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海未「ありふれた魔法」

2015/04/10 21:00 | CM(0) | ラブライブ! SS
2 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/01(水) 23:26:58.11 ID:M1XvoHfO0


さーっ、さーとゆるやかな雨が降っていますね。そんな微かな雨音ですが、私は目が覚めてしまいました。

時刻は朝5時を回ったところでしょうか。

朝の稽古の時間には少し早い気もしますが、せっかくなので起きてしまいましょう。

「雨、止むといいですね。」

気が付いたら私は、ぽつりとそんなことを呟いていました。

誰に聞かせるわけでもないですが、思っていたことが、口から自然とでてしまいました。これじゃまるで穂乃果みたいです。

そういえば昨日は穂乃果が、張り切っていましたっけ。明日は6月入って最初の休日練習だから、気合いれていこーって。

…しかし、今日のこの調子では、穂乃果はむくれてしまいそうですね。私は袴に着替える中で、そんなことを思います。

後々のメールを楽しみにしておきましょうか。



3 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/01(水) 23:27:44.40 ID:M1XvoHfO0
「まだ、お父様は来ていないようですね。」

道場に着いて一礼した後、中をぐるっと見回してみましたがお父様の姿はありませんでした。

まぁもう少ししたら来るでしょう。先に一回雑巾がけをしておきましょうか。

梅雨の時期になると、道場は滑りますからね。感謝を込めて、床を拭き始めます。

「ふう・・これで大丈夫ですね。さっそく初めていきましょう。」

奥に立てかけてある、竹刀に手を取り、私はいつもの場所へと立ちます。

素振りを始める前のこの静寂が、とても好きですね。凛と心を研ぎ澄まして、私は一心に竹刀を振ります。

「おう、早いじゃねえか。」

「あ、お父様。おはよう御座います。雨音で目が覚めてしまいまして。」

「なるほどな。素振りが終わったら久々に打ち合いでもやるか?一本勝負だがな。」

「ええ、是非お願いします。」

ひとしきり素振りが終わった後、防具を身に着けました。

こうしてお父様に、見てもらえる機会はなかなかないので、身が引き締まりますね。

お父様も準備が終わったようです。お互いに向き合い、立ち上がります。


4 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/01(水) 23:28:43.23 ID:M1XvoHfO0
ドンっと踏み込む音と、私達の声が道場に響き渡ります。

激しい鍔迫り合いの繰り返し、お互いに引けをとりません。

ですが、私は一瞬の隙を見逃しませんでした。

「やぁっ!めぇぇんっ!」

「むぅ…面ありだな。」

重く鈍い音をたて、お父様から一本取ることに成功しました。

一礼し、これで打ち合いは終わりです。

「強くなったな。これからも精進するように。」

「はい、お父様。」

「さてと、疲れたろ?朝飯を食いにいくぞ。」

「わかりました。着替えてから向かいます。」

お父様と共に道場を雑巾がけし、私はシャワーを浴びに行きました。

シャワーから上がると、良い匂いがしてきました。この匂いはおそらく、肉じゃがでしょうか。

密かに心が躍りますね。少しわくわくとしながら、食堂へと向かいます。


5 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/01(水) 23:29:27.23 ID:M1XvoHfO0
「最近、新しく部活をはじめたんだって?」

ふいにお父様に尋ねられました。どうやらお母様から、μ'sのことを聞いたようです。

ただ、お母様も世間には疎いですから、私達の活動をただのダンス部か何かだと思っているみたいです。

厳密に言えば違うのですが、それはこの際置いておくとしましょう。

「ええ、穂乃果やことり達と一緒にやっています。」

「ああ、あの娘達か。」


6 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/01(水) 23:30:06.97 ID:M1XvoHfO0
お父様はそれだけ言うと、どこか納得した様子でした。穂乃果とことりは、昔からの幼馴染ですからね。

