しそう…?)

純一「……」

裡沙「…橘くんって、今は恋人いるの?」

純一「えっ!?」


303 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:39:18.62 ID:or8Qbp320
裡沙「あっ! えっと! その~……あの、ね」

裡沙「なんだか…ちょっと悩んでるぽかったから…恋人がもしいるのなら、相談しないのかなって~」

純一「…僕、悩んでるような顔してた?」

裡沙「う、うんっ」

純一「…そっか、分かる人にはわかるんだね」

裡沙(それはー…まあ、ずっと見てたからね)

純一「うん、僕には恋人が居るよ。可愛い人が居るんだ」

裡沙「っ…そう、なんだ」

純一「とても意地っ張りで、頑固者で、だけど優しくて」

純一「…魅力的な人なんだ」

裡沙「……」

純一「あはは、ごめんね。急にのろけちゃってさ」

裡沙「う、ううん! いいの! あ、あたしから聞いたんだし…」


304 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:42:18.06 ID:or8Qbp320
純一「……」

裡沙「…その人のこと、好きなんだね」

純一「……大切にしたいって思ってるよ」

裡沙「だから…言わないの?」

純一「え?」

裡沙「あなたの悩みを、彼女に言ってあげないの…?」

純一「……」

裡沙「…なのかなって」

純一「…どうだろうね、きっと心配されてしまうだろうし」

純一「もしかしたら、そうなのかもしれない」

裡沙「……」

純一「それでいいって、今の僕は思ってしまってるし…それに」

純一「──あの子には悲しい思いをしてほしくないから」


305 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:45:29.17 ID:or8Qbp320
純一「だから、僕は言えないんだって思う」

裡沙「……」

純一「…なんだろう、キミは不思議な子だね」

裡沙「え…?」

純一「よくわからないけど、つい本音をポロッと言ってしまいそうになっちゃうよ」

純一「…まるで長年付き添ってきたみたいな雰囲気を感じる」

裡沙「………」

純一「あ、えっと…! く、口説いてるわけとか、そんなんじゃなからねっ…!?」

裡沙「あ、えっと! うんうん! わ、わかってるよ! うん!」

純一「あは、あはは!」

裡沙「あははっ…」

~~~

純一「──そろそろ僕は行くよ、色々とスッキリ出来たし」

裡沙「そっか…」


306 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:48:04.81 ID:or8Qbp320
純一「話しを聞いてくれてありがとう、あ、そうだ名前を聞いてもいいかな?」

裡沙「……」

純一「…あ、えっと、そっか。うん…ごめんね、馴れ馴れしかったかな」

裡沙「っ……ううん、違うの」

純一「えっ?」

裡沙「今のあなたは…あたしの名前は覚えてなくてもいいんだよ」

純一「どういうこと…?」

裡沙「──橘君」

純一「う、うん」

裡沙「…その大切な子の匂いは、覚えてる?」

純一「匂い?」

裡沙「そう、あなたが彼女で覚えてる匂いってなにかな」


308 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:51:52.88 ID:or8Qbp320
純一「…また変なことを聞くんだね」

裡沙「……」

純一「匂いかぁ、そうだなぁ」

純一「──そうだね、よく彼女はここでランニングをするらしいんだけど」

純一「その時の……走ってる彼女の髪から匂う、汗とトリートメントの匂い」

純一「そして河原に咲く──花の匂いが染み付いた…その時の匂いが好きかな」

裡沙「……変態さんだね」

純一「うぐっ…確かにそうだ」

裡沙「うふふ、だけど、それが橘くんだって知ってるよ」

純一「……そういえば、キミはどうして僕の名前を」

裡沙「──それじゃあ、橘くん」くるっ

裡沙「──その匂いを決して忘れちゃだめだよ」

純一「…え? どういうこと?」


310 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:56:51.56 ID:or8Qbp320
裡沙「………」

純一「キミ…?」

裡沙「…それじゃあね、橘くん」

たったった

純一「………」

~~~

裡沙「……」たったった…

たっ…すた…

裡沙「…これでよかったのかな」

『パーフェクトだよ、上崎裡沙』

裡沙「ただ、あたしは好きな匂いを聞いただけだけど…」

『……言葉を交わしたがらない今の彼にとって、その匂いは重要になってくるはず』

裡沙「……」

『必ずバットエンドを逃れられるような……そんなアイコンとなるはずだよ』


311 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 00:59:31.44 ID:or8Qbp320
裡沙「…そうなのかな」

『…うん、そして最後に彼女にも』

裡沙「……」すっ


絢辻「はっ…はっ…」たったった


裡沙「…絢辻さん」

『前方から走ってくる彼女に、その匂いのことを伝えるの』

『──それが彼女の思い出となって、記憶となる』

裡沙「……」

『あの二人をハッピーエンドにする可能性を、強めるから』

裡沙「…わかったよ」

~~~

絢辻「はっ…はっ…」

裡沙「…」すっ…


312 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:02:06.41 ID:or8Qbp320
絢辻「はっ…ふぅっ……あら?」

裡沙「…こんにちわ、絢辻さん」

絢辻「ふぅー……えっと、その制服は輝日東よね」

裡沙「……」

絢辻「私を知ってるようだけど、なにかしら?」

裡沙「橘くんのことで話があるの」

絢辻「…彼のことで?」

裡沙「……」

絢辻「……?」

裡沙「──橘くんはあなたの汗のニオイが好きだって言ってたから」

絢辻「…」

絢辻「は?」


313 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:07:34.62 ID:or8Qbp320
裡沙「そのまんまの意味だよ、絢辻さん」

絢辻「その意味がまったくもって理解不能なのだけれども…」

裡沙「覚えておいて、橘くんは河原を走るあなたが好きだって」

裡沙「…そして、その髪に染み付いた花の匂いが好きだってことを」

絢辻「……」

裡沙「覚えて、おいて」

絢辻「…よくわからないけど」

裡沙「……」

絢辻「とりあえず、彼を見かけたら叱っておいていいかしら?」

裡沙「…ぷっ、うん! それがいいかもねっ」

絢辻「くす」

裡沙「それじゃあ…ごめんね、ランニングの邪魔しちゃって」

絢辻「…いいわよ、用はそれだけ?」


315 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:10:07.00 ID:or8Qbp320
裡沙「うん」

絢辻「そう、わかった。ちゃんとその言葉覚えておくわ」

裡沙「…絶対だよ」

絢辻「……」

裡沙「……」

絢辻「…へぇ、なかなか…」

裡沙「どうかしたの?」

絢辻「あ、ううん。なんでもないの」

絢辻「それじゃあこれで」たたっ

裡沙「…うん、さようなら」

たったった…

裡沙「……」

『なんていうか、すきがない子だよね本当に絢辻さんって』


316 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:11:19.09 ID:86cbauWdO
それにしても妙な会話だwww


317 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:13:57.41 ID:or8Qbp320
裡沙「うん」

『…最後に見つめてたの、あれって多分、あなたの心の中を読み取ろうとしてたっぽいよ?』

裡沙「そうなのかな」

『突然不自然なことを言われたからね、その意図を図ろうとしたんじゃないかな』

裡沙「……」

『だけどきっと、それは読み取れなかっただろうね』

裡沙「…幸せを願ってるなんて、わかるわけないよ」

『その通り、そして上崎裡沙。あなたは今やりとげたんだよ』

裡沙「本当にこれだけでいいの?」

『これだけこそが、その現実ってことなんだよ』

『──設定はおおまかな流れしか決定してない』

『その人物がどう考え、悩み、決断したことは蔑ろにする』

『その隙をつくんだよ、そうして…決められたエンドは回避されてしまう』


318 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:19:15.46 ID:or8Qbp320
裡沙「世界は人の力でどうにかなっちゃうんだね」

『なるにきまってるじゃない、その世界を形どってるのは…だって人だよ?』

『人がどう行動するかで、世界は変る』

『世界が変わったことで、人が変わってしまう事のほうが変なんだから』

裡沙「……」

『上崎裡沙、あなたがやり遂げたことは──…実は容易なことじゃない』

『昔のあなたが絢辻詞や、橘純一にこうやって話しかけることが可能性としてあったかな?』

『決して無いはずだよ、これっぽっちも』

『だけど今は、それが違っている』

裡沙「…あたしは彼らと会話できてたよね」

『そう、それがこの世界の不自然。そして生まれた矛盾』

『──この世界を騙したんだよ、上崎裡沙』


319 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:23:18.93 ID:or8Qbp320
『その矛盾は世界にとっては見過ごせる安易なもの』

『──だけどあたし達、人にとってそれは重要なもの』

裡沙「……」

『この水色の世界はきっと、ハッピーエンドに向かうはず』

裡沙「……うん」カチャ


【絢辻「まさか手帳落とした…?」】


裡沙「……」

裡沙「──……幸せになってね、橘くん」

裡沙「そして絢辻さん───」


ポチっ

ギュルルルルルル!


323 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:29:29.08 ID:or8Qbp320
『──ようこそ、緑色の世界へ』

裡沙「……」

『この世界はあなたが高校生である時期から四年前だよ』

裡沙「寒い…」

『そろそろ本格的に冬になりそうな時期だね』

裡沙「…なにをすればいいの、あたしは」

『色々としてもらうよ、言うなれば三つほどかな』

裡沙「うん」

『──まずは一つ目』

~~~

裡沙「…」こそっ

薫「ふーんふん…」すたすた

裡沙(棚町さんを監視って…まあそういうの慣れてるから平気だけど)


324 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:33:42.32 ID:or8Qbp320
裡沙(かれこれ時間跳躍を重ねて、一日三時間で、一週間ぐらい監視してるけど…)

『これでいいんだよ、棚町薫に誰かに見られてるって感づかせればいいの』

裡沙「…それでいいの? でも、あたしの監視能力はバレるとは思えないけど」

『上崎裡沙、直ぐに後ろの路地裏に入って! 早く!』

裡沙「えっ? あ、うん!」ささっ


「──誰!? そこで見てる奴はっ!?」ばばっ


裡沙「っ……!?」

薫「…あれ、誰もいない…?」

薫「おっかしーな…誰かここに居たような気配を感じたんだけど」

裡沙(け、気配!? 気配ってなんなの!?)ドッドッドッドッ


325 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:37:43.44 ID:or8Qbp320
『よかった、バレなくて。今バレてしまった全てがオシマイだったよ』

裡沙「ど、どうしてっ…?」

『どうしてって、また始まっちゃうよ? あの時のクリスマスの時のようなことが』

裡沙「っ……」

『また選択を迫られてしまう可能性が出てきてしまうんだよ、上崎裡沙』

『あなたはあの時と同じ様になった時、違う行動を出れると思える?』

裡沙「……」

『…イジワルな質問だったよね、ごめん』

裡沙「っ…いいの、わかってることだし…平気だよ」

『…そっか、強いね本当に』

裡沙「え…?」

『あ、そういえばこの世界のバットエンドを見せてなかったけれど』

裡沙「あぅ…えっと、見なきゃダメかな…?」



328 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:42:14.81 ID:or8Qbp320
『別にいいよ、最初のアレはあなたの覚悟を強めるだけに見せただけだから』

『…人が不幸になる光景なんて、そう見たくなんて無いでしょ』

裡沙「……」

『…上崎裡沙?』

裡沙「…やっぱり見ておこうって、思う」

『どうして、見なくてもこの世界を救うことはできるのに』

裡沙「……」

裡沙「…そうかもしれない、けどね」

裡沙「きっと何も見ないままで救うことと、見てから救うことは」

裡沙「──まったく意味が違ってくると思うから」

裡沙「…あたしは、相手のことをできるだけ知っておきたい」

裡沙「自分が不幸にさせてしまった現実を……ちゃんと知っておきたい」


329 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:45:17.64 ID:or8Qbp320
『……』

