HEADLINE

清太「節子、兄ちゃんな」

2014/11/03 05:00 | CM(0) | その他 ジブリ SS
1 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 22:50:54 ID:3Wy0xIRo

清太「こいさんに特攻かけたろ思てんねん」

節子「とっこー?」

清太「せや。この家もうじき出ていくさかい、やぶれかぶれや」

節子「でも特攻いうたら、兄ちゃん死んでまうやん」

清太「死にやせんて」

節子「嘘や。お姉ちゃんゲキチンしたかて、兄ちゃんも玉砕しはるんやろ?」

清太「やっぱり、あかんやろか……」

節子「当たり前や。兄ちゃんおらんようになったら、うち、どないしたらええねん。嫌や嫌や嫌や!」

清太「節子泣かんと!」

節子「特攻あかん、特攻あかん、特攻行かんといて兄ちゃん!」

清太「分かった分かった、特攻せんよってに、もうおやすみ」

節子「うん。特攻したらあかんで兄ちゃん」



2 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 22:52:48 ID:3Wy0xIRo


─翌朝─

西宮のおばさん「清太さん」

清太「はいっ!」

おばさん「節ちゃんから聞いたんやけどな。何やあんた、こいさんに特攻かける言うてたそうやないの」

清太「えっ……」


3 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:00:56 ID:3Wy0xIRo

おばさん「そんならそれであんた、何で早う言うてくれはらへんの!」

清太「はぁ?」

おばさん「こいさんも言うてましたんよ。『清太さんがそのつもりやったら、いつでも特攻かけてきてよろし』て」

清太「」

おばさん「でもまだあんたもこいさんも若いし、今は戦時下やよってに、すぐに祝言上げるわけにはいきませんよ。それは分かっておいでやろね?」

清太「いえ、あの、僕は、ほんとすみませんでした、冗談のつもりで口から出まかせ言うたつもりやったn」

おばさん「とにかく、うちの婿はんになる人が一日中ぶらぶらしとってはあきまへんよ! 通りません! すぐにでも勤労動員に行ってもらわな」

節子「よかったなぁ、兄ちゃん」

清太「節子お前なんちゅうことを……」

おばさん「節ちゃんは私がしっかり面倒見るさかい、心配あらへんよ」


こうして僕らは、そのままおばさんの家に居続けることになった。僕はこいさんが働いている工場に動員に出て、帰りは毎日一緒になった。

節子は僕が日中に家を空けるのを寂しがったが、すぐに慣れてくれた。


4 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:05:06 ID:3Wy0xIRo

─8月15日─

ラジオ「……非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セント欲シ……」

清太「……」

節子「兄ちゃんどないしはったん?」

ラジオ「……堪ヘ難キヲ堪へ忍ビ難キヲ忍ビ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カント……」

清太「うううっ…… お父ちゃんのアホ!」

節子「兄ちゃんキイキ痛いの? お姉ちゃん、兄ちゃん早うお医者行って注射してもらわんとあかんね」

こいさん「そうやね節ちゃん! でも今は、今は辛抱しとってね!……」

清太「連合艦隊は…… 連合艦隊は何やっとったんや!」


5 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:07:51 ID:3Wy0xIRo

戦争は終わった。お父ちゃんの戦死を知ったのはずっと後だった。

本当のみなしごになってしまった僕は、生きていくために必死で働いた。

僕が節子を食べさせていかな。そういう思いだけが僕の支えだった。

幸い、お母ちゃんの残してくれた貯金もあったし、一番辛いひもじい時期を、何とか乗り越えることができた。

歳月は流れ、僕は働きながら夜学を卒業して就職した。節子は中学生になった。


6 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:10:12 ID:3Wy0xIRo


─結婚式の前日─

清太「節子。ちいと兄ちゃんにつきあってんか」

節子「どこへ行くん?」

清太「裏の池の方や。横穴あるやろ」


7 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:12:15 ID:3Wy0xIRo


─横穴の前─

節子「ここ、昔はよう遊びに来てんけど……」

節子「今来てみると、辛気臭くてかなわんわ。じめじめして、蚊がいっぱいおって」

節子「食用蛙がうるさいし……」

節子「兄ちゃんどこへ行ったんやろ。『ええもん買うてくる』言うたまま飛び出して行きよって。昔からずっとそうや」

清太「節子お待たせ!」

節子「兄ちゃんどこ行ってたん?」

清太「ほら、アイスクリーム買うてきたんや。美味いでぇ!」


8 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:18:25 ID:3Wy0xIRo


────────────────────────────────────

節子「おいしなぁ。戦争中のこと考えると、ほんま夢みたいや」

清太「よう覚えてるんやな。節子アイスクリーム好きやったし。天ぷらや御作り食べたい言うて、兄ちゃん困らせたやないか」

節子「ほんまに、すんませんでした」

清太「でも、節子大きゅうなってよかったわ。……ほんまは、ここにお母ちゃんがおったらええねやけど」

節子「それはやめよ」

清太「せやな……」

節子「ここ…… なんか気味悪いわ。お化け出てきそうやわ」

清太「ほんまにお化けおるかもしれへんで」

節子「嫌や怖い」