その二人とやっていることならば、きっと別段口を出すことでもないと判断したのでしょう。

「まぁよくはわからないが、楽しんでいるのであればそれでいい。悔いだけは残さないようにな。」

「はい。」

そう言って、お父様は一足先に食べ終わり、食堂を後にしました。

「ご馳走様でした。」

朝食を済ませた私も、後に続くように自室へと戻りました。


13 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/02(木) 10:49:45.10 ID:urskDW050
しかしまだ、8時手前ですか。時計を確認し私は悩みます。さてと、どうしたものでしょうか。

昨日出た宿題もわずかに残っていますし、読みたい本もありますね。

手持ち無沙汰気味だった私は、なんとなく携帯を見てみました。そこには2通のメールが届いていました。

一つは、絵里から全体あてへ、今日の練習は中止の旨が書かれたメール。残りは、穂乃果からでした。

『もうっなんで今日は雨なの!?』

『すっごく楽しみにしてたのに! 穂乃果の昨日のワクワクを返してよっ>A<』

ふふ、やっぱり私の想像通りですね。相変わらず、わかりやすいんですから。


14 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/02(木) 10:50:37.23 ID:urskDW050
『仕方ないじゃないですか。降ること自体は昨日の予報でも言っていましたし』

『それに楽しみにしていたのは、穂乃果だけではありませんよ?』

『私も楽しみでしたから』

返したメールはそんな内容でした。不思議なものですね。

自分には、縁のない世界だと思っていたアイドル。その活動をやりたい自分がいる。

人間何が起こるかわからないものです。おそらく、以前の私がみたらびっくりしてしまうかもしれません。


15 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/02(木) 10:51:05.47 ID:urskDW050
そのあといくつかのやりとりを得て、ことりと一緒に私の家に集まる流れになりました。

練習が出来なかった不満を解消するために、穂乃果はどうしても、じっとしていられなかったのでしょう。

二人が来るまでには、まだまだ時間がありますね。ひとまず部屋の掃除を、済ませておきますか。

特にこれといって、散らかってはいないですが、まぁこういうのは気持ちが大事です。

親しき仲にも礼儀あり。人を呼ぶときには、環境は最低限に整えておくものだと私は思います。


16 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/02(木) 10:51:34.58 ID:urskDW050
掃除も終わり、読書をしていたときでした。視界の隅で、携帯が明るくなるのを感じました。

『海未ちゃーん。おはよ~』

『そこの公園で綺麗な紫陽花が咲いてたから、画像送るね♪』

『あ、あと少しで着くから待っててー』

ことりからのメールですね。添付されてきた紫陽花は確かに、綺麗に色づいています。

とてもカラフルで、見ていて飽きがこない、素敵なものです。心が自然と穏やかになった気がします。

…っとそれよりも、もうそんな時間ですか。つい読書に没頭して、時間を忘れてしまいそうになりました。

二重の意味で、ことりに感謝をしながら私は、短く返事を返しました。


24 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/03(金) 15:35:56.82 ID:uaQ96OU/0
ぴんぽーんと、少し間の抜けた電子音が響きます。下で待っていた私は、すぐに玄関へと向かいました。

戸を開け、目の前のことりと穂乃果に、入るように促します。

「二人とも、どうぞ上がってください」

「「おじゃましまーす」」

「そうそう、今日はたくさんお菓子を作ってきたんだよ♪」

「本当!?わぁいっ楽しみっ!」


25 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/03(金) 15:36:27.59 ID:uaQ96OU/0
ふわっとした甘い薫香がするのは、ことりがお菓子を作ってきたからだったんですね。

シナモンの匂いでしょうか。やさしい香りです。

「ありがとうございます。ことりの手作りはとても美味しいですからね。私も楽しみです」

「えへへ、ことり張り切っちゃいました」

「私の部屋はわかりますよね?先に行っててください」

「うんっ。いこ、ことりちゃん!」

「あ、待って引っ張らないでぇ~」

傘を立てかけ、靴を揃え、奥へ進もうとしていた時でした。くぅ・・と小さく私のお腹が鳴りました。


26 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/03(金) 15:37:01.34 ID:uaQ96OU/0
私としたことが、うっかりしていました。普段であれば、人前でお腹を鳴らしたりはしません。