裡沙「何も知らないなんて…都合が良すぎるもの」

『そっか、わかったよ』

裡沙「うん、お願い」

『そこまで言うのならあたしも止めはしないよ』

『──シーンを再生しますか?』

裡沙「…はい」

ポチ

~~~

裡沙「はぁっ…はぁっ…」

裡沙(息が苦しいっ…これって、自転車に乗ってるのかな)

きこきこっ…!

裡沙「アイツっ……本当になにやってるのよっ…!」

裡沙(この声、多分…棚町さんだ、どこか自転車で向かってる…?)


331 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:50:17.25 ID:or8Qbp320
裡沙「あんだけ頑張るって言ってたクセにっ…アンタはっ…もう本当にっ…!」ガチャン!

裡沙(自転車放り投げた、えっと…ここは…公園?)

裡沙「っ…橘ぁー! いるんでしょここに!」

「…棚町」

裡沙(あ、橘くんっ…!)

純一「どうしたんだよ、そんなにも息を切らして」

裡沙「はぁっ…はぁっ…アンタ、輝日東落ちたって本当なの!?」

純一「……」

裡沙(えっ…落ちた…?)

純一「…そんなことか、そうだよ。落ちたよ僕は」

裡沙「ぐっ、なにやってんのよ!? アンタは!?」

純一「なにやってるって、落ちちゃったものは仕方ないだろ」

裡沙「そんな事を言ってるんじゃないのよっ…! わかってるんでしょ!?」


332 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 01:55:46.97 ID:or8Qbp320
純一「…意味がわからない、僕が落ちたことにどうしてお前が起こるんだよ」

裡沙「ッ…アンタ! 受験当日までっ…遊び呆けてたっていうじゃないの!」

純一「……」

裡沙「あの…あの女と! 夜通し遊び倒してたって、梅原くんから聞いたわよ!?」

純一「…で?」

裡沙「なっ…なによ、でって」

純一「僕は遊び呆けて、そして受験に失敗して、なにが悪いんだ」

裡沙「……アンタそれ本気で…?」

純一「っ……もう、帰れよ」

裡沙「何よその言い草っ…! アンタそれで本当にいいと思ってんの!?」

純一「思ってるよ! なんだよ、お前に何が関係あるんだ!? えぇっ!?」

裡沙「っ…」

純一「なんにも関係ないだろ!? お前はっ…僕の一体何を知ってるんだよ!?」


334 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:00:47.55 ID:or8Qbp320
裡沙「あ、アンタはっ…」

純一「五月蝿い五月蝿い!! お前はっ…五月蝿いんだよ!」

純一「どっか行っちまえよッ! 鬱陶しいんだよッ!」

純一「いつも僕の周りに居やがって邪魔で仕方ない!!」

純一「僕は僕の自由にさせろ──」

ガッ!!

純一「ぐっ…」

裡沙「はぁっ…はぁっ…」

純一「…ハッ、なんだよ。ムカツイたから殴ったのか?」

裡沙「ええ、そうねっ…アンタがこんなにもばかだって思わなかったわ…!」

裡沙「っ…少しでも、アンタに薫って呼ばれてたことに…それにアタシがっ…」

裡沙「──喜んでた、あの時のアタシをぶん殴りたいわよっ…」


337 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:04:16.77 ID:or8Qbp320
~~~

裡沙「───……」

『おかえりなさい、上崎裡沙』

裡沙「…うん」

『…その』

裡沙「うん、大丈夫。そうなんだ…橘くんそうなっちゃうんだね」

『……』

裡沙「止めなくちゃ」

『……』

裡沙「あんなことになる前に、橘くんを止めるんだよ」

『うん』

裡沙「さあ教えて、これからあたしはどうしたらいいの?」

『わかった、2つ目だよ』

『───橘君に真実を伝えるんだよ、あなたは』


338 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:08:00.18 ID:or8Qbp320
~~~

裡沙「………」

純一「…きみは?」

裡沙「橘純一くん、だよね」

純一「そう、だけど……えっと…?」

裡沙「……」

純一「何かようなの、かな?」

裡沙「うん、ちょっと時間貰えるかな」

純一「え? あーうん、実はちょっと急いでてさ」

裡沙「そうなの?」

純一「うん、はやくとある人に会いたくて…」

裡沙「……」

純一「…でも大切な要件なら、ちゃんと聞くよ?」


340 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:11:01.81 ID:or8Qbp320
裡沙「ありがとう、それじゃあ言うね」

裡沙「──あなたの好きな子は、けっしていい子じゃないよ」

純一「っ……え?」

裡沙「その子は物事を深く考えられないの、
   まだ子供だからなんて言い訳がつけ難いほど」

裡沙「…その子はあなたを深く傷つけてしまうはずだから」

純一「……」

裡沙「だから、やめるんだよ。その子を好きになることを」

純一「…それは」

裡沙「うん?」

純一「それは…彼女が悪いって、それは…」

純一「…どうして思えるんですか?」


341 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:14:33.03 ID:or8Qbp320
裡沙「え?」

純一「……僕はそうは想いませんよ」

純一「彼女が悪いだなんて、そう決めつけることなんで出来やしない」

裡沙「…どうして?」

純一「どうしてって…それは、好きだから」

裡沙「す、好き…?」

純一「はい、僕は彼女のことが好きだから」

純一「…中学生になってから、本当に一番大好きだって思えるから」

純一「悪いって決めつけるのは、できませんよ」

裡沙「あなたは…」

純一「…何が言いたいのかなんてことは、わかってます」

純一「だからといって、僕は彼女を嫌いになることなんできない」


342 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:19:08.55 ID:or8Qbp320
裡沙「……」

純一「好きだと思ってしまったのなら、決して…ただ単に諦めることなんて出来ませんよ」

裡沙「っ…」

純一「だって、側に居たいから。そのためになら僕は、なんだってしますよ」

純一「…周りが悪い子だって言っても、僕はそれを何とかしようと試みます」

裡沙「……それは、好きだから?」

純一「……」

純一「はいっ!」

~~~

『いいね、成功だよ。彼に心の強さを持たせてあげる事が出来たね』

裡沙「……」

『橘くんは決して挫けない心を持ったんだよ、
 それはただの恋ってものだけじゃなく、本当の愛の力だってことを』


343 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:22:31.89 ID:or8Qbp320
『──人のために頑張る強さを手に入れることが出来た』

裡沙「…うん」

『元から持っていたけれど、それではちょっと足りなかったと思うんだよ』

『…だからこそ、上崎裡沙との会話が必要だった』

裡沙「あの会話で、橘くんはずっと頑張れる強さを持てたのかな」

『持てたよ、そして持ち続けるはずだよ。受験までずっとね』

裡沙「……」


『コレで緑の世界のバットエンドを回避できたはず』


『世界を騙せたよ、上崎裡沙』


裡沙「…あの」


345 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:27:45.61 ID:or8Qbp320
『うん? どうかしたの』

裡沙「…ううん、やっぱりなんでもない』

『そお? なら次の世界に行くよ、3つ目のやることはきっと──』

『──この世界の上崎裡沙がやってくれるはずだから』

裡沙「この世界のあたしが…?」

『いうなればシステムってやつだね、だからあなたは気にしなくていい』

裡沙「…わかった」

『それじゃあ次の世界──三つ目のデータに行くよ』

裡沙「……」


【棚町薫「アタシが〝薫〟と呼ばれる理由」】


裡沙「…橘君」

裡沙「…好きだから、出来る…か」

ポチ

ギュルルルルルル!


346 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:32:21.22 ID:or8Qbp320
~~~

裡沙「……」

裡沙(…あれ? これって?)

裡沙(体の自由が効かない…やっぱり、誰かの未来のエンド…?)

裡沙(うっ…!)

裡沙「…うごいたぁ」

裡沙(な、なんだろっ…すごくお腹が…重いような)ちらっ

裡沙(んっ!? 近くの鏡に写ってるの…桜井さん!?)

裡沙(いや! そこじゃないよ驚く所!?)

裡沙「もうすぐかなぁ~たのしみだねぇ~」

裡沙(──妊娠、してる!?)


347 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:38:43.29 ID:or8Qbp320
裡沙(そ、それにっ…なんなのこの大豪邸っ!? すっごくお部屋が広い!)

裡沙「ふんふーん──あ、アナタ~」

「ああ、今帰ったぞ」

裡沙(ふぁっ、ふぁー!? ものすごくダンディな方がいる!? それにっ…アナタって…)

裡沙「さっきねお腹がポコって蹴られたんだよ~」

「そうなのか、リホコと一緒で元気な子が生まれるといいな」

裡沙「えへへ~だね~」

裡沙(な、なんだろ…もしかして桜井さんとこのダンディな外国人の方は…夫婦?)

「そういえばリホコ、さっき年賀状が着てたぞ」

裡沙「年賀状? みるみる!」

裡沙「うーんっと、あはは。ゆっこセンパイに愛歌センパイ…それに香苗ちゃんまで~」


349 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:42:08.10 ID:or8Qbp320
「……」

裡沙「みんな元気そうだね~、なかなか日本に帰れないけれどこうやってお手紙をくれて…」

「……来てないのか」

裡沙「…うん」

「そうか、彼は…タチバナと言ったかな」

裡沙「……ちょっと都合が悪かったんだよ、きっと」

「結婚式にも来てくれなかっただろう」

裡沙「……」

「…何度も何度も招待状を送ったはずだ、だが、彼は来てくれなかった」

裡沙「…うん」

「リホコ、俺の愛しいリホコ…」ぎゅっ

裡沙「……」

「もうそんな寂しい顔をするな、俺まで心配になってしまう」

裡沙「…ごめんね」


350 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 02:45:14.66 ID:or8Qbp320
「そんなにも気に悩むなら……いっそのこと忘れてしまったほうがいい」

裡沙「……」

「彼は彼の人生を歩んでいるんだ、リホコも彼に見習って…自分の人生を歩んだほうがいい」

裡沙「…だけど」

「いつまでも過去の自分を悔やみ続けるな」

裡沙「……」

「…今はリホコは幸せではないのか?」

裡沙「……」

裡沙「ううん、とっても幸せだよ」

「そうか、それを聞いて安心だ」

裡沙「……うん、大好きだからねアナタ…」ぎゅっ

~~~


361 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 05:23:06.13 ID:fZmLkiMyO
追いついた
実に素晴らしいスト子スレ


383 どうもです :2012/11/06(火) 10:46:01.74 ID:GtpIq45A0
裡沙「………」すっ

『──上崎裡沙!? 上崎裡沙!?』

裡沙「…え、あうん! どうかしたの?」

『反応が数分間なかったんだよ!? ずっと目を閉じたまま黙ってて…』

裡沙「えっ? だって今、あたし桜井さんの未来のシーンを見てたんだけどー…?」

『うそ』

裡沙「ほ、本当だよ?」

『……あの人は本当に勝手に機能を付け加えて』

裡沙「どうしたの?」

『ううん、なんでもないの。それで上崎裡沙、桜井梨穂子の未来を見たの?』

裡沙「うん」

裡沙「──とっても幸せそうだったよ、桜井さん」

『え?』

裡沙「外国の人と結婚してて、それから大豪邸に住んでてたの」


384 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:46:51.51 ID:GtpIq45A0
『…結婚?』

裡沙「そう、それからお腹の中には赤ちゃんまで居てね…とても嬉しそうだった」

『……』

裡沙「だけどね、だけど……」

『上崎裡沙?』

裡沙「──あれは本当のハッピーエンドじゃないと思う」

裡沙「あたしがもし桜井さんなら、きっとあの未来は本当に欲しかったものじゃない」

裡沙「──なにかを諦めた後に迎えた、エンドだよ」

『……』

裡沙「それにあたしが望むエンドはああじゃないんだよ」

裡沙「橘くんが幸せになる未来、それだけなんだから」

『…うん、そうだね』

裡沙「うんっ」

『でもね、上崎裡沙。それはあなたも』

『ううん、やっぱりなんでもない』


386 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:47:40.42 ID:GtpIq45A0
裡沙「…なんだかそうやって誤魔化すの多くなってきたね、あなた」

『…なんでもないんだってば』

裡沙「そっか、そうなら仕方ないよね」

『気を取り直して、ようそこ──橙色の世界線へ』

裡沙「桜井梨穂子さんと、橘純一くんの世界」

『そうだよ。ここはその二人が幸せになるべきだったデータ』

『──上崎裡沙、準備はいい?』

裡沙「いつだっていいよ! あたしができる事は何だってするから!」

『了解、じゃああなたがするべきことを説明するよ?』

裡沙(今回もまた誰かと話すのかな…)

『あなたがこの世界でするべきことは、ただひとつ』

『──TVをつけることだけだよ』

裡沙「…え? それだけなの?」


388 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:48:41.61 ID:GtpIq45A0
『そう、それだけ』

裡沙「なんだか、ちょっと…」

『調子が抜けちゃったかな? でもね、そのテレビはどこのテレビだと思う?』

裡沙「え? どういうこと?」

『今から説明するけど、全部覚えてなくてもいいよ』

『──だって軽く百件位のテレビを付けに行かなくちゃいけないからね』

裡沙「……」

裡沙「え、うそ?」

『ほんと』

裡沙「…百個の…テレビを付けに…いくの…?」

『うん、それが橙色の世界での矛盾が出来る』

『もちろん、誰にも知られること無くテレビをつけていくんだよ?』

裡沙「うわぁ…」

『できるよね? 上崎裡沙?』


389 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:49:39.70 ID:GtpIq45A0
裡沙「…がんばります」

『うん! その返事を待ってたよ!』

『各テレビの場所までは時間跳躍を使って、場面転換するから』

『大丈夫、あなたはどうやってテレビを付ければいいのかだけを考えればいいよ』

裡沙「…うっ…ううー!」

裡沙「やってやるんだからぁー!」

~~~

数時間後

~~~

裡沙「はぁっ…はぁっ…次、何個目…?」

『98個目だよ、お疲れ様。次で最後だからね』

裡沙「次ぎで……最後…?」

『うん、あなたがつけるべきテレビは99個のテレビ』

『頑張ったね、何度も見つかりそうになったけど』

裡沙「っ…うん、というか個数が増えてる原因って絶対に各教室のテレビのせいだよね…?」


390 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:50:46.07 ID:GtpIq45A0
裡沙「輝日東の教室全部のテレビとか…はぁっ…疲れるに決まってるよ…」