9 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:21:35 ID:3Wy0xIRo

清太「節子。あのな」

節子「何や兄ちゃん、急に真面目な顔なって」

清太「兄ちゃんな…… もしあの日、おばさんの家を出とったら」

節子「出とったら……?」

清太「節子と二人でここに住もう思てたんや」

節子「!」

清太「せやから、もうやぶれかぶれになって、こいさんに特攻かけよ思て」

節子「」

清太「節子? 覚えてへんやろ」

節子「……うん。何や兄ちゃんがおっとろしい顔しとったんは覚えてるねんけど」


10 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:25:32 ID:3Wy0xIRo

清太「そんな怖い顔しとったか」

節子「うん。でも兄ちゃんと一緒なら、怖ない思てた」

清太「すまんかったな。節子小さいのに、えらい心配かけてしもうて」

節子「ええやん。済んだことやし。それより、明日はほんとうにお姉ちゃんに特攻かけんねやろ?」

清太「そうやな…… ってお前また何言うてんねん」

節子「あんじょうやらんとな、兄ちゃん」

清太「節子にそない言われるとは思わんかったわ!」

節子「ははは!」

清太「ははは!」


11 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:27:41 ID:3Wy0xIRo

節子(兄ちゃんほんまはお姉ちゃんのこと、ずぅぅーーっと好きやったんやろ? それをいきなり『特攻する』言うねやから、うち、ほんまびっくりしたわ)

清太(お父ちゃんお母ちゃん。いつも僕らを見守ってくれてありがとうございます。僕らは何もしてあげられんけど、これからも、見守っていてください)

おしまい


12 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/05(土) 23:30:39 ID:5L/0uHhQ

良い話だった


13 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/06(日) 00:18:19 ID:4/msQ/e.
どうしてこうならなかった


14 以下、名無しが深夜にお送りします :2014/07/12(土) 12:48:02 ID:il/mWPV2
ほんと、どうしてなんだろうな あと一ヶ月しないで終戦か・・・


転載元

清太「節子、兄ちゃんな」

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1404568254/






アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)
野坂 昭如
新潮社
売り上げランキング: 118,496

関連記事
2014/11/03 05:00 | CM(0) | その他 ジブリ SS
    コメント一覧
コメントの投稿










管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

インバリアントへようこそ
インバリアント -SSまとめサイト-
管理人:こばりあんと



一言:wow fantastic baby...

  • About
  • 記事一覧
  • Twitter
  • まとめ依頼
  • ランダム SS
カテゴリ
アーカイブス

2017年 05月 (241)
2017年 04月 (157)
2016年 02月 (1)
2015年 12月 (1)
2015年 05月 (261)
2015年 04月 (295)
2015年 03月 (305)
2015年 02月 (259)
2015年 01月 (283)
2014年 12月 (275)
2014年 11月 (287)
2014年 10月 (285)
2014年 09月 (262)
2014年 08月 (264)
2014年 07月 (262)
2014年 06月 (223)
2014年 05月 (218)
2014年 04月 (209)
2014年 03月 (185)
2014年 02月 (172)
2014年 01月 (191)
2013年 12月 (184)
2013年 11月 (183)
2013年 10月 (180)
2013年 09月 (153)
2013年 08月 (141)
2013年 07月 (154)
2013年 06月 (146)
2013年 05月 (152)
2013年 04月 (148)
2013年 03月 (130)
2013年 02月 (111)
2013年 01月 (123)
2012年 12月 (127)
2012年 11月 (120)
2012年 10月 (127)
2012年 09月 (117)
2012年 08月 (120)
2012年 07月 (122)
2012年 06月 (116)
2012年 05月 (122)
2012年 04月 (121)
2012年 03月 (123)
2012年 02月 (116)
2012年 01月 (122)
2011年 12月 (118)
2011年 11月 (113)
2011年 10月 (119)
2011年 09月 (110)
2011年 08月 (118)
2011年 07月 (118)
2011年 06月 (118)
2011年 05月 (123)
2011年 04月 (124)
2011年 03月 (117)
2011年 02月 (95)
2011年 01月 (109)
2010年 12月 (119)
2010年 11月 (110)
2010年 10月 (120)
2010年 09月 (74)
2010年 08月 (87)
2010年 07月 (113)
2010年 06月 (72)
2010年 05月 (67)
2010年 04月 (3)

最新記事
Ads
人気SSランキング
アクセスランキング