今の微笑ましいやりとりで、無意識に気が緩んでしまったのでしょう。すかさず穂乃果に、指摘をされました。

「あれ?海未ちゃん、もしかしてお昼食べてないの?」

「う・・はい。先ほどまで、読書をしていたもので」

ええい、こうなってしまったら恥はかき捨てです。

「二人はもう済ませました?まだでしたら、一緒にご飯を作りませんか」

と、思い切って尋ねてみると、大げさにお腹をさする穂乃果に、はにかんで照れくさそうにしていることり。


27 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/03(金) 15:37:28.18 ID:uaQ96OU/0
「いやー、実は穂乃果もまだなんだ。さっき時間あるからって、つい二度寝しちゃったんだよねー」

「私もお菓子作りに夢中になってて、気付いた時にはもう、ご飯食べてる時間がなかったの」

そんな偶然に、たちまち可笑しくなってきて、三人で笑い合います。

「一緒ですね私達。ふふ、じゃあメニューは何にしましょうか」

とは言ったものの私は、にこや、絵里のように特別、料理が得意というわけではないですけどね。

しかし、料理で大事なのは、自分の腕前よりも、食べてくれる人のことを思うことと、お母様が言っていました。

大したものは作れないかもしれない。けれど二人のためならば、私もきっと、お母様のように美味しくできる気がします。

ああ、また一つ楽しみが増えました。小さな情熱を胸に、食堂へと足を運びます。


33 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 00:21:50.80 ID:OdzNX0An0
「さて、この食材だと、ことりはなにがいいと思いますか?」

「うーんっとね・・・あっ回鍋肉なんていいかもっ」

流石はことりです。私の得意と言える料理は炒飯なので、合うものをぴたりと提示してくれました。

回鍋肉であれば、穂乃果たっての希望である、肉が主役のおかずですから、一石二鳥ですね。

「ありがとうございます、ことり。穂乃果はそれで構いませんか?」

「ピーマンをいれないなら大丈夫だよ!それに、海未ちゃんが作ってくれるんだもん、全然オッケーだよ!

 あ・・・もっ、もちろん待ってるだけじゃなくて、私もちゃんと手伝うからねっ!?」


34 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 00:22:24.49 ID:OdzNX0An0
なにもそこまで、動揺しなくてもいいと思うのですが。

もしかして、私に何か言われるんじゃないかと、焦っていたのかもしれませんね。

「それでは、お願いします。私と一緒に材料を切りましょう」

「うんっ、まかせてよ!」

「ことりには回鍋肉を頼みます」

「りょーかいです♪」

それぞれ分担し、私達は作業に取り掛かります。


35 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 00:22:54.77 ID:OdzNX0An0
私が炒飯に取り掛かる頃には、食堂いっぱいに、オイスターソースのいい香りが広まっていました。

「はぁい、完成だよ。ことり、お手製の回鍋肉ですっ♪」

「なかなか美味しそうですね。すぐ炒飯を作りますので、もう少し待っていてください」

「えへへ。海未ちゃんの炒飯楽しみにしてるね」

「くぅ~っ、私もうっ待ちきれないよ!海未ちゃん、なるべく早くね!」

「ふふ、善処しますよ」

待ってくれている二人のためにも、全力で臨みましょうか。



36 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 00:23:26.89 ID:OdzNX0An0
煙が出るほど熱した中華鍋に、材料を加え、しっかり芯まで空気が入るように炒めていきます。

私がフライ返しをするたびに、小さな歓声があがります。これ、実は結構得意なんですよね。

まあそれもそのはず、なんせお父様直伝の技ですから。

お父様から教わった、餃子と炒飯だけは誰にも負ける気がしないです。

卵を軽くぱらっとさせたら完成です。小気味よく皿に盛りつけ、私の役目はこれにて終了。

「お待たせしました。さぁ、出来ましたよ」



40 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 10:23:19.41 ID:OdzNX0An0
「わぁ・・まるでお店で見るような炒飯だね。流石は海未ちゃん♪」