『そうかな? あたし的には職員室と、とあるダーツバーのほうが大変だったと思うけど?』

裡沙「…とにかく、誰にも見つからずテレビは付けれたんだよね…?」

『うん、確実に誰も上崎裡沙のことを視界に入れてないよ』

『凄いね、あれだけの人が居たのに誰もあなたのこを見てないなんて』

裡沙(褒め言葉として素直に受け取っておこうっと…)

『それじゃあ最後のテレビを付けに行くよ、ボタンを押してね』

裡沙「っはぁ~……ふぅ」

裡沙「うんっ」

ぽち

~~~

裡沙「……暗っ!」

『ここは押入れの中だよ』


391 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:54:53.57 ID:GtpIq45A0
裡沙「押入れの中? どこの?」

『そうだね、じゃあ上崎裡沙。頭にかぶって毛布をとってご覧』

裡沙「え、毛布? ほんとだ…あたし毛布かぶってた…」ぱさ…

裡沙「──わあ…なにこれ…!」

キラキラ…

『この押入れの持ち主である人が作った、お手製のプラネタリウムだよ』

裡沙「ちっちゃな星がいっぱい書いてある…かわいい…」

『そうだね、その人はこの押入れの中に入って。
 日々の鬱屈や疲れを癒していたみたいだね』

裡沙「……」

『…そうだよ、橘純一んの押入れの中』

裡沙「…知らなかった、彼が星が好きな事は知ってたけれど」

『このプラネタリウムは妹の美也さんしか知らないんだよね』


392 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 10:59:08.20 ID:GtpIq45A0
裡沙「綺麗…本当に…」

『さあ、上崎裡沙。そろそろ時間だよ』

裡沙「…うん」

『時期に彼が家に帰ってくる、そして布団の中へ入り込むのだけれど』

『──その彼が布団へと近づく瞬間に、テレビを付けるの』

裡沙「え、今じゃダメなの?」

『それはダメ、タイミングが合わないから』

裡沙「……」

『いい? TVをつけることをこの世界にいる人達に絶対にバレちゃだめだよ』

『それは橘くんも例外じゃない、心してかかってね』

裡沙「…うん、わかったよ!」

~~~


393 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:01:59.23 ID:GtpIq45A0
がちゃっ…

裡沙(帰ってきた…!)

すたすた… すとん…

裡沙(っ…っ…)ドキドキ…


「──……だから…」


裡沙(…? なにか小さく呟いてる? よく聞き取れないけど…)


「……──……───」


裡沙(ちょっとだけ覗いてみようっと…)スゥー…

裡沙「っ…」


「……梨穂子」


裡沙(橘くん……泣いてる…)


396 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:07:29.64 ID:GtpIq45A0
「……」


裡沙(あれは…桜井さんと一緒に写った写真…?)


「……この梨穂子だけだよな」パタン…


裡沙(あ、倒しちゃった…)


「……」


裡沙(…なにがあったのかな、あたしが見た未来に繋がるような出来事を…)

裡沙(彼は経験して、そしてあんなふうに……傷ついた顔をしてるのかな)

裡沙(それは……あたしのせいなのに、きっとあの表情は…)

裡沙(──あたしがやってしまった、我侭のせいなのに…)

裡沙(……これじゃあ、あの娘と変わらないじゃない)

裡沙(何も考えてない、相手のことをちゃんと理解してあげてない)

裡沙(…彼のトラウマを深くしてしまってるだけ)


399 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:12:12.09 ID:GtpIq45A0
裡沙「……なにが、橘くんのためよっ…」

『上崎裡沙』

裡沙「…うん、分かってる」

裡沙「……」

裡沙(今の彼は──あたしのせいで不幸になってしまってる。
   変わってしまった世界で、頑張って生きてる橘くん)

裡沙(それはこの世界では彼自身の力で乗り越えなきゃいけない問題かもしれない───)

裡沙(──だけどね、橘くん。それはちょっと違うんだよ)

裡沙「っ……」ぐぐっ

裡沙(あなたはずっと、一人じゃない。今までも、そしてこれからも!)

裡沙(──上崎裡沙って女の子が、ずっと側にいてあげるから!)

びゅん!

ぱしっ!

裡沙(よし! 輪ゴムが当たった!)

カチ…ブゥーン…



401 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:17:05.74 ID:GtpIq45A0
純一「!」くるっ

裡沙(わわっ)すっー…パタン

裡沙(ば、バレてないよね…っ?)ドキドキ

『バレてないと思う。彼は今からテレビの報道に釘付けになるはずだから』

裡沙「……」

『──上崎裡沙、99個目を無事に完了だよ』

『これで橘くんが問題へと足を踏み込むきっかけとなるはず』

『そしてあなたが付けてきた99個のテレビもまた、世界の不具合として残る』

『…やり遂げたね、また世界を騙すことが出来たよ?』

裡沙「…うん」

『さあ、次に行こうよ。この世界はきっと、幸せになるはずだから』

裡沙「…ちょっと最後だけ、この世界の橘くんを見てもいいかな」

『え? いいけど』


402 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:19:36.46 ID:GtpIq45A0
裡沙「……」がら…

純一「っ……」

裡沙「…橘くん」

プルルルル

純一「電話か…」すくっ

裡沙「……」

ぱたん

裡沙「……」

『満足した? 上崎裡沙?』

裡沙「うん、満足したよ」

『そっか、じゃあ次に行くよ。橙色から、水色の世界へ』

裡沙「……」

裡沙「頑張ってね、橘くん……」

ぽち


405 ていせい :2012/11/06(火) 11:23:28.99 ID:GtpIq45A0
ギュルルルルルル!

【梨穂子「……ごめんなさい、橘くん」】


裡沙「うん、あたしも…ちゃんと、頑張るから───」

~~~


裡沙「──……」

裡沙(これは、また…誰かの未来…?)


きぃこ…きぃこ…


裡沙「……はぁ…はぁ…」

裡沙(あたし凄く疲れてる…これは、疲労してるのかな)

裡沙「はぁ…もう、だめ…」

裡沙「はぁ…ふぅ…」

裡沙「……もう動けないんだろうな…」

裡沙(何処かの歩道だよねここ、あ! ガラスに反射してあたしの姿が……え?)


408 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:27:39.79 ID:GtpIq45A0

裡沙(……車椅子に乗った、七咲逢…?)

裡沙「……」

裡沙(足が動けないの…? どうして、あんなに活発な子だったのに…)

裡沙「…でも、頑張らなくちゃ」きぃこ…

裡沙(こんな歩道を一人で車椅子で移動なんて…誰か付き添ってくれる人は…?)

裡沙「はぁ…はぁ…」

裡沙(──誰もいないの…?)

裡沙「あっ……」ガキッ

裡沙「溝にタイヤが……うん、しょっ…!」ぐぐっ

裡沙「はぁ…はぁ…うっ…くぅっ…はず、れて…!」

裡沙(あぁっ…誰か助けてよ! こんなにも困ってるのにっ…!)


409 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:30:05.18 ID:GtpIq45A0
裡沙「んんっ……きゃあ!?」ずりっ

どたり

裡沙「…いたい…」

裡沙「あっ…車椅子からおちて…」

裡沙「……っ…」キョロキョロ

裡沙「周り、誰もいない…」

裡沙「っ……」

ずり…ずりずり…

裡沙「こんなことっ…どうってことないっ…」ずりずり

裡沙「一人だってちゃんと生きてられるから…!」

ずりっ…ずり…

裡沙「うん、っしょっと……!」プルプル…


411 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:33:28.34 ID:GtpIq45A0
裡沙「っはぁー……!」すとん

裡沙「はぁ…はぁっ…ぐすっ…」

裡沙「はっ…っく…」ゴシゴシ

裡沙「泣いたって…仕方ない…でしょっ…!」きぃこ…

きぃこ…きぃこ…

裡沙「──一人で頑張るってっ…決めたんだから…!」


きぃこ… きぃこ…


~~~

裡沙「──……」

『また未来を見たんだね』

裡沙「……」

『ごめんなさい、あたしにはその未来を自動的に見させる機能を止めることはできないみたい』


412 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:37:36.46 ID:GtpIq45A0
裡沙「……」

『上崎裡沙?』

裡沙「…この未来はダメ」

『え?』

裡沙「絶対に止めなくちゃだめだよ、あんな未来はあっちゃダメ」

裡沙「…あの子が《一人で頑張らなくちゃ》なんて呟いてる世界なんて」

裡沙「──あっちゃいけないことなんだよ、必ず」

『…そうだね、とめに行こうよ。その未来を』

裡沙「うん」

『この世界は七咲逢と橘純一の世界、その二人が紡ぐバットエンドの世界線』

『──止めるためには、彼女の弟とあわないとだめ』

裡沙「弟がいるの?」

『そう、それがキーポイント。上崎裡沙、あなたはその弟に接近して』

『この世界を騙すんだよ』


414 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:46:12.59 ID:GtpIq45A0
~~~

『あそこに七咲郁夫という子供いるはずだよ』

裡沙「…郁夫くん」

『うん、その子が七咲逢の弟であり、この世界を騙せる人物』


郁夫「……」


裡沙「……」

『ひとつ注意して欲しいのだけれど、あなたが弟と話す時に言ってほしいことは』

『一つ目、この世界での橘純一の不甲斐なさを伝えること』

『2つ目、彼が知ったとある四人組の噂を広めることを促すこと』

『3つ目、七咲逢の秘密を橘純一に教えるよう進めること』

『…この三つだよ』

裡沙「…随分と多いね」

『それだけ頑固な設定なんだよね、この水色の世界は』


415 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:51:35.91 ID:GtpIq45A0
『青の世界、緑色の世界、橙色の世界、そして水色の世界』

『あなたが変えてきたこの四つの世界は、設定として『敵』が作られている』

裡沙「…敵?」

『本来はそんなことはしなはず、こんな人がこんな事をするなんて。と思ってしまうような』

『──あり得ないようで、ありえてしまう。そんな人物を一人ずつ作ってしまうの』

裡沙「……」

『決してそれは全否定できるようなものでもないんだよ、
 人は誰だって間違いを起こすし、失敗だってする。嫉妬だって悪さだって、騙したって嘘をついてたって』

『──なんだってあり得ることばかりなんだよ、人というものは』

裡沙「…人は間違いをする」

『そう、上崎裡沙。あなたも間違いを起こした』

裡沙「……」

『だからこそ、今があるんだよ。かわれるチャンスを手にしてる』

『がんばろう、一緒に』


417 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 11:57:20.16 ID:GtpIq45A0
『間違いだと気づけたあなたには、なんだって出来るはずだから』

裡沙「そうだね…そうだと、いいね」すた

『…待って、上崎裡沙。このまま七咲郁夫のところへ向かうのはいいけれど』

『まずは何かしらのきっかけを持つまで待たないといけないよ』

裡沙「…ううん」

『え?』

裡沙「そんなのことは、もう大丈夫だよ」

すたすた…

『待って! なにを…上崎裡沙! 七咲郁夫というのは少し難があるから…っ!』

裡沙「平気だよ、あたしなら」

すた

『どうしてそんなことがいえるの?』


418 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 12:01:15.12 ID:GtpIq45A0
裡沙「…なんだか違う気がするの」

裡沙「もう迷いがないっていうのかな、誰かのために頑張ることに…」

裡沙「…あたし自身がもう、平気だって思えてる気がするんだよ」

『……』

裡沙「三つの世界を無事に変えてきたけど、あたしはね?」

裡沙「やっぱり心の中でちょっとだけ、嫉妬してたんだよ」

裡沙「みんなみんな…橘君と幸せになっていく」

裡沙「不幸にならないと決まっていて、絶対に幸せになれるって」

裡沙「そう分かってしまうから、あたしは……」

『…上崎裡沙』

裡沙「だけどね、もうそんなことは…思えないんだ」

裡沙「──本当にあたしは、彼と彼女たちを幸せにしたいって」

裡沙「今そう思えてるんだよ…うんっ!」


442 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:20:11.15 ID:wEQl1Uwp0
『……』

裡沙「なんだろー…とっても不思議な気分」

裡沙「うふふ、今なら本当に橘くんに告白できちゃうかもしれないね」

裡沙「…なーんて、そんなことは無理だけど」

『…無理じゃない』

裡沙「え?」

『上崎裡沙、あなたは絶対に幸せになれるから』

『きっと…かならず、あなたは幸せにしてみせるから』

裡沙「…よくわからないけれど、ありがと」

『うん。だから安心して、上崎裡沙』

裡沙「よぉっしー! じゃあいっちょ頑張るよぉー!」

『うん、頑張ってねっ!』



443 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:21:22.94 ID:wEQl1Uwp0
~~~

郁夫「……」ボー…

裡沙「…なにしてるの?」

郁夫「!」

裡沙「あ、ごめんね急に話しかけて」

郁夫「っ…っ…」

裡沙(ものすごく警戒されてる、まあ仕方ないよね)