「おお、すごいよ海未ちゃん、ことりちゃんも!とーっても美味しそうだよっ」

出来上がった料理を前に、穂乃果は興奮を隠しきれない様子です。

「二人とも、ありがとうございます。では、冷めないうちに頂きましょう」

「「「頂きます」」」

「…!おいしいっ。二人は料理上手で羨ましいなぁ」

「ありがとう穂乃果ちゃん。でも、ことりはそこまで料理得意じゃないんだよ?作れるのは、本当に簡単なものだけだから」

「私もですよ。実際のところ、炒飯と餃子くらいしか誇れるものはないですし」

別に謙遜しているわけではなく、これは事実です。ことりも、本当のことを言っているのでしょう。

しかし、穂乃果は納得がいかなかったようです。



41 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 10:24:02.17 ID:OdzNX0An0
「えーっ?これで得意じゃなかったら、穂乃果なんてだめだめじゃんっ。おまんじゅう包むくらいしか出来ないよ!」

高らかに言う穂乃果に、思わず吹き出してしまいました。

「ふ、ふふ…っ、そんなに自信満々に…い、言わなくても……っ」

「ううぅ笑わないでよーっ。はぁ、どうしたら穂乃果も出来るようになるのかな」

「穂乃果ちゃん家も御夕飯、当番制にしてみたらいいんじゃないかな?ほら、ことりはお母さんたちが忙しいから。
 
 自然とやることが増えて、出来るようになったって感じかなぁ」
 
「結局地道にやるのが一番ってこと?そっかぁ…じゃがんばらなくっちゃね」

「その意気です穂乃果。きっとおば様も喜びますよ」


42 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 10:24:35.79 ID:OdzNX0An0
やると決めたことは、しっかりとやる、穂乃果のいいところですね。現に今、料理についてことりに聞いています。

私はそのひたむきさが、好きですよ。ただそれが、勉強にも適応されれば文句なしなんですけれど…。

「ようしっ、燃えてきた!次は私が二人に、とっておきをふるまっちゃうんだから楽しみにしててよっ」

「うん、頑張って穂乃果ちゃん♪」

心に火が灯されたようです。ふふ、私も負けられません。次こういった機会があるときまでに、お母様から学んでおきましょう。

そしたら炒飯だけでなく、もっと他のメニューも二人に、喜んでもらえるかもしれないですね。

新たな決意を胸に、緩やかなお昼が過ぎていきます。



43 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/05(日) 10:25:04.40 ID:OdzNX0An0
「「「ご馳走様でした」」」

「さてと、片づけて部屋に行きましょうか」

「そうだね。あ、今度は海未ちゃん手作りの餃子を、ご馳走して欲しいな♪ そのときは、μ'sのみんなで集まりたいよね」

「おおっ、いいんじゃない?穂乃果は賛成だよっ」

「なるほど。確かに集まって料理を作るのも楽しそうですね。是非、みんなに聞いてみましょう」

思っていたよりも早く、ふるまう機会が来そうです。お母様から、いろいろ学んでおきましょうか。

「みんな喜んでくれると思うよ。海未ちゃんの料理、すごく優しくて美味しかったもん!」

「ことりもそう思うな。きっと楽しいパーティーになるね」

「ありがとうございます。次までに腕を磨いておきますよ」

こうして常に楽しいことで、私を満たしてくれる、二人とならいつまでも、幸せが尽きないような気がします。

なんて考えているうちに、洗い物も終わり、私達は部屋へ向かいました。



47 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/06(月) 11:05:53.92 ID:dGDFZNbp0
「海未ちゃんの部屋、昔と全然変わってないね。あ、ことりの作ったぬいぐるみがある!