裡沙「えっと…」

郁夫「?」

裡沙「そのね、キミはこの公園で遊んでるの?」

郁夫「…」こくり

裡沙「そっか、あのねお姉ちゃんも実は公園で遊んでたんだけど…」

裡沙「…今は独りぼっちなんだ、一緒に遊んでくれないかな?」


445 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:28:40.57 ID:wEQl1Uwp0
~~~

きぃーこ…きぃーこ…

裡沙「ブランコ好きなの?」

郁夫「!」ピース

裡沙「へ~、お姉ちゃんがよくブランコで遊んでくれてたんだ」

郁夫「っ」コクコク!

裡沙「…お姉ちゃんのこと大好き?」

郁夫「!?」

裡沙「嫌いなの?」

郁夫「っ…!」ブンブンブン!

裡沙「ふーん、そっか~……そうだよね、お姉ちゃんのこと大好きだよね」

郁夫「……」テレテレ


446 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:31:08.34 ID:wEQl1Uwp0
郁夫「…!」

裡沙「え? …お姉ちゃんのことを知ってるのかって?」

郁夫「…」コク

裡沙「どうだろうなぁ、たぶん、知ってるようで知らない…そんな感じかな」きぃこ…

郁夫「?」

裡沙「あはは、わからないよね。あたしもちょっとわからないの」

裡沙「…でもね、あなたのお姉ちゃんの凄さは知ってるよ」

郁夫「…?」

裡沙「うん、郁夫くん。あなたのお姉ちゃんはね、きっと凄い人」

裡沙「どんなに大きな壁が立ちふさがっても、
   どんなに辛いことがあっても、決して逃げない強い女の子で」

裡沙「──とってもとっても、寂しがり屋な女の子なんだよ」



448 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:33:52.45 ID:wEQl1Uwp0
郁夫「!」

裡沙「自分がいるから寂しくないはずだって …くすくす、そうだね」

裡沙「郁夫くんが居るのならお姉ちゃんもきっと寂しくないはずだよ」

裡沙「……だけどね、それでも…」

裡沙「それでもあなたのお姉ちゃんは、きっと近い未来に…」

裡沙「寂しい思いをしてしまうはずだから」

郁夫「?」

裡沙「……」

裡沙「…これから言うことは多分信じてもらえないと思うけれど」

裡沙「聞いてくれるかな? 郁夫くん?」

郁夫「……」

郁夫「…っ…」こく


450 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:37:41.72 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「…ありがと」

裡沙「あなたのお姉ちゃんは今、とても大変じゃないかな?」

郁夫「…」こく

裡沙「それは郁夫君もそうだし、ご両親……パパとママも辛い思いをしてないかな?」

郁夫「!」コクコクッ

裡沙「うん、だけどそれはとっても難しくて、どんなに偉いお医者さんでも治してくれない」

郁夫「…」コク…

裡沙「……」

裡沙「──そんな時、郁夫くんならどうしたいかな?」

郁夫「…?」

裡沙「誰もがもうだめだと諦めてる中で、あなたは絶対に諦めてないはずだよ」

郁夫「……」

裡沙「なんでわかるのかって? それはもちろん、あなたがカッコいいからだね」



451 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:41:15.94 ID:wEQl1Uwp0
郁夫「!?」

裡沙「だってお姉ちゃんのことが今でも大好きなんだよね?」

郁夫「…」

裡沙「どんなにお姉ちゃんに辛いことや大変なことがあっても、大好きで居続けると思えるんだよね?」

郁夫「……」

郁夫「っ!」びしっ

裡沙「…うん、そう言ってくれると思った」

裡沙「──だからそんなかっこいいヒーローに」

裡沙「あたしから、ひとつのお呪いを教えてあげるよ」

郁夫「?」

裡沙「…それはね」

裡沙「───お姉ちゃんに近づく人たち全員に、クロスチョップをしてやるの」


452 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:44:34.34 ID:wEQl1Uwp0
郁夫「…」

郁夫「…?」

裡沙「クロスチョップだよ、わかるかな?」

郁夫「っ…」

郁夫「!」びしっ

裡沙「そうそう! そんな感じだよ!」

裡沙「…そうだね、例えば助走をつけてクロスチョップとかもっといいかもしれないかな?」

郁夫「っ!」

すたたっ

裡沙「?」

郁夫「…」くるっ

だだだだだ!

郁夫「っ!」びしっ

すさぁああ…

郁夫「!」ドヤ


455 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:48:03.30 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「おっけーだよ! すごいすごい! やるじゃない!」

郁夫「っ」ドヤァ…

裡沙「うんうん、そうやってお姉ちゃんに近づく奴らに食らわせてやるんだよ」

郁夫「…?」

裡沙「きっとそれが、郁夫くんの力になるはずだから」

裡沙「──頑張れヒーロー、お姉ちゃんを泣かせる奴らを全員……ぶっ飛ばしちゃうんだよ!」

郁夫「……」

郁夫「!!」ぱぁあああ!

裡沙「これからの道は困難で険しいモノとなる、頑張れ郁夫くん」

郁夫「!」びしっ

裡沙「…あたしも影から応援してるからね?」なでなで

郁夫「!」テレテレ

裡沙「あ……もう、行かなきゃ」


457 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 16:58:41.20 ID:wEQl1Uwp0
郁夫「?」

裡沙「うん、あたしはもう行くね。一緒に遊べて本当によかったよ」

郁夫「!」

裡沙「くすくす、そっか。あたしもそう言ってくれて嬉しい」

裡沙「…それじゃあね、郁夫くん」

郁夫「……」

裡沙「……頑張ってね」くるっ

郁夫「……」

郁夫「! ……?」

郁夫「!? !?」

郁夫「……?」

~~~

『──コレで良かったの?』

裡沙「それをあなたが言ったら困るんだけどね…まあ、いいと思うよ」


458 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:01:18.23 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「多分、あれでその3つのことも全て叶うと思うよ」

『全て?』

裡沙「全部ね」

『どうして断言が出来るの?』

裡沙「……」

裡沙「…そうなるって思うんだよ、この世界はきっと」

『……』

裡沙「──七咲逢の迎えるエンド、それは独りぼっちだった」

裡沙「それってどうしてかなって、思って」

裡沙「…あんなにもお姉ちゃん思いな弟が居るのに」

裡沙「未来のあの娘は独りぼっちだった」

『……』

裡沙「なにか理由があるんだって思ったけど、うん…それは結局単純なことだったんだよ」



459 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:04:28.69 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「──強くないんだよ、みんなが」

『強くない? それは力がってこと?』

裡沙「ううん、そうじゃないの。心が弱いんだよ、この世界の人達は」

裡沙「問題を迎え入れることを、立ち向かうことを、そして頑張ることを」

裡沙「──みんなみんな、諦めてるんじゃないかなって」

『……』

裡沙「一番そう思えたことは、未来で七咲逢が言ってた言葉」

裡沙「…一人でも頑張れるって」

裡沙「とんだ…嘘つきだよ、あの娘は一人で頑張れることなんて出来ないはずだから」

裡沙「強がりってことだよ、強くなくて、本当は弱いのに」

裡沙「──問題から逃げようとしてる感じがしたの」


460 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:10:55.83 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「彼女はきっと後悔をしてるんだよね」

裡沙「そうなってしまった自分に、そうせざるおえなかった現実に」

裡沙「……彼女は《これでいいや》と思ってしまってたはず」

『それは…』

裡沙「…未来を後悔したくなければ、頑張り続ける私を作れ」

裡沙「彼女は──そう、あの子によって変われるはず」

裡沙「常に今を生きてる、未来を考えず『今の姉を心配してる彼』が重要なはずだから」

裡沙「何も知らない年代だけど、未来を見通す力も乏しいけれど」


裡沙「──全力で今を生きてる彼は、【今】を頑張れと言い放てる」


裡沙「それがこの世界の矛盾だと思うよ、あたしは」


486 >>461ていせい :2012/11/06(火) 18:31:20.97 ID:wEQl1Uwp0
『……』

裡沙「…あはは、なんだかちょっとクサイこと言っちゃったかなぁ」

『…上崎裡沙』

裡沙「うん?」

『──あなたは今、水色の世界を救った』

裡沙「…え?」

『七咲逢と橘純一が作り出す水色の世界、現在を持って成功になったんだよ』

裡沙「…いいの?」カチャ…

【七咲「先輩、部活やめちゃいました」】

裡沙「……」

『いいのって、あたしはわからない。だってそれは』

裡沙「え、それは…?」

『あな──ギュイィイイッ……ジジジッ……ガガガッ!』

裡沙「え、なに…っ!?」

裡沙「また画面が真っ暗に…!?」


462 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:18:26.08 ID:wEQl1Uwp0
『ジジジッ…ジガガッ……!』

裡沙「ねえって! 聞こえてる…!? あたしの声が聞こえてるの…!?」

『ジジッ…り……ガキュインッ……飛ぶ…ギギッ!』

『──間…どう……んなの……騙…!?』

裡沙「え、なに…? どういうこと…?」

『終……じゃない……?…ここ……嘘……上崎…!』

『あな……ごめんな……たし……終……って……思…!』

裡沙「え……?」


『───ロードしますか?』


463 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:22:28.42 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「…どういう、こと?」

裡沙「ロードしますかって……ねえ、この声は聞こえてるの…?」

『ロードしますか?』

裡沙「っ……」

裡沙(明らかにいつもと違うっ…文字も出てこないし、それに…!)

裡沙「…この感じ、あの時と一緒だ」

裡沙「何も分からず、全て逃げ出そうとした時に…このゲーム機を握った時と…」

裡沙「……同じ感覚」

裡沙「っ…なにか、あるんだね」

裡沙「なら、あたしは立ち向かうだけ」

裡沙「──もう後悔なんてことは、したくないから!」

ポチ!


468 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:43:28.24 ID:wEQl1Uwp0
ギュルルルルルルル!!

裡沙「……んっ…」

裡沙「……」

裡沙「──ここは……」

裡沙「……え、なにこれ…?」

ぐわぁん…ぐわぁん…

裡沙「きもち、わるいっ……見えるモノ全部…」

裡沙「──ピンク色になってる…?」

裡沙「うっ…うぇっ……おえっ…」

『──うん、今日も彼と楽しく過ごしてるよっ』

裡沙「…っ…?」

『──大丈夫、美也ちゃんは心配し過ぎだよ~』

『──平気だよ、これからもちゃんと幸せになっていくから』


469 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:46:50.44 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(なにこれ、頭の中で声がっ…響いてっ…!)

『──それじゃあね、また…うん、うん…会えたら一緒に遊ぼうね』

『──え? そういってまた会えないって…そんなことないよ、遊べるって…』

『──うん……うん……ごめんね、うん…』

『──それじゃあ、また今度に…うん、またね…』


カチャン…


裡沙「……はっ!?」

裡沙「はぁっ…はぁっ…え、ここは…?」

裡沙「部屋…?」

裡沙(アパート…なのかな、これって。とても小さな部屋…畳も古くて…テレビも型遅れだし…)

裡沙「…誰の部屋なんだろう、あっ…そうだ…!」カチャ


470 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:49:59.94 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「ねえっ! 聞こえる!? 聞こえてたら反応してよ!」