 えへへ、大切にしてくれてありがとう」

「せっかくことりが作ってくれたものですから。それに、見ているとなんだか落ち着くんですよね」

私の机に置いてある、ことりお手製のぬいぐるみ。確か小学生の頃にもらったものでした。

小さなベレー帽を被った、可愛らしい小鳥。今でも、裁縫が下手なりに努力して、ほつれたところを直しています。

「…そうだ、ことりちゃんことりちゃん、今度穂乃果にもなにか作ってよ!」

「いいけど…時間かかっちゃっても大丈夫?」

「全然オッケーだよっ。穂乃果待ってるから」

ぬいぐるみが羨ましくなったのでしょうか、穂乃果が目を輝かせています。



48 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/06(月) 11:06:26.99 ID:dGDFZNbp0
ところで、私は穂乃果が来た時からずっと気になっていたことがあります。それは、穂乃香の寝ぐせです。

跳ねた毛先は、あっちこっちに向いていますね…。ふふ、湿気の所為もあるのかすごい有様です。

自分のことには割と無頓着で、根っからの跳ね返り娘といいますか、小さなことは、目もくれないまっすぐな性格。

だからこそ、そばにいて支えたくなるんですよね。

「穂乃果、酷い寝ぐせですよ?整えてあげますから、ちょっとこっちへ来てください」

「ありがとう、海未ちゃん。本当は二度寝するつもりはなかったんだよ?ただ、やることないなぁって、
 
 ぼーっとしてたら、なんだか眠くなってきちゃって、つい寝ちゃってた」

「ことりもなんとなくわかるかも。ただじーっとしているのって、あんまり得意じゃないから。

 あっそうだ、せっかくだから、三人で髪型を変えて遊んでみない?」


49 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/06(月) 11:07:07.45 ID:dGDFZNbp0
穂乃果の髪をすいているのを見て、ことりがふいに思いついたようです。

髪型変更ですか、私はなにやら嫌な予感しかしないのですが…。

「いいねっ!海未ちゃんの髪って、さらさらつやつやだから、いろいろいじってみたかったんだ」

「うんうん♪きっと海未ちゃんの長さなら、いっぱい試せるよね。やーんっ、どきどきしちゃうっ」

ああ、予感的中です。二人のスイッチが入ってしまいました。

こうなってしまったらもう止められません。はしゃぐ二人を横目に、私は若干顔がひきつるのを感じました。

「もう、しょうがないですね。あんまり派手なのは勘弁してくださいね?」
 
「大丈夫だよ~。海未ちゃんなら、なんでも可愛いって思うな♪」

ことりの笑顔が、いささか不安です。…なるように任せましょう。



50 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/06(月) 11:07:44.70 ID:dGDFZNbp0
「やっぱり、ことりが思った通り♪海未ちゃんはこういう髪型も似合うねっ。ほら、鏡見てみて。」

差し出された鏡に映っていたのは、絵里を全体的にボリューミーにした私でした。

なんというか、ことりの技術のおかげなのか、普段の私とはまるで違いますね。

「海未ちゃん、いつもより色気倍増だね。絵里ちゃんの色気は、やっぱりこの髪型が原因なのかな…。

 穂乃香もこうしたら色っぽくなるのかなぁ」

「いや、絵里の場合はおそらく雰囲気だと思うのですが。穂乃果ももう少し、おとなしくすれば近づけるかもですね」

「うぐっ、それは厳しいね…」

「まぁまぁ、穂乃果ちゃんはそのままが一番だよ」

ふふ、ことりの言うとおりですね。

こう言ってはなんですが、天真爛漫な穂乃果が艶っぽくなったところは想像できないです。


57 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/08(水) 16:06:48.01 ID:aNQnhzy60
「あー、穂乃果も絵里ちゃんみたいになりたい!よし、今度秘訣を教えてもらわなくっちゃ。

 きっと絵里ちゃんの色気には、なにか秘密があるはずだよっ。それが分かれば穂乃果も…」

「あはは…聞いてどうにかなることじゃない気がするけど」

流石に今の発言には、ことりも苦笑いしてますね。聞いて解決することなら、誰も苦労しないと思いますよ。

「別に絵里みたいにならなくても、十分ですよ」

「海未ちゃん、なんか余裕だね。そっか、いつもモテモテだもんね」


58 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/08(水) 16:07:46.39 ID:aNQnhzy60
あれ?私に飛び火しました。