『……ジジッ…』

裡沙「っ…ねえってば!」

『──ピュイン……』

裡沙「あ……電源が…」

裡沙「う、うそっ…何時だって電源はついたままだったのに…」

裡沙「……どうしろっていうの…?」

ガタガタ…

裡沙「…!」

裡沙(だ、誰か入ってくるっ…隠れなきゃ…!)

~~~

「……」ぱさっ

裡沙(なんとか押入れの中に隠れたけど…バレてないよね…?)


471 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:52:57.58 ID:wEQl1Uwp0
「……」

裡沙(ちょ、ちょっとだけ覗いてみよっと…本当にあたしって大胆になったよね…)スゥー…

裡沙「…誰か座ってる…よく見えない、どうして電気付けないんだろ…」

「……」

裡沙(あ、やっと目が慣れてきた。女の子…かな、うん、女の子だ)

裡沙(あれは……何処かで見たことあるような…)

裡沙(……ううん、違うよ。一人だけ思い出した子が居るけど、あんなに…)

裡沙(濃いメイクをするような子じゃなかったし…むしろしなくて当然のような…)

「……はぁ」

裡沙「っ…」

「…疲れた…」

裡沙(──え、うそ……この声…本当に…本当に?)

裡沙(…中多紗江、なの…?)


472 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:53:51.16 ID:FkHc4JsFO
スレたふかふか


473 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 17:58:10.81 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(でも、あんなメイクして…それによく見れば派手な服を着てる…まるで…)

裡沙(ドラマで見た……きゃばじょう、みたいな感じが…)

紗江「……」ゴロン

紗江「…胃の中きもちわるい…おぇっ…」

裡沙(な、なんて酷い言葉…)

紗江「また今日も飲み過ぎちゃったな……お医者さんに怒られちゃうかも…ね」

紗江「あはは~…キャバ嬢が飲まなくて仕事やれるかってーの!」

紗江「あはは!」

紗江「はは……は」

紗江「……おなかすいたよ…」

紗江「……美也ちゃん、元気そうだったなぁ…」

紗江「幸せそうだったなぁ…毎日たくさん楽しんで…」

紗江「恋や結婚、仕事なんて頑張ってるんだろうなぁ…」


474 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:01:22.36 ID:wEQl1Uwp0
紗江「……いいなぁ、私も…」

紗江「恋愛したいなぁ…恋、したいなぁ…」

紗江「かっこいい…白馬に乗った王子様と、かわいい教会で…」

紗江「…結婚、したいなぁ…」

紗江「……っ…」

紗江「…えっ…ぐっ……どうして…こうなっちゃったんだろ…」

紗江「私はっ……ただ、幸せにっ…なりたかった…のに…」

紗江「ぇっ…ぐすっ…」

裡沙「……」

裡沙(…もしかして、これが…中多紗江のバットエンド…?)


475 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:05:13.01 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(きゃばじょうになった中多紗江…これが最悪な終わり方…)

裡沙「……でも、あたしはこれをどうしろっていうの…?」

裡沙「これが動かなきゃ…あたしは、何もすることなんて…」カチャ

裡沙「……」

ドンドンドン!!!

裡沙「ひっ」ぱしっ!


「──おい、開けろやぁ! 居るのはわかってんだぞッ!」


裡沙「…!? …!?」


「今日も店休みやがって! テメーはキャバで食っていけるほど稼いでねーだろうがッ!!」


裡沙(なに、これ…?)ちら

紗江「………」ぎゅっ


476 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:08:05.84 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(中多さんっ…部屋の真ん中で丸まってる…)

紗江「っ…いやだよ、こわいよっ…」

裡沙「っ…!」

紗江「──こんなの嘘だよっ…本当じゃない、全部全部嘘だよっ…!」がたがた…

「おい、開けろやぁ! ぶち破るぞ!」

紗江「いやっ……いやいやいやいやっ…!」

裡沙「……」

紗江「こんなのことっ……もうイヤっ!!!」

裡沙「……───」

がらぁ!

裡沙「──わかった」すたん…

紗江「……えっ…?」


477 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:10:27.63 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「あたしに任せて、大丈夫…もう平気だよ」

紗江「だ、誰…? どうして押入れに…」

裡沙「そ、それはっ…うん! 気にしないで!」

紗江「え、ええっー…」

裡沙「そんなことよりも──そうだよ、あの人はだれ?」

紗江「え?」

裡沙「あのドアの向こうで叫んでる人のこと」

紗江「…あれは…」

裡沙「……」

紗江「その…」

裡沙「…言いたくないのなら、別に聴きだしたりしないから」

裡沙「だけど、これはだけは教えて欲しいな」

裡沙「──あの人から逃げたい?」


478 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:13:46.13 ID:wEQl1Uwp0
紗江「っ……逃げられるの…?」

裡沙「いいから、答えて」

紗江「う、うんっ……逃げたい…!」

紗江「──もうこんな世界から逃げたいですっ…!」

紗江「もうっ…もうっ…だめになりそうなんですっ…壊れてしまいそうなんですっ…」

紗江「……いやだよもう…」ぎゅっ

裡沙「…そっか、逃げたいんだ」

紗江「…はい…」

裡沙「じゃあ最後に聞かせて、中多紗江」

裡沙「逃げるってことは、今の現実から逃げ出すってことだよ」

裡沙「──あなたが決めてきた選択を、なかったことにするってことだよ」

裡沙「それはあなたにとって、後悔することのないことだよね?」


480 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:16:53.97 ID:wEQl1Uwp0
紗江「えっ…?」

裡沙「逃げ出すことは、変えること。また不幸な目に会うことを繰り返すだけかもしれない」

裡沙「振り出しに戻った世界で、あなたはまた後悔すること無く──」

裡沙「──歩き出す力は、持ってるの?」

紗江「……」

裡沙「……」

紗江「…あなたが…何を言ってるのか私には…」

紗江「……まったく、わかりません」

ぎゅっ

紗江「…だけどもし、それが…」

紗江「──あのときの『選択』を言ってるのなら…」

紗江「わたしが悔やみ続けてる…あの時の…あのセンパイのことを…」

紗江「……私はもう一度、やり直せるなら…また…泣かせること無く…」


481 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:17:25.40 ID:pLT8No6d0
今までのSSをつなげるとは・・・
やりおるわ


482 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:21:44.57 ID:wEQl1Uwp0
紗江「…あの時のセンパイを、笑わせることができるのなら……!」

裡沙「……」

紗江「──お願い、しますっ…どうかっ…私をセンパイのところへっ…!」

紗江「今の私であっても…それでもいい、過去の私であっても…どっちもいいんです!!」


紗江「私はっ……もう後悔したくないっ…!」


裡沙「……」

裡沙「……わかったよ、中多紗江」

カチャ

裡沙「──あなたを今から、幸せにするから」

紗江「……ひっぐ…ぐすっ…」

裡沙「…実は聞こえてるんじゃないのかな、ねえ」


487 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:37:58.31 ID:wEQl1Uwp0
『…ジジッ…』

裡沙「おかしいと思ったんだよ、なにかが変だって思ってた」

裡沙「都合が良すぎるんだもん、わかっちゃうよそれじゃあ」

『……ガガ…』

裡沙「今まではガイドしてくれた子が居てくれたから、色々と行動できた」

裡沙「…だけどね、今もまたガイドされてるんじゃない?」

『……はは』

『…やるわね』

裡沙「…声…?」

『気にしなくていいよ、私は別にあなたとは関係ない』

『ただひとつだけ、確かめたかっただけだから』

裡沙「確かめる…?」

『ふふっ、そう。だけどよかったわ、無理して色々と頑張ったかいがったものね』


488 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:42:01.90 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「……」

『…それであなたはその子を救うの?』

裡沙「…当たり前じゃない」

『そうなの、よくわからない感情だけど…わかったふりをしといてあげる』

『それじゃあ時間跳躍をするわね、いい? その子に手を触れて、ボタンを押すのよ』

裡沙「……」

紗江「…?」

裡沙「…いい? ちゃんと聞いてね、今からあなたは、これから全てを失うの」

紗江「……」

裡沙「その代わりに、あなたが後悔したものを全てに立ち向かう権利が手に入れられる」

裡沙「…覚悟は、いいよね?」

紗江「っ…はい…っ!」

裡沙「うんっ!」

裡沙「時間を飛ばしてくださいっ!」

ぽちっ


489 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:45:28.38 ID:wEQl1Uwp0
ギュルルルルル!!

裡沙「っ……きゃあっ!?」

ぐぐっ

紗江「っ…っ…」

裡沙「手がっ…離れ、そうにっ…んんーっ!」ぎゅっ

裡沙「──あっ…」

するん…

紗江「…あ…」

裡沙「中多さ───」

~~~

裡沙「……」

裡沙「…っ…ここは…!」

裡沙「…何処かの部屋……オフィス…?」


492 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:48:56.43 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「また何処かに飛んだ…あ、中多さんはっ…!?」

裡沙「い、いない…?」

裡沙「…どうして、彼女はちゃんと過去に…」

『飛べてるわよ』

裡沙「ひぁっ!?」

『もう隠しても意味無いでしょうから、こちらから登場させてもらうわね』

裡沙「あ、あなたっ…中多さんに何をしたの!?」

『あら、見当違いにも程があるわよ。私はただガイド』

『──彼女と離れ離れになったのは時空の関係、そこにあなたはいけることは出来ないの』

裡沙「出来ない…?」

『知らないくてもいいわよ、知っても意味など無いし』

『──それよりもほら、そろそろ来るわよ』

裡沙「えっ?」

かちゃっ


494 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:52:36.56 ID:wEQl1Uwp0
「──何をしているの、その案件は昨日に済ませておくよう言っておいたわよね」

「あなたは会社で雇われてる身、仕事をこなし、成果を残してこその社員よ」

パタン

森島「──そこまで無能なら、それなりの処罰を……」

裡沙「……」

森島「…へ?」

裡沙「…あ、あはは」

森島「だ、誰!? どうして私の部屋にっ……」くるっ

『時空ロック』

森島「…ちょっと秘書達はなにをやって──あら、なにこれっ…」ガチャガチャ

裡沙「っ…?」

『あら、好都合ね。鍵が壊れてるそうよ』

裡沙「…嘘つき」


496 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 18:57:56.29 ID:wEQl1Uwp0
森島「どうなってるのよっ…もしかしてあなた達がなにかやったの!?」

裡沙「え」

森島「け、警察を呼ぶんだから!? なに、誘拐して身代金でも取ろうっていうの!?」

裡沙「え、えっと」

森島「そ、そうよっ…携帯があるじゃないっ…! 誰かに電話して…っ」

『電波ロック』

森島「繋がんない!」

裡沙(なんなのこのコント…)

『くすくす、面白いわね。笑うなんてどれだけ久しぶりかしら』

裡沙「…とにかく、この状況をどうしたらいいのあたし」

『別に何もしなくていいわよ』

裡沙「うそ」

『その通りね、何かしてもらうつもりでココに飛ばしたの』

『──期待してるわよ、上崎さん』


497 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:01:45.45 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「え、ちょっと…!」

『ぷちん』

裡沙「っ…ぐぅっ…何だか知らないけど、声の人はあたし好きになれなさそうっ…!」

森島「はぁっ…はぁっ…どうして、繋がんないのよっ…」

裡沙「……」

裡沙「…あの」

森島「なによっ!」

裡沙「えっと、うーん……森島先輩ですよね?」

森島「え…センパイ…?」

裡沙「あ、はい。その~…わたしも輝日東高校なんです、覚えてないと思いますけど」

森島「…その高校の名前、久しぶりに聞いたわ」


498 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:04:43.54 ID:wEQl1Uwp0
森島「…私が在学中に、あなたも居たの?」

裡沙「は、はい! それはもう人気でしたから…森島先輩が在学中は、
   誰もがみんな知ってて当然だと思いますよ?」

森島「……」

裡沙「あはは」

森島「…はぁ、なんだか毒気が抜かされた気分…」

森島「……それで、なんなの後輩ちゃん」

森島「どうしてあなたは私のオフィスに無断で勝手に入ってるのかしら」

裡沙「……」

森島「…返答によっては、本当に警察を呼ぶわよ」

裡沙「……っ…」

裡沙(ど、どうしよう…!)

裡沙(て、適当に誤魔化すべきかな…? だ、だけど何処まで…?)


499 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:07:33.52 ID:wEQl1Uwp0
森島「…?」

裡沙(今までは答えらしきことがあったから、それを目指せばいいだけの話で…
   この状況がどうしたら答えになるか、なんてこと全くわからないし…)

裡沙「っ……」

裡沙(──ハッタリをかけるしかない!)ぐっ

裡沙(とにかく圧倒するんだよ裡沙! 森島先輩が退くようなことをいって、誤魔化すの!)

裡沙(それはあたしの得意分野のはずっ…イケる!)

裡沙「……森島先輩」

森島「なにかしら」

裡沙「センパイ、あなた──」

裡沙「──今までの人生…こ、後悔してませんか?」

森島「してないわよ」

裡沙「えっ!?」


500 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:10:40.18 ID:wEQl1Uwp0
森島「だから、してないわよって」

裡沙「…ほ、本当に?」

森島「ええ、今の人生にどこが後悔するような所があるかしら」

森島「──最高級の地位、名誉、そして権力」

森島「全てのものを牛耳れる立場にいる私なのよ?」

森島「…この会社に働いてる社員を、指先ひとつでクビにも出来る」

森島「…これに後悔? くす、笑わせないで」

森島「言いたいことはそれだけ? なら、警察を呼ばせてもらうわ」

森島「…いずれか秘書たちも異変に気づいて呼んでくれるでしょうしね」

裡沙「っ……」

裡沙(こ、恐いよぉ!? なにっ…これが本当に森島先輩なの!?)


501 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:14:12.31 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(とりあえず話しを降ってれば、わおわお! ってノッテくれると思ってたのにぃ!)

森島(なにか酷いことを思われてる気がする…)

裡沙「っ…」

裡沙(だけど、だからなんだって言うのっ…あたしは! もっと深いそこを見てきたつもりだもん!)ぐっ

裡沙(たとえ怖く立って、ちゃんと立ち向かえる勇気は…ここにあるはずだから!)

裡沙(なんで立ち向かわなくちゃいけないのか分からないけれど!)

裡沙「──森島先輩…本当にそれは幸せなんですか?」

森島「なにがかしら」

裡沙「そんな……そんな堅苦しくて、重たい責任ばかり背負って…」

裡沙「あなたは今、本当に楽しくて幸せで居られるんですか…?」

森島「…いられるわよ」


508 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:46:56.23 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「うそです、そんなことないはずですっ!」

森島「……」

裡沙「──森島先輩、あなたは…今は独り身ですか?」

森島「っ…何が関係あるのよ」

裡沙「あります、そんなに美人で地位も名誉もあって…どうして彼氏が居ないんですか?」

森島「そ、それはっ…」

裡沙「もしかて…」

裡沙「…作るのが恐いんですか?」

森島「っ…!」

裡沙(──っ…これか、この人の後悔は…!)

森島「何を急に変なことを言って…っ!」

裡沙「……あたしは知ってるんですよ、森島先輩」


509 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:52:49.50 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「──あなたは何かしらが間違ってることは!」

森島「ま、間違ってる…?」

裡沙「……!」びしっ

裡沙(な、なんだろ! なにを間違ってるんだろ!?)

裡沙(うぐぐっ…考えるのよ、裡沙っ…まだまだいけるはずっ…!)

裡沙「あっ…あなたは、きっとそう!」

裡沙「その大きな立場で居ること自体がっ…間違いであると!」

森島「っ…?」

裡沙「あなたは、けっして…そんな人じゃなかったはずです…!」

裡沙「他人を指先ひとつで命令したりっ…そんな冷たい瞳で人を見ることなんてっ…!」

裡沙「──学生時代のあなたは絶対にしなかった…!!」


510 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 19:55:46.58 ID:wEQl1Uwp0
森島「……」

裡沙「森島先輩っ、どうしてそうなってしまったんですか…!?」

裡沙「あの頃のあなたはっ…もっと光り輝いてたはずですっ…!」

裡沙(そう、眩しかった。誰もが目をつぶって避けてしまいそうになるぐらい)

裡沙(…だけどその輝かしい光に引き寄せられて、誰もが振り返る)

裡沙「そんなっ…あなただったのに…」

裡沙「…今のあなたは、光どころか闇しか無い!」

森島「……」

裡沙「真っ黒じゃないですかっ…冷たくて、怖くて、何が何だかわからない…!」

森島「…で、なんなのかしら」

裡沙「っ…」

森島「過去の私が輝いてたとして、それがどうかしたの?」


511 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:00:20.43 ID:wEQl1Uwp0
森島「それは何があったって、今になっては過去のお話」

森島「はい、そうですか。なんて一言で終わっちゃうじゃない」

森島「…それを何か意味があって伝えていたとしても、そんなもの全く意味が無いわ」

森島「あなたが言う今の私が闇というのなら、そうでしょうね、私は闇よ」

森島「学生の頃の私はもう居ない。そんな答えが満足なのかしら?」

裡沙「……」

森島「えらく私の過去を掘り下げようとしてるみたいだけど、一体何のつもり?」

森島「あなたは、何様なの?」

森島「何を分かったつもりでいるのか知らないけれどいい加減にしてちょうだい」

森島「──怒るわよ、本気で」凜ッ!

裡沙「っ…」


514 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:05:11.82 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「……じゃあ教えてくださいっ…」

森島「……」

裡沙「闇の森島先輩は…どうして、彼氏を作らないんですか…?」

森島「……」

森島「…いらないからよ、男なんて」

裡沙「…いらない?」

森島「ええ、私は一人で十分やっていけるわ」

森島「──もう誰にも頼らないと、決めてるの」

裡沙「……」

森島「それが、答えよ」

裡沙「……答え…うっ…」

ジジジジ…ッ…!

裡沙(あ、あれっ…これってまさか…)

『──おめでとう、神崎さん』

『無事に紫色の世界、そして桃色の世界を救ったわね』


516 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:18:12.89 ID:wEQl1Uwp0
裡沙(…は、はい…っ?)

『信じられないかもしれないけれど、それがあなたの活躍だったのよ』

『桃色の世界、あそこでは中多紗江にやり直しを決断させる』

『紫色の世界、そこでは森島はるかに自分の本当の強さの意味を自覚させる』

裡沙(……)

『中多紗江、彼女は後悔を続ける日々だった』

『なにもかもが曖昧で、優柔不断で、全てがまわりの決断に寄って促されていたの』

『…だけど最後に、あなたの言葉で初めて一人で決断をした』

『縋る思いがあったのかもしれないわね、それしかないと思ったのかもしれない』

『けれど、それでも彼女はきっとその現状に流され続けたはず』

『──落ちるところまで落ちていくところだったのよ、彼女は』

『だけど、矛盾が生じた。それは──世界線の変更』

『その世界線では最悪のエンドを迎え、そして死という概念で終りを迎えるはずだったのに』

『──上崎さん、あなたの言葉でそのエンドは免れたの』


518 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:27:54.55 ID:wEQl1Uwp0
『森島はるか、彼女は強くなることだけを考える日々だった』

『誰よりも偉く、誰よりも高く居ようと努力する。全ての選択は自分一人でやり続けた』

『…だけど最後に、あなたの言葉で強さに揺らぎが走った』

『今での強さは本当に自分で決めた強さだったのか。なんの濁りもなくやり遂げられた思いだったのか』

『人は一人で強くなれるものなのかと、疑問を残してしまった』

『──彼女は思い出したのよ、強くなるための切っ掛けを』

『そこで、矛盾が生じた。それは──再選択肢』

『その世界線では孤独に強くなるエンドのはずが、一生独り身で生き続けるはずだったのに』

『──上崎さん、あなたの言葉でそのエンドは免れたの』


519 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:35:44.55 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「……」

『まあ言うなれば中多紗江には相談に乗ってあげた』

『森島はるかは愚痴を聞いてあげた、で済む話ね』

裡沙「…あたしは、別にそんなことを思って…」

『でしょうね、きっとそうだと思うわ』

『…だけど、それが成功だったのよ上崎さん』

裡沙「……」

『あなたががむしゃらでやり遂げた二つの世界、』

『桃色、そして紫色。その二つは無事にハッピーエンドに向かっていくはずだから』

裡沙「…」

『納得いかない、かしら』

裡沙「…うん」

『だけどそうじゃなきゃ、決して彼は救えないわよ』


520 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:39:48.80 ID:wEQl1Uwp0
『この二つの世界でわかったと思うけれど、
 あなたはバットエンドのを迎えた後に来ている』

裡沙「…やっぱりそうなんだ」

『今までの4つの世界と違って、時間がない。
 色々と手を回す時も腕も足も心臓も、なにも残ってないのよ』

裡沙「だから、こうやって…がむしゃらにやるしかないの?」

『その通り、そしてあなたは──六人の彼女たちを幸せにした』

『最後よ、上崎さん』

裡沙「……」

『あなたはとうとうこの時を迎えた、だけど、今まで以上に大変なことになる』

裡沙「……」

『…バットエンドを、変更するのよ』

裡沙「…うん」

『決められた世界を、騙すの』

裡沙「わかってる…大丈夫、平気だよあたしは」


521 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:47:25.81 ID:wEQl1Uwp0
『じゃあボタンを押してちょうだい』

『──あなたを灰色の世界へ飛ばすわ』

裡沙「……」カチャっ

裡沙「…橘くん…」

裡沙「…あたしは、やっとここまでこれたよ…」

裡沙「今のあなたは…世界のとおりにバットエンドを迎えてるはずだよね…」

裡沙「……だけど救うから」

裡沙「救うんだから…あたしは、あの時の彼を…っ!」

裡沙「──絶対っ…絶対ぜったいぜったいぜったいっ!」

裡沙「知らないふりもっ…逃げ出したりもっ…」

裡沙「自分に何もないってわかっててもっ…努力をすることを怖がっても!」

裡沙「あなたを助けたいって思いはここにあるんだよ!」

裡沙「あなたをっ…救うためにっ…!」

ポチ!

裡沙「──あたしはここまで強くなったんだからぁ!」


522 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:49:46.80 ID:wEQl1Uwp0
ギュルルルルルル!!!

裡沙「──………」

裡沙「……」

カァーカァー…

裡沙「…きた」

『…やっときたんだね、上崎裡沙』

裡沙「あ、この声って…」

『声で会話は…初めてだね、こんにちわ』

裡沙「う、うん」

『……その、やるんだね』

裡沙「…うん、やるんだよあたしは」

『…でも』

裡沙「わかってるよ、ちゃんと」


524 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:52:11.10 ID:wEQl1Uwp0
リンゴーン リンゴーン

『あ、あたしから…もう何も言えることはないの…』

裡沙「うん」

『…この世界でどうすればいいのか、あたしに助言はできない』

裡沙「…うん」

『全ては、あなたが決めないとダメなことなんだよ…それでも…?』

裡沙「……」

裡沙「──大丈夫だよ、きっとどうにかなるはずだから」

『…本当に?』

裡沙「安心して、もう大丈夫」

『それっ…』

裡沙「この世界で、あなたが画面に写してくれた言葉…だよね」



525 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:54:40.14 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「今それを、あなたに言ってあげるよ」

『……ありがとう…』

裡沙「いいってば、えへへ。照れちゃうからやめてよ」

裡沙「──……そろそろかな」

バタバタ…!

裡沙「……」

裡沙「──来た…」

裡沙(この世界でのことは、何よりも詳しい)

裡沙(橘くんが何処のタイミングで、どのクルマに控えるか何度も何度も見てきた)

裡沙「……大丈夫、イケるはず…!」

たたっ


526 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 20:57:47.07 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「っ……!」だだだっ

裡沙(大丈夫、これはきっと正解のはず──)

純一「……!」

裡沙(──あはは、久しぶりだね。橘くん、そんな驚いてる顔も…とってもかっこいいなぁ)

だんっ

裡沙(だからね)

ぐいっ

純一「えっ…」

裡沙(──あなたはあたしが、幸せにする)ばっ…

裡沙(あはは、ごめんね……そこに倒れていれば、きっと)

裡沙(あなたは轢かれることは無いはずだから)



528 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:01:28.58 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「……」

裡沙(あ、車がこんなにも近くに──……)

裡沙(ゆっくりゆっくり近寄ってくる…コレが走馬灯ってやつなのかな…?)

ジジジッ…

裡沙(うん、良かった。後悔なんてこれっぽっちもなかった)

裡沙(なんどだって、なんどだって。あなたを幸せにして)

裡沙(あたしはそれが出来て、本当によかった)

グォォオ…

裡沙(ありがと、橘くん…こんなにも人を好きにさせてくれて)

裡沙(あたしに頑張るってことを…教えてくれて)


裡沙「……ありがとう、大好きだったよ」


530 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:09:02.15 ID:wEQl1Uwp0
ジジジッ…!

ジジジジジジジッ…ッ!


ギュィィィィィイイイイイイイイイイン!!!




純一「──とどけぇええええええええええ!!!」


裡沙「…え…」



がっ!

ばたん…


純一「はぁっ…はぁっ…!」

裡沙「……え、あれ…」

純一「やっ…やった……やっと、届いた…!」

純一「──やっとキミに辿りつけたっ…!!」


532 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:14:05.99 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「どういう……こと……?」

「──た、大将っ?!」

純一「う、梅原っ! やったぞ! 僕はやった!」

梅原「お、おうっ…それが、その…何度も自分を救ってくれてたっていう?」

純一「そうだよ! この子がそうなんだ!」

裡沙「っ…? っ…??」

「へぇ、やるじゃない。マジで轢かれると思ったわよ、ほんっと」

薫「んで、これでアタシたちはもう手伝わなくていいってわけなの?」

純一「おう! 僕が一人でやってしまったよ!」

絢辻「…ホントね、なんのための一日だったのかしら」

純一「そんな事言わないで…救えたんだよ! この子を!」

七咲「…美也ちゃんもう終わったって」

美也「ほんとー?」

紗江「わわっ…抱き合ってる…っ」

森島「う~ん、なんだかフクザツな気分…」



533 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:17:54.79 ID:wEQl1Uwp0
梨穂子「はぁっ…はぁっ…やっと追いついたぁ~」どすどす…

純一「梨穂子遅いぞ! もう、僕が救ってしまっただろ!」

梨穂子「だってみんなはやいんだも~ん…ううっ…」

裡沙「……た、橘くん…?」

純一「っ…そうだ、喜んでる暇じゃなかった…!」ばばっ

純一「その、名前も知らないけれどっ……僕はあなたをずっと助けようって思ってた!」

裡沙「え…助けようと…?」

純一「──言っても信じてもらえないと思うけど、僕は…過去にずっと何度も何度も」

純一「キミからこの交通事故を救ってもらう記憶があるんだよ…!」

裡沙「…え…それって…」

純一「うん、それはね…」

カチャ

純一「…このおかげだと思うんだ」

裡沙「こ、これって…っ!? ゲーム機…!」


534 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:23:04.17 ID:wEQl1Uwp0
純一「うんっ…キミが僕を庇って事故にあった時…このゲーム機が傍に落ちてて」

純一「その画面に書いてあったんだ」

純一「──今朝に戻りますかって」

裡沙「っ……」

純一「僕はそれを選んだ。そしてずっとずっと…本当にずっと…!」

純一「きみをっ……きみをっ…僕はっ…!」ぎゅうっ

裡沙「わわっ…」

純一「あり、ありがとうっ…僕はこの言葉をキミにずっと…伝えたくって…だから…っ!」

裡沙「え、えっと…」

純一「…本当に、ありがとうっ…」

裡沙「橘くん……」

純一「…もう離さないから、僕は絶対に…」

裡沙「…うん、ありがとう」ぎゅっ


535 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:26:13.26 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「わたしもねっ…橘くん…」