「穂乃果知ってるよ。この間も、一年生からラブレター貰ってたのを!」

「えぇっ、海未ちゃんまた貰ったんだ。流石だね♪」

「なっ、み、見ていたのですか!?」

私としたことが、迂闊でした。てっきり、あの日は誰も居ないものだと思っていたのに。

「そりゃあもう、ばっちりとね」

くっ…不肖、園田海未。もう一度、注意力の鍛錬をし直す必要がありそうです。

「あれはなかなか、すごい光景だったね」


59 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/08(水) 16:08:15.56 ID:aNQnhzy60
一部始終を見ていたらしい穂乃果が、身振り手振りでその光景の、再現を始めました。

それをことりが嬉しそうに聞いていますね。本当、この類の話が好きなのは相変わらずです。

まったく、二人は昔から私に浮ついた話があると、すぐこうやって盛り上がるんですから。

おかげで、だんだん恥ずかしくなってきました。これ以上は私の身が持ちません、早めに二人を止めておきましょう。

「もうっ、やめてください!その話はなしです!」

「はぁい♪」

「えーっ!?これからが一番いいところじゃん!」

素直なことりに対して、穂乃果からは不満の声が上がりました。



60 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/08(水) 16:09:08.23 ID:aNQnhzy60
「さぁ、私の話は置いておいて、次は穂乃果の髪をアレンジする番ですね。ことり。手伝いお願いします」

「うんっ、ことりのおまじないでもっと可愛くしちゃうから」

そう言ってことりは、鞄から一冊の雑誌を取り出しました。

「じゃ~ん、この間にこちゃんから借りたヘアカタログです!これで、どんな髪型もお任せあれ♪」

「にこちゃん、こういうのも持ってるんだ。μ's1のオシャレ番長は伊達じゃないねっ」

オシャレ番長って、なんだか物騒な呼び名ですね。にこが聞いたら可愛くないって、抗議が飛んできそうです。

まぁ、このことは私達の秘密にしておきましょうか。



64 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:50:14.30 ID:0INToM2J0
いろいろと夢中になっていたら、いつのまにか時間が経っていました。午後4時ですか…。丁度いい頃合いですね。

「ふぅ、一端この辺で休憩にしましょうか。では、お茶を淹れてきますので、ゆっくりしていて下さい」

「海未ちゃん一人じゃ大変じゃない?持ってくるの手伝おっか?」

「気持ちだけで嬉しいです、穂乃果。ただ、私がもてなしたいだけですので、待っていて大丈夫ですよ」

「そっか、ありがとう」

「はい、では行ってきます」

私は足早に下へと降りて行きました。前にいいほうじ茶を貰ったので、今日はそれにしましょう。

「…ねぇ、ことりちゃん。海未ちゃんあの髪型を気に入ったみたいだね」

「そうだねぇ。ポニーテール動きやすいって言ってたもんね」


65 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:50:58.32 ID:0INToM2J0
温めた湯呑に、均等になるように注いでいきます。蒸らしたほうじ茶の香りが心地よいです。

淹れ終わって一息ついたところで、気が付きました。

「…そういえば、ことりが作ってきたものって洋菓子でしたね。紅茶の方がよかったかもしれないですね」

しかし、生憎ながら私の家は生粋のお茶派、紅茶は置いていないのが現実です。

「まぁ、二人がそこまで気にするとは思いませんし、なにより美味しいほうじ茶ですから、大丈夫でしょう」

無理やりですが、自分に言い聞かせ、上へと戻ることにしました。


66 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:51:42.99 ID:0INToM2J0
「お待たせしました。すみません、扉を開けてください」

「うん、今開けるね~」

「ことり、ありがとうございます」

テーブルの上にお茶を置いて、私も席に着きました。

「全員揃ったし、食べよっか♪今日のお菓子はことりの自信作なのっ」

箱から出てきたのは色とりどりのお菓子。鮮やかな見た目は、見ているだけでも楽しいです。

「これって…もしかして」

「そう、まかま~かマカロ~ン?」

「「おいしーいっ。いえーいっ」」

ふふ、ことりと穂乃果は息ぴったりですね。

「というわけで、今回はマカロンを作ってきたの。味もいろいろだから好きなのを食べてね」


67 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:52:23.33 ID:0INToM2J0
「このピンク色のは何?」