純一「…うん…?」

裡沙「何度も何度も…あなたを助けたんだよ…?」

純一「そうだね、僕を庇ってくれた…」

裡沙「…ううん、そうじゃないの」

純一「え…?」

裡沙「それはただの…あたしの我侭なんだよ」

裡沙「…忘れてたんだ、だってそれはあたしの…幸せじゃない」

裡沙「二人で一緒に…幸せになることが、あたしの望みだったから…」

純一「……」

裡沙「その為に、この時のために……あたしは頑張ってきたんだね、きっと…」

純一「……」

裡沙「……」



536 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:29:42.03 ID:wEQl1Uwp0
薫「…なにこの居づらい雰囲気」

梅原「カァー! 犬も食わねえってか!」

梨穂子「食べ物の話?」

絢辻「あっちにメロンパン売ってるみたいだし、食べましょう桜井さん」

七咲「森島先輩はなにしてらっしゃるんですか?」

森島「うん? 踊ってるの!」

美也「いぇーい! にしし!」

紗江「わぁ~…美也ちゃん踊り上手~!」


純一「……」

裡沙「……」

純一「…その、えっと」

裡沙「う、うん…」


『ジジジッ…』


537 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:32:56.85 ID:wEQl1Uwp0
純一「うわっ! な、なんだ急に画面が…!」

裡沙「…!」

『ジジッ…』

裡沙「…もしかして」ごそっ

カチャ

裡沙「橘くん、そのゲーム機貸してくれないかなっ…」

純一「う、うん…」

裡沙「二つの…ゲーム機が揃った…」

『ジジジッ…』

『ジジジッ…』

裡沙「これってどういうこと…?」

『ジピュン!』

『ジピュン!』

裡沙「あ……」


『シーンを再生しますか』『シーンを再生できません』


538 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:35:28.00 ID:wEQl1Uwp0
純一「え、これってどういう…こと?」

裡沙「………」

純一「どうしたの? 何を見てるのキミは…?」

裡沙「…橘君」

純一「う、うんっ」

裡沙「まだ…まだあたしは知らないとダメなことが、あるみたい」

純一「えっ?」

裡沙「それはきっと…あたしが知らなくちゃいけないことで…」カチャ

『シーンを再生しますか』

裡沙「──見届けなきゃいけない、エンドのはずだから」

ポチ

『ドュルルルルルルン!』



539 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:39:58.37 ID:wEQl1Uwp0
裡沙「──……」

裡沙「……」

裡沙「…ねーんねん…ころーりよ…」

裡沙「うふふっ…眠たくなってきたかな?」

「ぜんぜーん」

裡沙「そっか~…だけど、眠らないとお馬鹿さんになっちゃうよ?」

「えーうそー」

裡沙「本当です、お母さんは嘘をつきません」

「うそつくしーめちゃうそつくしー」

裡沙「…なんていいぐさ、こら! そんな言葉を教えたつもりはないよっ!」

「えーだってお母さん、昔のビデオでそういってたよ~」

裡沙「…昔の…?」


541 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:42:07.91 ID:wEQl1Uwp0
「うん、なんだかさえない感じのー」

「男の人と写ってたー」

裡沙「…あはは、冴えないか」

「どうしたの? お母さん?」

裡沙「ううん、まだまだあなたは…男を見る目がないのかなあってね」

「えーあるしー」

裡沙「ないない、全くない」

「むー」

裡沙「…くす」

裡沙「…そのビデオに写ってる人はね、お母さんの…」

裡沙「…初恋の人なんだよ?」


543 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:44:55.83 ID:wEQl1Uwp0
「え~全然かっこよくないし~」

裡沙「うん、かっこ良くなかった…かな」

裡沙「…いつもおっちょこちょいで、失敗ばかりしてて」

裡沙「何度も何度も振られちゃったりしてね…」

裡沙「お母さんがちょっと手助けしたこともあったんだよ?」

「マジー」

裡沙「まじまじ、だけどそれでね……彼はとっても傷ついちゃって」

裡沙「…お母さん、ずっと後悔しちゃってるかな」

「なんでー謝ればいいじゃん」

裡沙「…うん、そうだね」

裡沙「何時かは──きっと、お母さんも謝る日がくるって思ってる」


544 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:49:10.35 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「それは何時かって……」

裡沙「……うん、まだあなたには早いかな」

「ごまかすなしー」

裡沙「ごまかしてないしー」

「ごまかしてるしー!」

裡沙「ごまかしてないしぃー!」

「ぐなぁー!」

裡沙「あはは、うん…お母さんを心配してくれたんだよね?」

「…むむっ」

裡沙「大丈夫、今日はもう寝ていいよ」

裡沙「…お母さんは平気だからね」なで

「…うん」


546 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:51:16.86 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「……」なでなで

「…お母さん」

裡沙「うん?」

「…お父さんのこと、好き?」

裡沙「…どうしたの急に?」

「……」

裡沙「好きだよ、あたりまえじゃない」

「…ほんと?」

裡沙「ホント、ホント」

「…うん」

裡沙「変な子だね、もう遅いからゆっくり眠るんだよ」

「…うん……」

「……すうっ…」


547 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:54:26.82 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「……」なで…

裡沙「…お父さんのこと、好き。かぁ…」

裡沙「……」

裡沙「──好きだよ、ちゃんと愛してる…」

裡沙「そしてあなたのことも、きちんと愛してるんだから」

裡沙「……」すっ

裡沙「…うん…」

裡沙「…大丈夫だよ裡沙…あたしは、今を生きてるから」

裡沙「まだ…まだあたしは貴方に会えに行けないけれど」

裡沙「……今を幸せに生きようと、頑張ってます…」

裡沙「っ…っは…ぐす……」

裡沙「また…涙が…もう、本当に泣き虫なままだなぁ…」すっ…

すたすた… ぱたん


549 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 21:58:59.83 ID:uAcq2Ypd0
「……」

『ふぇえっ…橘君っ…橘君…』

「…お母さん、また泣いてる」

(…そうなんだ、あたしは泣いてしまってる)

「いつもいつも…このひになると…泣いちゃう…」

(そしてこの子はそれを気づいてしまってる)

「お母さん…お母さん…」

(なんて馬鹿な母親……娘も…大切にできないなんて)

(こんなにもこんなにも、あなたのことを大切に思っているのに)

(──あなたの幸せを望んでいるのに、あなたは本当に)

「……橘…」

(……そうだったんだね、このエンドは)

「橘…純一……」

(──あなたの身体になってるってことは)

(あたしの…子供って事なのかな)


550 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:03:00.06 ID:uAcq2Ypd0
『──ピーガガッ……そっか、バレちゃったかぁ』

裡沙「…うん、ごめんね気づけなくて」

『ううん、いいんだよ。大丈夫』

裡沙「……」

『うん、わかってると思うけど──あたしは、あなたの娘』

『上崎裡沙の一人娘…名前は、別に言わなくてもいいかな』

裡沙「…そっか」

『実感わかないかな? お母さんって言ってみたり』

裡沙「うっ…ちょっと、凄い感覚かも」

『あはは、あたしは言い慣れてるんだけどね』

『…それで、色々と聞いたりしないの? お母さん?』

裡沙「…聞いてもいいの?」

『ここまであえて聞かないでくれたこと、わかってるよ』

裡沙「……」


551 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:07:03.22 ID:uAcq2Ypd0
『──この世界まで来たんだもん、ちゃんとあたしのことも言ってあげるよ』

『お母さん、あたしはね? あなたの時間から数十年後の世界に生きている』

裡沙「数十年後?」

『うん、その時よりもだいぶ科学ってものが発達しててね』

『携帯電話や、パソコン。あとは……うん、色々とあるよ』

裡沙「アバウト…」

『くすくす、だってお馬鹿さんだから』

『──そしてこのゲーム機も、またその科学の創りだしたもの』

裡沙「タイムマシーン…みたいな感じなのかな」

『そうだね、だけどそれってすご過ぎないかな?』

裡沙「いや、すごすぎるよね? そんなのも一般化されちゃうの?」

『違うよ、それはとある人が個人で開発したものなんだよ』

裡沙「こ、個人で?」

『うん、凄いよね~。この人は…たぶん、お母さんも知ってると思う、違う声の人だよ』


552 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:11:42.08 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「あーあの…」

『その人は…お母さんの時間だと、輝日南高校に通ってると思うから』

『個人的にお礼を言いに言って欲しいかなって』

裡沙「…ちょっとそれは、あなたがお礼を言っておいてよ」

『なんて傲慢な母親、若い頃からそうなんだね全く』

裡沙「娘の癖に生意気」

『…あはは、なんだかちょっと楽しい。こんな会話お母さんとしたことなかったから』

裡沙「…え?」

『あ、うん。気にしないでいいよ、お母さんはこの時代ではちゃんと生きてる』

『…ちょっとだけ元気ないけれどね』

裡沙「そうなんだ…」

『それでね』

裡沙「…うん」


553 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:14:14.39 ID:uAcq2Ypd0
『どうしてあたしが、こんな事をしたのか…わかるかな』

裡沙「…このゲーム機をあたしに拾わせた意味?」

『うん、そこの所は作ってくれた人に色々と任せたんだけどね』

『タイムマシーンだって、無理やり頼んで作ってもらっただけだから』

裡沙「……」

『…そうまでして、あたしは…過去のお母さんにゲーム機を送りたかった』

裡沙「…どうして?」


『うん、それはね?』

『──お母さんが幸せになってもらいたかったからだよ』


555 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:16:54.86 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「あたしが?」

『そう、上崎裡沙が幸せになってもらいたかったの』

『──ハッピーエンドを迎えて欲しかったんだよ、あたしは』

裡沙「…それだけ、なの?」

『それだけ? あはは、馬鹿言わないでよお母さん』

『あたしはね、自分のことよりも…お母さんのことが大切なんだよ』

『どんなに辛くても、愛してくれて』

『どんない悲しくても、愛し続けてくれて』

『──いつまでもいつまでも、あたしのことを抱きしめててくれた』

『あたしは、そんな時間を…決して忘れることが出来ない』

裡沙「…」

『ねえ、お母さん。今…幸せ?』


557 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:20:00.09 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「…うん、幸せだよ」

『そっか…そっかそっか! あははっ! そうなんだっ!』

『幸せだなんてっ…お母さんが幸せって言ってくれた…!』

『もうっ…こんなにも嬉しいことなんてないよ…! お母さん…!』

裡沙「うん…」

『あははっ…うれしくって、涙が出ちゃうよ…うん、ごめんね…?』

裡沙「…なんていうのかな、こうフクザツな気分…」

『うんっ、わかってるよ! …いきなり娘から喜ばれても、ちょっと困るよね』

裡沙「でも」

『うん?』

裡沙「あたしは、あなたという人に…喜ばれて、本当に…」

裡沙「嬉しいと思えてる…それは本当だからね…!」


559 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:24:49.20 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「あたしの子供がこんなにもお母さん思いだなんてっ…」

裡沙「…本当に、本当に嬉しくって…あたし…!」

『あはは、お母さん大袈裟だよ』

裡沙「おっ…大袈裟じゃないよっ…!」

『…そうかな、じゃあ最後に聞いてもいい?』

裡沙「ぐすっ…うん、なに?」

『──お母さんは、ちゃんと笑えますか?』

裡沙「……うんっ!」

『うん、よかった…本当に良かった!』

裡沙「……?」

『ジジッ…よかった……ガガガッ…』

裡沙「ど、どうしたの…?」

『ジジジュッ……ピーガガガっ……って…よかった…』

『──間に合って良かった、本当に』


560 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:27:21.63 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「えっ……!?」

裡沙「ど、どうしたの!? またノイズが…!」

『──これは、これは。本当に素晴らしい報酬ね』

裡沙「っ…この声…!」

『上崎さん、娘さんは本当に素晴しい子よね。寒気がするぐらいに』

裡沙「ど、どういうっ……?」

『端的に言おうかしら、今現在を持って』

『──あなたの娘は、消えようとしているわ』

裡沙「……え?」

『世界線が変更されたのよ、わかるでしょう?』

『あなたがこの子を生む世界が変わってしまったの』


562 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:32:01.51 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「どうしてっ…!」

『どうして? それは当たり前でしょう』

『──この子は上崎裡沙と、今の時間にいる男とできた子供』

『あなたがいる世界線は、それは多分──』

『──上崎裡沙と橘純一が幸せになる灰色の世界線』

裡沙「っ……」

『それじゃあ生まれないのよ、この子が』

『──同じくココも灰色の世界なのだから』

裡沙「じゃ、じゃあ…あなたちがいる未来は…?」

『そう、橘純一が事故に会い。後に上崎裡沙が結婚し子供生む』

『あなたいる世界の未来のお話、バットエンドのお話ね』

裡沙「っ……!」


563 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:35:19.37 ID:uAcq2Ypd0
『わかったかしら、あなたの娘さんは自分を犠牲にしてでも』

『──あなたを救いたかった、幸せにしたかった』

裡沙「そんなっ…どうし…て…!」

『どうしてなんてことは、もう彼女から聞いているでしょう』

裡沙「……本当にただ、幸せにしたかっただけ…?」

『その通り』

裡沙「…そんな」

『凄いわよね、考えられない。どうしてこんな事が出来るのかしら』

『この消えゆく身体──どういう原理で行われてるのか全くわからない、本当に不思議』

裡沙「っ…なに、言ってるのよ…あなたは…!」

『だってそうじゃない、他になにを不思議がるものがあるの?』


565 ていせい :2012/11/06(火) 22:39:15.72 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「ぐっ…ねえ! 聞こえてる!? あたしの声はまだ聞こえてるよね!?」