「ええとそれはねぇ、イチゴ味だよ。」

「じゃ最初はこれにしよっと」

「はい穂乃果ちゃん、あーんっ」

「あーん、…うんおいしいっ!」

幸せそうな二人を見てると、こちらも自然と頬が緩んできますね。

薄い緑色、おそらく抹茶でしょうか。とりあえずこれにしましょう。

「ことり、頂きます」

「召し上がれ♪」



68 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:52:58.75 ID:0INToM2J0
手にしたそれは、予想通り抹茶味でした。甘さ控えめですごく食べやすいですね。

なんというのか、ことりの優しさが詰まっているような気がしました。

「流石ですね。とても美味しいです」

「二人ともありがとう。えへへ~、まだまだあるからいっぱい食べてね。そうだ、海未ちゃんもはいあーんっ」

「え?い、いや、それは…」

恥ずかしいので自分で食べますと、言おうとしたときでした。

「海未ちゃん、だめ?……おねがぁいっ」

うっ、いつものパターンですね。正直な話、ことりには勝てる気がしません…。

「あ、あーん…」

素直に応じてしまいました。しかし毎度のことながら、食べさせてもらうのってやっぱり恥ずかしいです。


69 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:53:49.36 ID:0INToM2J0
「海未ちゃんもいい加減に慣れなよー」

にやつく穂乃果に茶化されてしまいました。

「慣れろと言われましても…恥ずかしいものは恥ずかしいんです」

「そこは本当昔から変わらないんだね。穂乃果は全然だけどなぁ」

「まぁ海未ちゃんは、意外と照れ屋さんなのが可愛いところだよねぇ」

「うんうん!普段はあんなにかっこいいのにね」

「からかわないでくださいっ。もう…」

この二人相手だと、私はどうしても後手に回ってしまいます。まぁでもこのやりとり、嫌いじゃないですけどね。


70 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:54:24.70 ID:0INToM2J0
楽しい時間も過ぎて、ちょうど食べ終わったころ、私は部屋に光が射しているのに気が付きました。

「あ、二人とも見てください。日差しが出ていますよ。」

「本当だ。雨止んだんだね。ねぇ海未ちゃん窓開けていい?」

穂乃果はどこかワクワクとした様子です。

「ええ、大丈夫ですよ。」

「ようし、それじゃあっと…。おおーっ見て見て、虹が出来てるよっ!」

「わぁ、綺麗だね~」

「ですね。久々に虹を見た気がします」


71 ◆INjIt6nmxE [saga]:2015/04/09(木) 16:55:19.54 ID:0INToM2J0
目に映る景色に私達は心奪われていました。雨上がりの空って、どうしてこうも惹かれるものがあるんでしょうね。

単純には言い表せないですが、強いて言うならちょっとした魔法みたいですよね。

ありふれた光景ですけど、今こうして私達三人が見ているものは、私達だけの世界です。

まったく同じ景色を知る人は、私達以外には誰も居ない。

「今日が雨でよかったかもしれないですね。練習は出来ませんでしたが、みんなにお土産話は出来ましたね」

「そうだね。あー、でも次こそは雨降らないでね、絶対練習やるんだから!」

穂乃果が空に向かって叫んでいます。そんな穂乃果に私とことりは、笑いを堪えきれませんでした。

こんなときのためにも部室があったらと思ってしまいます。

そうすれば今度雨が降ったら、私達三人だけでなく、μ'sのみんなで同じ景色が見れるかもしれませんね。



72 ◆INjIt6nmxE [sage saga]:2015/04/09(木) 16:58:31.18 ID:0INToM2J0
はい、というわけで無事完結です
とはいえ、多少のミスがあったのはお許しください<m(__)m>
応援してくださった方、暖かいレスの数々ありがとうございました!


74 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/09(木) 18:06:54.01 ID:MvphaT4hO
乙です
荒んだ心が癒やされるような雰囲気でとっても良かったです!!
次回作も楽しみに待ってます~


転載元

海未「ありふれた魔法」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427898379/






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