『無駄よ』

裡沙「う、うるさい! ねえ…どうしてここまであたしのことを思ってくれたのっ!?」

裡沙「あたしは本当にいいお母さんだったの!? あなたのことを本当に大切にしてあげてたの!?」

裡沙「あたしはっ…あたしは、自慢できるようなっ…」

裡沙「──強いお母さんだったの…!?」

『ジジッ…!』

『…なるほど、世界はそうやって…』

裡沙「教えてっ…お願いっ…!」

『──ジジッ……いつ…ま…』

『ガガッ…ギュッ……してるから』

『──キュイン…』

裡沙「っ……!」


566 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:43:16.75 ID:uAcq2Ypd0
『──そろそろ、このゲーム機も限界ね』

裡沙「ま、まだっ…!」


『上崎さん、あなたは幸せを手に入れた』


『──過去も未来も振り返らず、ただひたすら噛み締めなさい』


ぶつんっ

裡沙「やめっ──」

ギュイイイイイイイ!!

~~~

「起きて! ねえ起きてよ…!!」

裡沙「うっ……」

純一「あ、起きた…! よかったぁ!」

裡沙「ここは…」

純一「さっきからずっと眠ってたんだよっ…! みんなで何がったのか心配してて…!」


568 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:46:20.86 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「……!!」ばっ

裡沙「あの娘はっ…あたしの子供はっ…!?」

純一「へ?」

裡沙「っ…ゲーム機…!」

カチャ

裡沙「だ、だめ…! 反応がない…いやっ…だめだよ、そんなの…!」

純一「だ、大丈夫…?」

裡沙「……」じっ

純一「…っ?」

裡沙「うっ……ひっぐ…」

純一「え、ええっ」

裡沙「うわぁあああああんっ…どうしてっ…なんでっ…そんな事っ…!」ぎゅう

純一「…おっと」

裡沙「どぉしてぇっ…あの娘は、ずっとずっと…あたしの幸せを願ってたのにぃっ…!」


571 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:50:41.65 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「あたしはっ…あたしはっ…あの子になんも返すことが出来なくって…っ」

裡沙「うわぁああああんっ」

純一「…よしよし…」ぽんぽん

裡沙「あああっ…! ひっぐっ……ぐしゅっ…」

裡沙「…あの娘は、あの娘は絶対に幸せにならなくちゃっ…だめ、なんだよっ…!」

裡沙「今のあたしを作ってくれたのは、あの子だからっ…!」

裡沙「強くなれたのもっ…頑張れたのもっ…逃げずにやってこれたのもっ…」

裡沙「全部全部っ…あの娘のお陰なのにっ…!」

裡沙「あたしはっ……ダメな子だよぉっ…」

裡沙「あたしはっ……ううっ…」



『ピコーン!』


裡沙「……っ……ふぇ…っ?」


573 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:53:02.32 ID:uAcq2Ypd0



『ジジ…───橘くんにはあたしのルートに来てもらうんだからっ…』

『……絶対に絶対に、あの子を産んでみせるんだから!!』





574 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 22:57:00.88 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「これっ…【選択肢】…?」

純一「な、なんだこれ画面に文字が出てる…!」

裡沙「え、見えるの…?」

純一「う、うん! 初めてだよ…今朝に戻るってぐらいしか、僕は今まで…」

裡沙「……」

裡沙「…産んでみせる…」

裡沙「……あはは、そっか」

裡沙「そういうことだよ、単純なことだったんだよ…橘くんっ!」

がばぁっ


裡沙「──橘くんっ! これから一緒に赤ちゃん作ろうっ!!」


純一「…」

純一「ええっ!? あ、赤ちゃん!?」


575 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:00:33.90 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「そうだよっ…一緒にいっぱいいっぱい赤ちゃん作るんだよっ!」

裡沙「それで──あの子が生まれるまで、ずっとずっといっしょにいようっ!」

純一「う、うん! ちょっと待って!」

裡沙「なにかな!?」

純一「ちょ、ちょっと…声が大きいかな…?」

薫「…あーはいはい」

梅原「おとなになっちまうのかぁ…大将…」

絢辻「あ、あなた達っ! 公衆面前でなんてことっ…!」

梨穂子「ひゃー」

紗江「ひゃぁー」

七咲「ジュルルルル…」

美也「じゅるるるる…」


578 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:03:25.12 ID:uAcq2Ypd0
森島「んっ!? なにかもふもふっ…面白いことにのりおふっ…もぐもぐ…」

純一「あ、あはは」

裡沙「っ~~~~……!?」かぁぁっ

裡沙「…っ…ううん、こんな事でくじけちゃダメっ…!」ばっ

裡沙「橘くんっ!」

純一「は、はいっ!」

裡沙「……」

純一「…?」

裡沙「と、とりあえひゅっ…りひゃって…」

純一「え? 取り敢えず落ち着いて…うん」


579 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:06:16.19 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「…ごほん」

純一「…落ち着いた?」

裡沙「う、うん。落ち着いた…かも…ふぅ」

裡沙「よっし……まずは自己紹介だよね、あたしの名前は上崎裡沙」

純一「上崎裡沙…」

裡沙「うんっ」

純一「えっと、上崎…」

裡沙「り、裡沙っ」

純一「えっ? 下の名前で呼ばなきゃ…」

裡沙「だ、だめっ」

純一「そうなんだ…ううむ、じゃあ裡沙」

裡沙「っ…!」パァアア!


580 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:08:54.59 ID:uAcq2Ypd0
純一(凄く嬉しそうだ…)

裡沙「あ、あのねっ…そのねっ…!」

裡沙「うぅっ…落ち着いて、あたし…ふぅ」

裡沙「あたしはっ……あなたに、言いたいことがあるんです!」

純一「言いたいこと?」

裡沙「は、はい!」

裡沙「その……あたしは、あなたのことをずっと見てきました」

裡沙「いつまでも、どんなときでも…あなたのことだけを、見てきました」

裡沙「辛かったです、大変だったです、だけど……それに後悔なんて、これっぽっちもなくて」

裡沙「──今この瞬間があるからこそ、あたしは幸せだって思えるから…」

裡沙「…本当に頑張ってきて良かった…本当に」


581 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:11:47.95 ID:uAcq2Ypd0
裡沙「……もう、逃げることなんてしない」

裡沙「あなたに向かって、この言葉を───送りたいんです」


裡沙「──大好きだよ橘くん…」

裡沙「あなたのことが、なによりも大好き…」

裡沙「…あなたとずっと、一緒にいたいです」


裡沙「──私と付き合ってください」ぺこ

純一「……」


薫「ピューピュー!」

梅原「どうした大将! 先言われちまってるぞオイ!」


純一「う、うるさいなっ…! くそ…ああもう…」ぽりぽり


582 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:14:56.44 ID:uAcq2Ypd0
純一「っ…裡沙…ちゃん!」

裡沙「は、はいっ!」

純一「ぼ、僕はぁっ…その、えっと…」

純一「っ……き、きみを救おうって思った時から…!」

純一「……僕はそれからずっと、君のことが…」

純一「頭から離れなかったんだよ、僕は…」

裡沙「…」

純一「ずっとずっとキミだけのことを考えてた」

純一「…僕をかばい続ける君を、思い続けていた」

純一「──凄くもったいない言葉です、僕にとって」

純一「だから、頑張らさせてください!」ばっ

純一「──僕は絶対にキミにふさわしい男になります! 赤ちゃんいっぱい作ろう!!」


586 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:19:30.14 ID:RIXzR2ca0
薫「うっわー…」

梅原「だめだこりゃ」

絢辻「…帰りましょう桜井さん」

梨穂子「そ、そうだね~美也ちゃんたちはどうするの?」

七咲「帰ろうと思います」

紗江「は、はい!」

森島「アタシも帰ろーっと! ひびきちゃんとお買い物の約束があるのよね!」

美也「……にしし、よかったねぇ~」


裡沙「う、うん! いっぱいつくろう!」

純一「う、うむ! 任せてくれ! 頑張るぞー!」


588 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:25:32.21 ID:RIXzR2ca0
裡沙「……あ、そうだ橘君」

純一「まずはイエス・ノー枕の準備を……あ、えっとどうかしたの?」

裡沙「これ、一緒に押してくれるかな…?」

カチャ

純一「…このゲーム機の?」

裡沙「そうだよ」

純一「僕は構わないよ、うん」

裡沙「えへへ、ありがとっ」

ぎゅっ

裡沙「せーので、押すよ?」

純一「うん」


「「せーの!」」



ぽち


589 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:28:40.23 ID:RIXzR2ca0
ふわふわ…

裡沙「え…これ…」

純一「急に雪が降ってきた…」

裡沙「……」

純一「…綺麗だね」

裡沙「…うん、とっても綺麗」

ふわふわ ふわふわ

裡沙「……橘君」

純一「…うん?」

裡沙「絶対に……元気な赤ちゃん、作ろうね」

純一「お、おうっ!」

裡沙「あはは、…えっと…期待してるからね?」ちらっ

純一「が、頑張るよ!」

ふわふわ…


『ジジッ…』


590 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:31:45.94 ID:RIXzR2ca0
『ジジジッ……───』




『──……【上崎裡沙「橘くんにはあたしのルートに来てもらうんだからっ」】…ジジッ…』



『ジジッ……ザァアアアア……』ピシッ!



『アアアアアアア…ありがと…ジジジジジッジジ…』



『……ピチュン』


591 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:33:24.14 ID:RIXzR2ca0
長すぎワロタ
ご支援ご保守ありがとうです


りさちゃんかわいいよハスハス


質問があったら答えます
なかったら落として下さったら

ではノシ


592 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:33:51.06 ID:pLT8No6d0
乙!!
超大作だったぜ!!
この他のSSと繋がる設定っていつから考えてたんだ?


593 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:34:48.03 ID:7rP5bL8L0

昔のも合わせて読み直させてもらうわ

先輩とふわふわさんの過去SSは無しでいいのかな?


594 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:34:48.35 ID:XLdEu9wu0
乙!


595 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:35:10.01 ID:cSZmoeEw0
欲を言うならこの後展開されるであろう二人のイチャイチャが見たかった


596 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:35:16.45 ID:KVVbJReM0
長すぎワロタ


597 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:35:47.79 ID:Vp1VhG8l0
ゲームを開発したのは誰?


598 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:36:31.68 ID:a7m4En8b0
いやー長い
とても良かった乙


599 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:37:05.61 ID:euP9p7KD0
おつ
過去に書いたSSとつなげる発想は面白かった。
上崎裡沙だからできたことだよな。
次回作も期待してる



600 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:37:09.41 ID:AGKwIofa0

他のSS教えてくれ
七咲はわかるんだが他がわからん


602 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:40:09.88 ID:nuv1Wa4O0



dhh253g






605 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:43:05.70 ID:RIXzR2ca0
>>592
絢辻さんを書き終わってからです

>>593
ラブリーと紗江ちゃんは何時か書きます

>>597
えりりん

>>600
絢辻「まさか手帳落とした…?」
棚町薫「アタシが〝薫〟と呼ばれる理由」
梨穂子「……ごめんなさい、橘くん」
七咲「先輩、部活やめちゃいました」

残り二人は何時か書きます


608 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:45:21.68 ID:AGKwIofa0
【】の中だったのか
よく見たら梨穂子のも読んだことあった


610 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:46:26.98 ID:RIXzR2ca0
>>602
可愛すぎる!

乙ありがとう

もう死にそうなので寝ます
ではではノシ


613 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/06(火) 23:54:32.89 ID:l2NJKO+k0
>>1

なんか鍵作品ととか好きそうだな


615 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/07(水) 00:01:06.40 ID:ddxZpuVD0
久しぶりに深く読んだわ
面白かったよ 乙!


618 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/11/07(水) 00:09:26.05 ID:Lzh3fiFc0
乙 おもしろかった


転載元

上崎裡沙「橘くんにはあたしのルートに来てもらうんだからっ」

http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352039904/






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2012/11/07 04:00 | CM(4) | アマガミ SS
    コメント一覧
  1. 名無しさん [ 2012/11/07 07:13 ]
  2. 世界線とか世界を騙せとかシュタゲを参考にしてる割には、言うほど世界騙してなくね?って感じだな

    あと、この人が書いた過去作品いくつか読んだことあるけど、典型的な「別にこの作品じゃなくてもよくね?」って感じの内容のSSで
    それをここまで壮大な構想?に出来るのはある意味才能なんだろうか...
  3. 名無しさん [ 2012/11/07 17:53 ]
  4. 肩の力抜けよ
  5. 名無し@まとめいと [ 2012/11/07 20:23 ]
  6. まあそれもあるんだろうけど、何より長すぎるわこれ。SSは長すぎてもダメっていう典型例だなw
  7. (・∀・) [ 2014/01/05 02:16 ]
  8. 面白かったし、感動した。
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